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text by Nao Machida
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Shuya Nakano

『It’s Only The End of The World』Gaspard Ulliel Interview

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—監督の演出が独特だと聞いたことがあるのですが、印象に残っている出来事はありますか?


ギャスパー「彼は己のヴィジョンを大切にする監督なんだ。テイクの途中でアイデアが沸き上がってきて、俳優のセリフを途中で止めてしまうこともあったよ。だから、一つのテイクを最後まで演じ切らせてもらったことはなかったんだ。本作はフィルムで撮影したんだけど、カメラが全部巻き切ったら『はい、カット』みたいな感じで(笑)。現場でシーンがどんどん発展していって、彼はその場で『こうしたほうがいい』『ああしたほうがいい』と、まるでモニターを観ながら編集しているかのようだった。印象としては、俳優と同じ感情を共有して、一緒に演じているようなイメージだったよ。彼が現場で涙を流している姿も目撃したんだ。彼自身がすごく感情移入していたみたいだね」


—監督の作品は音楽の使い方も印象的ですよね。


ギャスパー「グザヴィエの作品と音楽には特別な関係があるんだ。作品において、音楽がとても重要なポジションを占めている。脚本の段階で、ト書きに音楽について書かれていることもあるんだよ。オリジナルの音楽に関しては、彼は常にはっきりした考えを持っている。iPodとスピーカーを現場に持ち込んで、撮影の段階で音楽を流してしまうんだ。テイクの途中で音楽をかけ始めたりするので、音声スタッフはイラッとしていたよ(笑)。でも現場で流される音楽によって雰囲気が作り出されるから、スタッフも役者も同じムードの中で撮影に挑むことができるんだ。
撮影現場では、彼が選んだシーンのイメージと合う既存の音楽を流していた。すべての撮影が終わった時点で、本作の音楽を担当したガブリエル・ヤレドに、『このシーンではこんな音楽を使って撮影したんだけど、こんな感じで作曲してくれない?』と伝えたらしい。既存の音楽をインスピレーションにするなんて、作曲家にとっては一番嫌なリクエストだよね(笑)。現場ではフィリップ・グラスの曲をよく流していたよ。映画『めぐりあう時間たち』の音楽とかね」


—主人公ルイの母親(ナタリー・バイ)と妹(レア・セドゥ)が「恋のマイアヒ」を踊るシーンもありましたね(笑)。


ギャスパー「あの曲は流行ったよね(笑)。あのシーンは最初からシナリオに書かれていた。ストーリーから少し逸脱してキッチュな音楽を楽しむシーンを入れるのは、グザヴィエの作品の定番なんだ。観客の中には、1980年代とか90年代に聴いていた音楽を聴くと、すぐに当時のことを思い出す人もいるだろう。ああいうキッチュなポップミュージックを流すことで、観客と作品の間に一瞬にして深いきずなが生まれるんだ。それによって、若い世代だけではなく、幅広い世代にも受け入れられるんだよ」


—本作では夕暮れ時の食事のシーンなど、光の使い方が印象的でした。


ギャスパー「あの光については、最初からシナリオに書いてあったんだ。少し非現実的な天空からの光のような…雨が降った後の夕暮れ時のピュアな光のような。後半はリアリティというよりも、神秘主義的なオーラを帯びさせる光の作り方がされていた」


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