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text by Ryoko Kuwahara

Interview with CLARK about 『Death Peak』

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——CLARKの曲を聴いていると、エレクトロニカやテクノの可能性が広がるなと思うんです。感情や様々な表情などをこんなにも表現することができるものなんだなと驚かされるのですが、それはエディットの段階で見えてくるものでしょうか。それともこうした立体的な表現をできるサウンドを作りたいという意図が最初にあったのか。今作では特に顕著だったので、それがどの段階で出てくるのかというのが気になります。


CLARK「音楽制作の部分はバカな自分がやってて、エディットは頭のいい自分が担当しているんだけど、音楽を作る最初の段階にはやっぱりバカな自分が大切だと思う。大人の脳で制作すると、理性が働いてすぐに『これはダメだ、あれはダメだ』とポテンシャルを潰していってしまうから、バカなままでドンドン音楽を作って、自分に『なんでもありだよ』ってオープンにやらせてあげる。削るのは後からやればいい。それが結果的にいいものを作るコツだと思ってる」


——ということは、最初のプロセスで感情が生み出されているんでしょうか。“Hoova”などはヘビーなドラムが特徴ですが、ああいうのはなにかに怒ってるときに勝手に頭の中でドコドコとドラムが鳴り出すのかなと思って(笑)。


CLARK「違うよ(笑)。”Hoova”を作ってるときは逆に楽しくて笑ってしまっていたんだ。音楽を作っているときはいつも楽しくて、よく笑い泣きしてるんだ。もちろん真剣に取り組んでるけど、音楽というのは僕にとってユーモアがあるものだからね」


——だからこそ感情を解き放てる。


CLARK「その通り」


——とはいえ、AIの住人を描写した曲があったり、現状の空気を感じて音楽に映し出している部分もあるのかなとも勘ぐってしまうのですが。


CLARK「あの曲には、シュミレートされた実在を持たない人々の声が入っていて『私たちは答えを持っている』ということを言っている。それに加え、更に偽造されたものたちがAIに対して語りかけるという哲学的なことをやろうとした。AIの概念は、宗教でもって人間が神と対話していたのと同じ気がしていて、いまはAIが神というような捉え方になっているんじゃないかなと思ったんだ。でも僕はあまり哲学的なことと音楽を混ぜるのは好きじゃなくて、そこは哲学者に任せて、音楽は音楽で純粋にやりたい。だから元々このアルバムにはわりと多めに歌詞が入ってたんだけど、それを取り除いた。歌詞がないことでより自由でエモーショナルになると思ったから」


——なるほど。あなたの音楽はミラーリング効果があるというか、自分の考えていることを映し出される気がして、だからそう感じてしまったのかもしれません。


CLARK「いいね。そうやって人々が僕の音楽を聴いて、想像を膨らませてくれるというのは素晴らしいことだし、完成させた以上、受けとり方は自由だ。その膨らませた想像をぶち壊すようなことはしたくないから、自由に感じてほしいな」


——ショーに関しても聴かせてください。テクノのアーティストがダンサーを連れてツアーを回るというのはあまりないことですが、オーディエンスもダンサーに感化されているのが見受けられますか。


CLARK「うん。音楽がダンスを通してヴィジュアル的に表現されているから、オーディエンスからしてもわかりやすいし、反響はいいよ。ただダンサーはステージにずっといるわけではなく、何曲かだけなんだよね。ずっといたら飽きるかもしれないけど、そうすることでより新鮮さを感じられると思うんだ。あと、ダンサーがいたら自分がずっと見られなくて済むのもいいね(笑)」


Peak Magnetic 24


Peak Magnetic 25


Peak Magnetic 37

interview Ryoko Kuwahara


WARP282_Packshot_3000
CLARK『Death Peak』
(WARP RECORDS / BEAT RECORDS)

国内盤CD  2,200円(+税)
初回限定生産盤デジパック仕様
ボーナストラック追加収録 / 解説書封入
beatkart: http://shop.beatink.com/shopdetail/000000002147
amazon: http://amzn.asia/2dFmhIQ
tower records: http://tower.jp/item/4457420/
hmv: http://bit.ly/2m6EMRm
iTunes Store: http://apple.co/2kVM3F6









CLARK
エイフェックス・ツインやオウテカの血を引く、UKテクノの後継者として登場した00年代の〈WARP〉の象徴にして、レーベル随一の多作家、現在はベルリンを拠点に活動するクラークことクリス・クラーク。2001年に『Clarence Park』で衝撃のデビューを飾り、これまでに7枚のオリジナル・アルバム、8枚のEP、そして自身のリミックス仕事をまとめた編集盤を驚異的なペースでリリース。2014年に自身の名を冠してリリースし多くの賞賛を得た『Clark』を携え行われたワールドツアーの後、話題の海外ドラマ『The Last Panthers』のサウンドトラックを書き下ろし、さらにYoung Vic シアターで上演された『マクベス』の音楽を担当。2016年の終わりには、ザ・エコー・ソサエティ・オーケストラに曲を提供、LA の由緒あるAce Theatre で上演演されるなど表現活動の振幅を広げてきた。2017年4月に3年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Death Peak』をリリース。フジロック2017で来日を果たし、ダンサーを率いたパフォーマンスでオーディエンスを魅了した。
http://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Clark/BRC-543/

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