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text by Ryoko Kuwahara

Max Landis『Mr.Right』Interview/マックス・ランディス『バッド・バディ!私とカレの暗殺デート』インタビュー

マックス・ランディス


ダメ男にばかり恋して失敗を繰り返す女の子マーサが、伝説の殺し屋と恋に落ちることで暗殺能力が覚醒するという奇想天外なストーリー。アナ・ケンドリック、サム・ロックウェルに加え、脇を固めるのは名優ティム・ロス、さらにラッパ―でありながら『キル・ビル』の音楽を担当し、映画『アイアン・フィスト』では監督・原案・脚本・音楽を担当する多才なRZA。このとんでもなくかぐわしい映画の脚本を担当したのは、超能力を手に入れた普通の男子高校生を描いた『クロニクル』、CIAエージェントという裏の顔を持つコンビニバイトを描いた『エージェント・ウルトラ』など、どこにでもいる人物に一味違ったスパイスを加えたストーリーで大注目の脚本家マックス・ランディス。この5年間で15本の脚本が売れ、フォーブス誌の『30アンダー30(注目すべき30歳以下の30人)』に2年連続で選出されるなど、独創的なアイデアで数えきれないほどの成功を収めてきた31歳の脚本家にインタビューを試みた。


——「流れを見る、流れがわかれば中にあるものもわかる」というのはとても興味深い教えでした。その考えを得たのは経験からですか、それとも本や映画などで得た知識ですか?


マックス「あの魔法のような力をロマンチックに見せたかったんだ。でもあれは特殊能力ではないんだ。反射神経という部分もあるけど、身の回りの物を観察して力を引き出しているというだけであって、それを魔法にように見せたかったんだよ。こういうアイデアは他の作品でも見たことがあるかもしれないけど、踊るように戦うのは自分のアイデアだよ」


——様々なことに応用できる考えですが、脚本を書くという行為にもその考え方を応用していますか?


マックス「もちろん脚本を書くときに応用しているよ!流れに身を任せてノッてくることで脚本を書くんだ。その流れによってドンドン大きなアイデアが出てくる。一種のドラックのようなもので、覚醒したような状態になって書いているんだ。それが止まってしまうと不安にあり、イラだってきちゃうんだ」


メイン


——どこにでもいそうな普通の人間が覚醒するというのは『クロニクル』とも共通する展開ですが、自分の身の回りの人たちを観察していて「この人がこういう能力を持っていたら?」など常に夢想しているのですか?


マックス「誰かを観て勝手なイメージを抱くことはないよ。だって誰でも特別なスキルを持っているから。その状況次第でその人が持っている能力が表に出てきたり出てこなかったりするけど、みんな特別でユニークな能力を持っているので勝手にイメージしていることはないね」


——キャラクターたちがクリーピーながらも実にチャーミングで陽気なのが大きな魅力になっています。キャラクターを作るうえで大切にしていることは?


マックス「フランシスはミュージカル俳優のようにポジティブでハッピーで、ちょっとクリーピーな感じはするがロマンチストという、そんな人物をイメージしたんだ。マーサに関しては、僕はアナ・ケンドリックが変わったダメ女を演じるイメージは特に無かったけど、男に振られても自分を変えずに変人なままで、新たな人に恋にオチていく女性を思い描いた。常に変わっていたりバカっぽかったりブッ飛んでる人でも何かしら感情移入できる人物であることをキャラクター作りで気をつけているよ」


——本作の脚本を描く時にどのように物語が始まり、走り出したのかその過程を聞かせてください。元々描きたい物語があったのか、頭の中で勝手に動き出したのか、など。


マックス「本作は昔のミュージカル映画を思い描いていたんだ。アクションよりもコメディ。そしてロマンスが含まれていて、誰かに恋に落ちてぞっこんになってしまう。それをイメージして書いたよ」


サブ1


——パコ監督との映画作りをしてみていかがでしたか。戦闘シーンなどCGをあまり使わないアナログなアクションにしたことで味わいが深くなっていると思います。そのような作品のテイストは話し合って決めたのですか?


マックス「100%そうさ! 話し合ってCGを使わないと決めた。いかにリアルに起こっていることとして見せるかということでCGを使わないと決めたんだ。銃を撃つ時には必ず意味があって、がむしゃらにただ撃つのではなく、実際の戦闘で使われるように撃っている。パコとはいい関係で今のTVの仕事にも彼を呼んで一緒に仕事しているんだよ」


——音楽のセレクトや挿入の仕方もダイナミックさを生んでいる要素ですが、それらも話し合って決められましたか?


マックス「完璧にね。プロデューサーとして音楽についてはよく話し合ったよ。楽しさとコミカルな部分を演出するために音楽を選んだんだ」


——アナとロックウェル、ティム、RZAそれぞれのハマり方が見事でした。ご自身がイメージしていたキャラクターとの合致点、相違点があれば教えてください。


マックス「キャストのみんなは驚きもあったし、イメージ通りのところもあったけど、特にアナには驚かされた。いい演技を見せてくれたよ。グラマラスな女優ではなく、優等生なイメージがありましたが、今作ではコミカルな部分が見えた。この作品をきっかけに道が開けたのではと思う。そのきっかけになれたことが嬉しいよ」


——脚本だけでなく今作では製作に携わり、他では脚本と監督両方で活動されていますが、それぞれの立場で作品との関わり方はどのように異なりますか。


マックス「この作品ではクリエイティブな部分だけを見ていればよかったので、おいしい部分を味わえた。大変な部分は他のプロデューサーがニューオリンズでやっていて、僕は転々としながらやった。負担はなく楽しくやれたよ。今やっているTVの仕事は予算管理をしなくてはいけない。『バッド・バディ!~』でプロデューサー達がやっていた難しいことをやらなければならないんだ。映画を通してプロデューサーの作業を学ぶことができたよ。いかに作品を守るかという意味で、プロデューサーを経験出来て良かった。自分が書いた脚本が映画になっていく過程でよりコントロールできたからね」


サブ3


——現在進行している企画があれば教えてください。


マックス「『Bright(原題)』、ブラッドリー・クーパー出演の作品(『Deeper(原題)』)、TVドラマシリーズ『私立探偵ダーク・ジェントリー』、SFホラーのTVドラマシリーズ『チャンネル・ゼロ(原題)』を同時に動かしているんだ。他にも多々あるしね」


——いま描きたい物語は?


マックス「ワンシチュエーション的なものを作りたい。いろんなところで撮ったり、色んなテーマを扱うのではなく一つの問題を掘り下げていくような。規模は小さくなってしまうけど、より密な作品を作っていきたいんだ」


——日本を舞台にするとしたらどんな物語にしたいですか。


マックス「(すごく興奮した感じで早口で)日本を舞台にしたいものはずっと作りたいと思っているよ。ひとつのアイデアとして、ある少年が森の中に入って行ってお父さんを探しに行く、でもお父さんは満月の日にオオカミになっていたということを知る。オオカミと闘わなければいけない、けれどもお父さんだから殺してはいけない。そういう作品が面白いんじゃないかな。日本でオオカミを扱った作品はないので2人だけが登場してそういうやりとりが繰り広げられる作品っていうのを思い描いているんだよ」


サブ4


interview&edit Ryoko Kuwahara


『バッド・バディ!私とカレの暗殺デート』
5月13日(土)より、新宿シネマカリテ他全国ロードショー
© 2016 Right Productions, LLC
配給:パルコ、ハピネット
出演:アナ・ケンドリック、サム・ロックウェル、ティム・ロス、RZAほか
監督:パコ・カベサス
製作・脚本:マックス・ランディス
原題Mr.Right/アメリカ映画/カラー/95分/シネスコ/字幕 安本煕生   

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