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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#32 528Hz

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私の友人の音楽家たちからは、以前から528ヘルツの噂を聞いていたのだが、この周波数は愛の周波数と呼ばれ、DNAの修復力があるとされていることでも有名だ。この528ヘルツはラを440ヘルツで設定すると、半音を含めてドレミファソラシドのいずれの音からも外れてしまうことになっている。つまりオーディエンスの耳に届く以前に存在を消されてしまうのだ。消えた528ヘルツの音と、基準を440ヘルツに設定したあたりに陰謀論が語られていて、それはそれで面白い話なので、興味がある方は是非どうぞ。権力者は愛の周波数を聞かせたくないようです。
 440設定で作られた音楽がほとんどの現在において、528ヘルツを耳にすることはほぼ皆無で、わざわざこちらから出向いて体験するしかない。幸い528ヘルツ関係の書籍も多く出ているので、そのうちの数冊を読んだり、インタネーットで試聴したり、itunesで買ったりして、実際に528ヘルツに数ヶ月浸ってみた。
 いろいろ聴いた中で、CDに録音された音叉によるトーンだけの音は、チーンと鳴る仏壇前のリンのような感じで、いい音なのだが中々浸りづらい。瞑想やヨガをしている人には問題ないだろうが、一般的には水の音やクラシック音楽と共にあるものの方が親しみやすいだろう。
 その528ヘルツの音を朝昼晩を目安に、日に数度、一度に10分ほど毎日聞き続けた。
 結果は個人的な感想でしかないのだが、穏やかな状態でいられる、というのが大きな効用だと思えた。
 穏やかでいること。実はこれは全てにおいて大切なことである。世の中にある全てのヒーリングが、結局ここを目指していると言ってもいいだろう。逆に言えば、様々なヒーリング方法が存在し、必要とされているという事実は、穏やかで居続けることがどんなに難しいことかを語っている。不穏な状態は様々な病気の原因になる。
 しっかりと集中して528ヘルツを聴いた後では、入れ替わったようにすっきりとして、生命力が増した気になり、澄んだ気持ちで世界を見渡せるようになった。だが、仕事や些事をこなしているうちに、その感覚も消えてしまう。そのタイミングでまた休憩をとって聴く。すっきりする。また失せる。再び聴く。こんな感じで繰り返してみた。時には聴くことを忘れてしまうこともあったが、聴けば確実に心が落ち着いて潤うのが実感できた。

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