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text by Nao Mahida

オリヴィエ・アサイヤス監督『パーソナル・ショッパー』インタビュー

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—モウリーンはファッションという非常にマテリアリスティックな世界において、非常に孤独な生活を送っています。その中で彼女は2つのコミュニケーションで世の中とつながりを持とうとしているように思えます。一つはテキストメッセージで、前作でも使われていましたが、本作でテキストメッセージを使用した意味は?


アサイヤス「僕はただ、テキストメッセージを今の世界を描く上で無視できない事実として捉えている。良いとか悪いとか特定の意見を持っているわけではなく、それは今の世界で起こっていることなんだ。もし現代の世界や人物を描写したければ、スマートフォンを含むコミュニケーション方法やネットワーク間における機能、僕たちの周りにある目に見えない波長は必要不可欠だからね。
テキストメッセージのシーンの撮影は本当に難しかった。画面上の内容を撮って、それに反応する役者の演技を撮るのはすごく難しい。でも、その複雑さこそが現代社会を表しているんだと思う。それに、目に見えない誰かと交信するということは、インターネット文化の一部でもあると思う。世の中にはびこっているもので、そこには何ら奇妙なことはない。今のカルチャーの一部なんだよ」


—劇中ではスピリチュアルなコミュニケーションも描かれています。ヒルマ・アフ・クリントやヴィクトル・ユーゴーら、19世紀の人物がフィーチャーされていますが、時代的な奥行きを取り入れることを意図されたのでしょうか?


アサイヤス「そういうわけではなくて、現在に何か過去と関係するものを投影するというアイデアに興味があったんだ。目に見えないものと交信することがファンタジーではなく科学として信じられていた、特定の時代だよ。19世紀末の短い期間には、写真や電磁波、X線、電話など、衝撃的な新発見がたくさんあった。それだけに、死者とも真剣に交信しようとしていた時代だった。ヴィクトル・ユーゴーのような偉大な現実主義者や作家でさえ、そういった新しい現象に魅了され、2年間毎晩スピリットと交信し、心の底から信じていたそうだ。つまり、スピリチュアルな存在や見えないものを信じるのは、そうクレイジーなことではないということを描きたかった。
ヒルマ・アフ・クリントはとても重要なアーティストで、モダンアートの生みの親だ。すごいのは、彼女の作品は一世紀に渡って発見されなかったということ。我々は今になって、100年越しの視点で、彼女が当時の美術史における重要な存在だったことに気づいたわけだ。20世紀の抽象画が生まれた源でもあり、それが無名の女性アーティストだったというのは、すごいストーリーだと思う。
たとえばアメリカのジャンル映画では奇妙な宗教観があって、見えるものが善、見えないものが悪で、現実という見えるものの裏に邪悪な何かが渦巻いているというような世界観が定番になってしまっている。僕はそれとは違う見せ方、つまり目に見えないものと交信することを、よりポジティブなもの、何かクリエイティブなものとして見せたかったし、そういったものによって得られる恩恵もあったという事実を描きたかったんだ」


Photo : Eisuke Asaoka

Photo : Eisuke Asaoka




photo Eisuke Asaoka(Portrait)
interview&text Nao Machida
edit Ryoko Kuwahara




『パーソナル・ショッパー』
5/12(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
監督:オリヴィエ・アサイヤス(『夏時間の庭』『アクトレス ~女たちの舞台~』) 出演:クリステン・スチュワート、ラース・アイディンガ―、シグリッド・ブアジズ
原題:Personal Shopper/2016年/フランス映画/英語・フランス語/1時間45分/シネマスコープ/カラー/5.1ch
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES 公式サイト:personalshopper-movie.com
©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR
http://personalshopper-movie.com

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