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Jan Shotaro Stigter and Riki Eric Hidaka 『Double Happiness In Lonesome China』インタビュー(前編)

janriki

 

甘いピロー・トークや笑いが飛び交う、夜明け前の大都会に潜むこぼれ話しと夢枕が出発点となっているような、気持ちのいいサイケデリック・ドリーム・ポップ・ミュージックがここにある。

そう連想させるJan Shotaro Stigter and Riki Eric Hidakaによる共同作アルバム『DoubleHappiness In LonesomeChina』が完成した。大きな音楽ムーブメント無き時代に、突然変異のように、突如現れた美意識と、その先にあるサイケデリックかつ内観的なダイヤの原石のような名曲の数々を集めた、全12曲収録のアルバムがStereo Recordsからリリースとなった。

まるでニール・ヤングのアルバム『Tonight’s The Night』のように、アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターが上手く自然と混ざり合ったりするフィーリングや、とろける虹色のアイスキャンディーのようなサイケデリックで甘いメロディーが、ジミー・ヘンドリックスのアルバム『Electric Ladyland』のようにスタジオ機材のエフェクトを通じて飛び交ったりするムードも、ニック・ドレイクのアルバム『Pink Moon』みたいにアコギ一本でのしっとりとした弾き語り楽曲までもが、バランス良くいっぱい詰まっている、聴きごたえのある内容のオリジナル・アルバムとなっている。

いい音楽には多少毒も必要だ。この『Double Happiness In Lonesome China』を聴いてみさえすればわかるだろう。この脳が気持ち良く揺れる音楽にきっと酔いしれるはずだからね。

実際に、ぼくも詞の朗読や12弦のアコースティック・ギターで参加させてもらっている収録曲の「Alain The Thinker Dub」や「Seven Gods of Tokyo」、そして、Jan Shotaro Stigterの弾き語りの「The Boy With Some Heroin In His Eyes」、Riki Eric Hidakaによる「天国への階段」へのオマージュにまでも少し聞こえて来る「ぶらぶらしていたい」などといった楽曲にどっぷりハマってしまっているくらいなのだから。

それでは、アルバム『Double Happiness In Lonesome China』の全貌を語ってくれたJan Shotaro StigterとRiki Eric Hidakaとのインタビューを、どうぞお楽しみ下さい。

 

 

―『Double Happiness In Lonesome China』はどういうきっかけで作ることになったの?

Jan「HIDAKAのアルバムを全部リリースしている『STEREO RECORDS』という広島のレコード屋兼レーベルの人が、スプリット・アルバムを作らないかって言ってくれて。スプリットだったはずがなぜか勘違いして、全曲一緒に作ったっていう」

―勘違いがきっかけなんだ(笑)。共作してみてどうだった?

RIKI「俺はアルバムを作るためにやったのはやったけど、そういう感じじゃなかったの。昔からやっていることをレコードにしたいっていうイカレた人が現れた。なんて素敵なことだろう、みたいな。それだけ」

Jan「昔から一緒に曲作って録音するみたいなのはHIDAKAの家でやったりしていて。それはリリースもしないでYouTubeにあげるだけだったり、あげてないやつもあるし。あれ、どうしたっけ? お前の家で録ったやつ」

RIKI「“メトロポリタン”?」

Jan「そう、”メトロポリタン2012”だ。そういうのがいっぱいあって、その延長線で今回も作った」

―レコーディングって全部日本でやったの?

RIKI「うん、地元の友達の家の地下室でやった」

Jan「スタジオ入って、ドラムとか録って」

―それはRIKIがNYに行く前?

RIKI「行く前」

―じゃあ結構早い段階でその話はあったの?

RIKI「1年前だね。前回のやつのリリースの直後くらい」

―そっか。昨日やっとアルバムを聴いて、レコーディングの時以外にちゃんと聴いて思ったのは、すごいピュアでインティメートだということ。例えばさ、普通にいつものバーで飲んで、こないだのゴールデン街みたいな感じで一緒に過ごしていて、その中で詞が降りて来たり、いわばエンターテイメントとしての音楽だけじゃなく、ベッドルーム・ミュージックってだけでもないし、もう少し自由があって、すごく近い仲での世界を覗きこめるみたいな感じはしたんだよね。

Jan「HIDAKAが録音物を作る時はいつもそういう音像があると思っていて。インティメートの、周りの空気を全部詰めるみたいな。一緒にやってもそういうことになったし。いつも遊んでる家や街で録ったっていうのもあるけど」

―でもありのままで、気張ってはないけれど、ちゃんとそこにはマジックがある。

RIKI「多分パッケージされた音楽みたいなものを作り出す前から目指している音には面白みがないというか。それこそマジックみたいなものがないって俺は感じちゃう。だから、この作品は自分たちが後から聴いても不思議だって思えるような、そういうものになったんじゃないかな。……難しいな、何て言えばいいかわかんないけど」

Jan「そう。普通に録音したのは丸々24時間で、出来た曲を、出来た瞬間にすぐ録音しちゃっている。そうじゃない曲もあるけどほぼそう。その生まれたばかりの赤ちゃんみたいな、生々しいけどソフトで、ピュアで、一番綺麗な状態なんだと思う」

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