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text by Ryoko Kuwahara
photo by Shuya Nakano

アヴちゃん(女王蜂)「デートはライトに」 Vol.7 ゲスト:小春(チャラン・ポ・ランタン) ソワレ編

NeoL_avukoharu_date_2_3_Photography : Shuya Nakano | Edit : Ryoko Kuwahara


アヴちゃん「小春ちゃんはルーツというか、その後のアコーディオンを手にした経緯も他のバンドマンとは違うもんやんか。それが素敵やなって」


小春「本当? 普通のバンドマンってどうやって始めるんだろ?」


アヴちゃん「日本はさほどカーストがないから、ヒップホップみたいに生活変えるぞというより、反抗期でやり始めたり。部活制度もあるから、先輩の輪に入りたいとかあのフェスに出たいとかで始める人が多いのかなと思う」


小春「私はグレるという感じではやってないな」


アヴちゃん「本質というか、自分がやっていることは犯罪スレスレだと思う。自分の思想を書いて世界を変えてやるというのは、神様にケンカ売るくらいことではあるから、それくらい張らなきゃと思ってやってる。『感動しました』『元気が出ました』と言われるのもすごいことで、全部捧げてやらないとなと思うから、生半可に音楽やっている人より、絵描きみたいな、作るということに狂気スレスレでやってる子のほうが話が合ったりする。あまりしゃべらなくても、小春ちゃんからもそういう感じを受けていて。アコーディオンがないと小春ちゃんは辛かったんだろうなって」


小春「あはは。そうね、7歳のときにサーカスを観て、欲しくなってサンタさんにお願いしてから始まったんだけど、友だちと遊ぶみみたいなことをしないまま大人になってしまって。その間ずっとアコーディオンしか弾いてなくて、押し入れの中でずっと伸び縮みさせていた。だから誰かのためにやるということはなかったかな。自分で弾けて満足して終わり。感想とかも言われたくなかった。自分が良くて弾いてるから、『こっちのほうがいいんじゃない?』って言われても困る」


アヴちゃん「そういうつもりじゃないからって?」


小春「そうそう。だから最初にチャラン・ポ・ランタンで活動していた時も、全然わかってもらわなくて大丈夫なんでという気持ちで。お客さんを必死に集めるとかでもなく、押し入れの延長線というか」


アヴちゃん「それは濃縮された気持ちでしょう。わたしはここでやっています、押し入れから出ていませんという。それが拡大されていくというのは理想型。すごく濃いカルピスだからいろんな人やフィルターを通しても美しいし、美味しい。でもその核がぼやぼやしていると水みたいになって大変そう」


小春「そういう人たちの気持ちは、自分がそうじゃなかったからわからないんだけどね。結局、こういう音楽を人の前でやる立場になった以上、聴いてもらわないと意味がないわけじゃん。それって最初に音楽を始めた時にはなかった感情だから、お母さんとかにすら聴いてほしいというのがなかったから、そこを掘り下げていくのは本当に難しい。それって人間としてなにか問題があるんだろうなと思うのね。私はいろんなことに対してそうで、それでいいと思った時期もあったんだけど、最近よく考える。例えば友だちや恋人に誕生日プレゼントをあげるというときに、その人がなにをもらうと嬉しいかがわからない、想像できないの」


アヴちゃん「自分があげたいものをあげるんでしょう?」


小春「あげたいものをあげて、『俺、こんなの別に欲しくもなかったけど、なんか面白いものもらっちゃった』でやり過ごしてたの。学生の時から全然使えそうにもない巨大なボールペンをあげてたりして」


アヴちゃん「自分がかわいいと思ったから?」


小春「そう。向こうは欲しくもなさそうだけど、プレゼントをあげるという行為で印象に残るとしたらこれかなって。もらって、面白いから喜ぶけど、嬉しいかと言ったらちょっと違う。俺のことをわかってくれてるとかそういうことではない。今のいままで、音楽でもそういうプレゼントの仕方をしていたんだなってよく思う」


アヴちゃん「なるほどね」


小春「『こんな世界観でっせ、どや』みたいな。恋人と一緒に聴いてほしい、というようなプレゼント感を持っていない。この曲は悲しい気持ちになったときに聴いてくれるかなと思って弾いたことがない。だけど、多分そういう瞬間に聴くのが音楽だったりするわけじゃない。女王蜂も極地に立たされた時にこの曲を聴くというお客さんもたくさんいると思うの」

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