NeoL

開く

天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.4 言語を剥ぎ取った先の可能性 後編 ゲスト: TAIGEN KAWABE(BO NIGEN)

 

amano_taigen_4

森村泰昌展や奈良美智展など数多くの重要な展示を成功させ、現代アートの名裏方として名高い天野太郎。その天野が様々なゲストを迎え、アートの定義や成り立ち、醍醐味を語る連載企画の第4弾。今回のゲストは、イギリスを拠点に活動するバンド、BO NINGEのボーカル&ベースであるTAIGEN。ヴェネチア・ビエンナーレやV&Aなどにも招聘されるBO NINGENの魅力を、アートに携わる天野はどのように分析するのか。そしてイギリスと日本の違いとはーー。

 

(中編より続き)

天野「話は変わりますけど、ロンドンで美術館に行ったりします?」

TAIGEN「行きます。大学生くらいの頃に渡英したので、現代美術かっこいいなとか思ったりしつつ、遠かったり高かったりしたら行かないけど、向こうでは常設展は大体無料なんですよね。テート・モダンなんかは川沿いだから、テムズ川も見たいし寄って行こうかな的な、観光スポットの一つのような感覚で。これは作品がどうのというより、捉え方としてポップに見えるというところでの切り取り方が上手いんだろうと思います。

僕たちも音楽を日本で売っていくとき『君たちが変わる必要はなく、その周りがちゃんとポップに見える、BO NINGENというバンドを聴くことが格好いいと思わせなきゃ駄目だ』という戦略性の話になったんです。イギリスは感覚的にお客さんがそういう風に捉えてくれるんですけど、日本では直接的なことをしなきゃ駄目だと言われたのが、さっきのアートの話にも当てはまると思って。カルチャーがあるかないかよりも、ライブに行く、美術館に行くというのが日常に入っているかという。たまにしかライブに行かない、美術館に行かないという非日常性も僕は好きなんですけど、やっぱりイギリスにいると日常に入ってくる文化がある。ふらっと現代美術に触れるのが自然だとイギリスに渡って思うようになりました」

天野「そうだよね。例えばポップという言葉が出たけど、ポップ・アートはアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンシュタインなど、アメリカが専売特許みたいなことを言われているんだけど、実はイギリスの方が早い。イギリスで生まれたポップ・アートがアメリカに決定的な影響を与えてるわけですよ。フランスのルーブルなどと決定的に違うのは、そういう圧倒的に正統なものがある中でポップ・アートみたいなカウンターカルチャーが飛び出てくるのはイギリス独特なんです」

1 2 3 4 5

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS