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text by Yu Onoda
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Akihito Igarashi(TRON)

DIGITALISM 『Mirage』Interview

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――ロンドンやハンブルクを行き来しながらの制作スタイルは、制作に何らかの影響がありましたか?


イスメイル「いや、これといってなかったかな。というのも、僕たち2人だけで暗いスタジオに入って、アイデアが全く何もないところから作品を作るやり方は全く変わってないからね。唯一、ロンドンから受けた影響があったとすれば、ロンドンの滞在時間に限りがあったから、作業の集中度が高まったということくらいかな」


イェンス「ただ、今回の作品に関しては、自分たちのなかで枠を設けなかったことが幸いしたね。というのも、僕たちの傾向として、どうしても考えすぎてしまいがちなんだ(笑)。だから、今回は枠を設けず、さらに考える余地を自分たちに与えず、作業を続けたんだ。その結果、作品には僕たちの脳内にあるイメージやスピリットがそのまま投影されたんだ」


イスメイル「だから、ツアーを回りながら、作品の感想をあちこちで聞いてみると、展開する長尺のジャムをして、プログレッシヴロック的と言われたり、はたまた、アンビエントだったり、聴き手それぞれの解釈が聞けて楽しいんだ」


イェンス「とはいえ、ダンスミュージックのトレンドとは全く関係ない作品だったりもするから、マーケティング的な観点では良かったのか悪かったのかは分からないけど(笑)、僕らとしては満足してるよ」


――マーケティングに則った、判で押したようなトラックが氾濫しているシーンの現状を踏まえて、DIGITALISMにはそこから積極的にはみ出していきたい、と?


イェンス「制作においては、意図したこと、意識したことは全くなかったんだけど、そもそも、僕らはEDMデュオではないし、潜在意識の上では、ああいう風にはなりたくないと思っていたのかもしれないね」


イスメイル「実際、出てきたアイデアを全て使った結果が長尺のトラックに発展していったし、その過程で生まれたアイデアは一切編集しなかったんだ。だから、アイデアをどんどん加えていくことで、曲の冒頭では全く想像していなかったエンディングに辿り着くことも多かったし、自分たちにとっても目的地のない旅に出ているような気分だったよ」


――ちなみに「The Ism」という曲でラップしているのはどなたなんですか?


イェンス「2014年のツアーでバスドライバーを務めてくれたトニーなんだ。移動中、彼が“俺はラップ出来るんだよ”って、ずっと言ってて、僕らは受け流していたんだけど、ある時、カリフォルニアでラジオ番組に出演して、その空き時間に彼のラップを試しに録ってみたんだ。そして、そのことをすっかり忘れて、アルバムの制作を進めていたら、その音源が出てきて、“お、これ、結構いいじゃん”ってことになって、曲に使ったというわけ(笑)」


――USのスターラッパーをフィーチャーするんじゃなく、たまたま録った素人ラッパーの音源を使ってみせるのが、DIGITALISMらしいマナーですよね。


イスメイル「そう、それが僕たちが言うところのハプニング任せってことなんだよ。最初から決め込まないで状況に応じて、作品を作るのが僕たちの好きなやり方だし、それはこの先も変わらないだろうね。そして、想像出来ないスリルやハプニングを聴き手にも引き続き楽しんでもらいたいんだ」



photo Akihito Igarashi
interview & text Yu Onoda
edit Ryoko Kuwahara


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DIGITALISM
『Mirage』
(発売中)
Magnetism Recording Co. / [PIAS] / Hostess
※日本盤はボーナストラック(1曲)、歌詞対訳、ライナーノーツ(芹澤直樹) 付


<トラックリスト>
1. Arena
2. Battlecry
3. Go Time
4. Utopia
5. Destination Breakdown
6. Power Station
7. Open Waters
8. Mirage [Part One]
9. Mirage [Part Two]
10. Indigo Skies
11. Dynamo
12. The Ism
13. Shangri-La
14. No Cash
15. Blink
16.Gonna Be Good*
*日本盤ボーナストラック

DIGITALISM
2004年にドイツのハンブルクでイェンス・モエルとイスメイル・トゥエフェッキ (イシ)の2 名によっ て結成されたエレクトロDJデュオ、デジタリズム。フラ ンスのレーベル<Kitsuné>からシングルをリリースするとたちまち話題とな り、ここ日本でもデビュー・アルバムリリース前の2006年フジロック・フェス ティバルで早くも初来日を果たし、翌年2007年にアルバム『Idealism』(邦題: デジタル主義)でデビュー。ジャスティスやソウルワックスなどがDJで彼らの楽 曲をかけるなどさらにその名 を広め、同年のサマーソニックにも出演を果たす などデビュー時から世界中で高い人気を持つ。2011年には、セカンド・アルバム 『I Love You, Dude』をリリー ス。同年のフジロック・フェスティバルで再び 来日をし、エレクトロとロックを クロスオーヴァーするサウンドで場内を大い に盛り上げた。2014年には配信限定でシングルをリリースしたのち8月には東京 と大阪で開催されたKITSUNÉ CLUB NIGHTに出演。2016年5 月、5年ぶりとなる ニュー・アルバム『ミラージュ』をリリース。8月には サマーソニック2016への出演を果たし、観客を沸かせた。

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