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text by Ryoko Kuwahara
photo by Akiko Isobe

Interview with St.Vincent by Rei

NeoL_StVinent2| Photography : Akiko Isobe | Edit : Ryoko Kuwahara


Rei「ところで、先ほど私たちのために作ってくれたビデオを観ました(インタビュアーのみに限定公開された約7分のムービー)。すごく面白かったけど、少しインタピューしづらくなってしまいました(笑)」



Annie「あはは。プレッシャーに感じないで、おもしろがってくれるだけでいいのよ(笑)。音声はTokoさんが担当してくれたの」


Rei「Tokoさんの声はとても可愛らしくて、素敵でした! そのビデオで、アルバムのタイトルには教育についてのメッセージがこもっていると話していましたよね。アルバムはとてもダイナミックかつヴィヴィッドで、ミックスやアレンジ、楽器の編成がとても新鮮でした。そしてまるで隣で物語を読み聞かせてくれているように、親密で愛に溢れた作品だと思いました。アルバム制作の過程についてもう少し聞かせていただけますか」


Annie「このアルバムのヴォーカルはすごくドライで、リヴァーヴもなにも全くかかってないんです。だからこそ会話のような響きが出せていると思います。女性の声は加工されすぎて、親密さがなくなりがちだから。このレコードは、ジャック・アントノフと一緒に作りました。彼は素晴らしい人で、すごく支えになってくれたし、熱心で、あたたかい人。なんというか、とても豊かな人なの。私は自分がパワーについて書きたいということもわかっていたし、ペダル・スティールと打ち込みのドラムを使いたいということもわかっていました。最初はその3つのアイデアだけがあって、あとはただ面白いだけではなく、エモーショナルで最高に良い曲を作ることに集中したんです」


Rei「今作では “パワー”がキーワードだったんですよね。このテーマは長い間重要視していたものだったんですか。それとも、最近になって取り上げたいと思ったのでしょうか」


Annie「以前から頭の片隅にあったのは間違いないわね。この世の中がパワーによって動かされているのを見てそう思ったし、特にアメリカはその傾向が強いから。私にとってパワーとは、誘惑のようなもの。カリスマ、政治家、恋人、ドラッグ、なんであれとてつもなく大きな力があなたを飲み込んでしまう」


Rei「個人的に、独立心を持っていることも大切ですが、それと同時に過半数の意見を理解することも重要だと思います。人生で何かを選択しなくてはいけないときに従う、モラルのようなものはありますか」


Annie「ええ。”Do no harm”(人に害をなすなかれ/ヒポクラテス)はすごくいい言葉だと思う。音楽とアートは人から不当に搾取することなく自分を高めることができる分野。世の中には興味深く、資本主義的なカルチャーが溢れていて、常に注目を集めようとしている中でも、アートと芸術のことを考えだけで、夜安心して眠れるわ」


Rei「例えば、人を無理矢理ひとつの方向に誘導しようとしたり?」


Annie「そう、それは絶対にやってはいけないこと。音楽は人々に他人の気持ちを理解することを思い起こさせると同時に、自分のアイデンティティについても考えさせる機能を持っていると思う」


Rei「だから、今でも音楽は自由で満ち溢れているのかもしれない」


Annie「本当に音楽は最高よ。音楽の仕事をしていて荒んでいく人も多く見てきたけど、私は正反対なの。音楽のおかげでとても楽しいし、ワクワクできる」


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