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ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表 岩崎貴宏の個展でフラジャイルな世界を体感する

ひかりは星からできている
岩崎貴宏、「ひかりは星からできている」、2017年、URANO展示風景
©Takahiro Iwasaki, Courtesy of URANO

第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(〜11月26日)の日本館代表に選出され、世界的に有名となった現代美術家・岩崎貴宏の個展「ひかりは星からできている」が10月21日より開催されている。
岩崎貴宏は、私たちが日常を送る中で見過ごしてしまっている現実を、対象との距離、スケールを変えて可視化することで、私たちの意識を変容させる。電力の問題についても早くから着目し、東日本大震災直後に計画停電で停止した横浜の大観覧車を目にし、その様子を自身の髪の毛で制作、また同時に、福島第一原発の電源全喪失の一因とされている、倒壊した夜ノ森線第27号受電鉄塔も髪の毛で制作し、2011年の横浜トリエンナーレで発表。
また、現在開催中のヴェネチア・ビエンナーレでは、原子力や資源開発などのエネルギー問題、戦後の高度経済成長を支えながらも公害を引き起こした化学工場など、周縁地域が共通して抱える問題に目を向けた作品を通じて、異なる視点からの日本像を提示。本展でも出品予定の「アウト・オブ・ディスオーダー(海洋モデル)」シリーズは、日本辺境の洋上で海底の石油を採掘するオイルリグと周辺の島々をモチーフとし、使い捨ての弁当箱やストロー、ビニール袋といった石油製品のプラスチックごみから作られている。全体の色調は黒に統一され、原油のイメージとともに、雪舟など東洋の水墨画を想起させる。テーブルの比率、オイルリグと島々の配置は京都・龍安寺の枯山水より引用された。近年の中国の経済発展と領土拡大政策により顕著となった、海底資源の権利を巡る東アジアの海上国境線の攻防を背景としてこの作品は作られたが、枯山水という形式もまた、中国の庭園や水墨画に影響を受けながら日本で発展したものである。
岩崎の作品の特徴のひとつでもある、スケールダウン、鳥のように俯瞰する天上からの視点は、ある風景から世界そのものへと繋がる遠心性をも孕んでいる。地球の歴史から見た私たちの生きている期間はほんのわずかで、大地すらも地殻変動で少しずつ変化を続けている。そのようなフラジャイルな世界で私たち生き物は興亡を繰り広げているのだ。 岩崎の独特な視点は、 いま一度私たちを原点に立たせ、 進むべき道の可能性を示唆してくれることだろう。

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岩崎貴宏、「アウト・オブ・ディスオーダー (海洋モデル) 」、2017年、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館 展示風景
Photo by Keizo Kioku, Courtesy of Japan Foundation


岩崎 貴宏 個展「ひかりは星からできている」

会期:2017年10月21日-11月25日
会場:URANO
住所:東京都品川区東品川1-33-10 3F
電話番号:03-6433-2303
開廊時間:11:00〜18:00 (金〜20:00)
休館日:日、月、祝
http://www.urano.tokyo

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