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text by Makoto Kikuchi
photo by Kazuki Iwabuchi

Fiction Issue: ワカモノ考 #01 Interview with Kazuki Iwabuchi

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——これは個人の見解ですが、それでも岩渕さんの写真は嘘くさくない、フィクションじゃないなと感じるのは、岩渕さんが憧れる誰かや何かに近づこうと、取り繕ったり自分を偽ったりしないからなんだと思います。


岩渕「確かに明確なゴールがないという意味ではそうかもしれません。でもそんなかっこいいものじゃないんです。まだ自分の中でも彷徨っているから、どう在りたいというのも定まってない。ここ(インタビュー場所)に来る前にトイレに寄ったんですが、トイレットペーパーが無くなりそうになっていたんです。新しいものに取り替えようと、ホルダーから外して手に取ったら、勝手にパラパラと紙が外れていって。それは芯がないタイプのものだったみたいで、紙が終わったら芯が出てくると思っていたのに、最後には紙の端っこしかなかったんです。周りのものが全部外れたら、何もない。これってなんか僕みたいだなと。なにも持ってない人間なのに、周りから得た知識をぺたぺたと貼付けているだけで。かっこ悪いんですよね」


——でもだれも元から芯なんてないから、最初は頑張って外からぺたぺたと貼付けていくことで軸となる部分を作って、後からそれを大きくしていくものなんじゃないですか。


岩渕「一人、すごく信頼している先生がいて、その人の芯はちゃんと内側からしっかりあるんです。ついでに言えば、いい匂いがして消臭効果もあるくらい(笑)佐々木先生という70歳くらいの先生で、僕の学校で英語を教えています。彼は写真は撮らないんですが、すごく良く見てくれていて、僕が写真を撮る者としてズレた方向に進もうとするとそれを正すためのヒントを教えてくれます。どう撮るかではなくて、どう在るべきかというのを示すのに、こういう捉え方があるよっていう選択肢を与えてくれるんです。選択肢を与えたあとは、手を引いて連れていってくれるわけではなくて、「ほら、考えてご覧なさいよ」と促してくれます。彼が示す方向が正しいのかどうかは別として、今は佐々木先生を誰よりも信頼しています」



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