NeoL

開く
text by Meisa Fujishiro
photo by Meisa Fujishiro

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#48 怒りから遠く

_DSC0920


 私の場合は、大股で、というのを付け加えている。これは下半身が弱くなるのを予防する効果がある。加齢とともに歩幅が小さくなるのは、年配の方を見れば分かる。体の硬化を仕方ないこととして見送るのではなく、まさに足元から見直す。
 実際少し大股でゆったりと歩いている自分の姿をショーウインドウなどで見てほしい。思ったほど大股でないことに気づくはずだ。ヒールやボトムスの制約があるかもしれないなら、スニーカーなどで試してほしい。大股歩きというのは、太腿を刺激し消費カロリーを増やし、股関節の柔軟性をも上げる。そして大股で快活にやさしく軽やかに歩くと、心もそれに従ってくる。俯いて歩いていたのが、自然に顎が上がり、首が立ち、心が背を伸ばす。自然と口角が上がり、若々しく映えるだろう。
 私はスニーカーが多いから階段も一段抜かして登る。それなりにカロリーを使うので、代謝が良くなる。毎朝のジョギングやジムでのランニングに時間を割かなくても、闊達な歩行を心がけるだけで、かなりの影響力になる。


 そして今回のテーマ「怒り」に戻るのだが、心と身体の相関関係を思えば、心の問題を心で制しようとしても中々難しくもあるので、身体が怒らないように、美しい姿勢、優しい姿勢、快活な姿勢をデフォルト化することで、怒りの水位を低くしておくことが可能なのだ。
 怒りを含むストレスを何かで発散するよりも、怒りと上手に付き合うことに意識を向けることの方が、より健康的で、生産性が高い。
 ちなみに目安として、身長175センチの私は、横断歩道のゼブラの白だけを踏むようにしている。姿勢を正し、呼吸を二歩か三歩で吸って、同じ歩数で吐くを繰り返し、横断歩道を渡り終えると、少し口元が緩む。呼吸と歩行に意識を向けている時間が多いので、過去や未来への余計は想像、妄想、心配などから離れられる。心が生み出すのは像という心の形成物であって、現実ではない。心が作った非現実に縛られて一喜一憂している時間から自分を解放し、今目の前のことに意識を向けることで、幻の世界から離れていられる。
 安らかな呼吸と、やさしく軽やかな歩行。それが連れてくる怒りの少ない自分に多くの人が出会うことを願っている。



※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#49」は2017年12月18日(月)アップ予定。

1 2 3 4

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS