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text by Junnosuke Amai

Interview with Joan As Police Woman about『Damned Devotion』

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ルー・リードやアントニー&ザ・ジョンソンズとのコラボレーションでも知られるニューヨークのシンガー・ソングライター、ジョーン・アズ・ポリス・ウーマンことジョーン・ワッサー。ダムビルダーズやブラック・ビートルといった前身のバンド時代も含めると、すでに20年以上のキャリアを誇るワッサーだが、先ごろリリースされたJAPWの5作目『ダムド・ディヴォーション』は、そんな彼女がアーティストとして新たな境地に足を踏み入れた作品となっている。ドラムのプログラミングとシンコペーションにフォーカスをあて、昨今のR&Bや新世代ジャズとのシンクロも窺わせる先鋭的かつオーガニックなビート・コンポジション。そして、ウィメンズ・マーチのチャントをサンプリングした“The Silence”に象徴的なポシティカルなメッセージと、出自や人生観にまつわる長年の問いを掘り下げたパーソナルなテーマ性。そうした様々なアプローチが複雑に重なり合い、彼女の表現をより奥深いものとしている。そのあたりの背景について、ワッサーにメールで話を聞いてみた。


―ニュー・アルバムの『ダムド・ディヴォーション』を聴かせていただきました。聴かせていただいて感じたのは、パーソナルなことは普遍的なことであり、また今の時代、それは政治的なことでもあるのではないか、ということでした。あなたにとって、今回のアルバムはどんな作品になりましたか。


Joan「ええ、その通りね。このアルバムにはふたつのテーマが含まれている――それはコミュニケーション、そして、祈ったり、恋をしたり、なにかに執着しているときや、集中しているときの精神状態において、わたしがしばらく見逃してきたすべての情報を読み解いていくことよ」


―アルバム・タイトルの「Damned Devotion」ついて、あなたはプレス・リリースのなかで「私が人生においてずっと向き合っているテーマ」と話されています。このタイミングで、そのテーマ(※「どうすれば執着しすぎたり、正気を失ったりすることなく、献身的な人生を歩めるのか?」)について取り上げたアルバムを作ろうとしたのは、どんな理由からだったのでしょうか? あるいは、そうしたテーマはこれまでのあなたの作品でも描かれてきたものなのでしょうか。


Joan「そうね。このテーマは私の作品の随所に散りばめられているものなのだけれど、今回改めて取り組むべきだと思ったのは、献身的な状態でいようとするぶんだけ、自分を責めたりする時間がなくなるからよ」


―では、そのあたりの話については、後ほど楽曲についての質問のなかで改めて聞かせてください。今回のサウンドについてですが、とても表情豊かでイマジネイティヴなリズムやビートのストラクチャーが印象的です。どのようなアプローチで制作されたのか気になりますが、重視したポイントについてなど教えていただけますか。


Joan「わたしはプログラミングされたビートが大好きなの。気持ちのいいリズム・トラックを作ってから、それに合わせて曲を作って、それをヴォーカルに合うように調整するのがいつものやり方よ。ドラマーの生演奏をサンプリングすることが多くて、いろいろな種類のドラムの音を刻んで、エフェクトをかけたものがリズム・トラックの一部になっているの。わたしの声をサンプリングして変化を加えたものを、認識できない部分で使っていたりもする。ヴォーカルを重んじて、そこに焦点があたるように心がけているわ」



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―前回のアルバム『ザ・クラシック』は、多くのゲスト・プレイヤーを迎えて制作された作品でしたが、今回このような、ドラム・パターンやシンコペーションにフォーカスをあてた音作りに向かったのは、どのような動機からだったのでしょうか。


Joan「『ザ・クラシック』のタイトル・トラックにはたくさんのゲストが参加していたけど、残りのほとんどの楽曲は、パーカー・キンドレッド(※今作の他にもアントニー&ザ・ジョンソンズの作品などに参加)とタイラー・ウッドとわたしの3人でほとんどの楽器とヴォーカルを演奏しているのよ。新しいレコードのトラックは、わたしのドラム・プログラミングがJAPWの楽曲に適しているかどうかを見極める実験として始めたものが多いの。ビートを作るってことは、明け方の4時に何かが起こるってことで、ブルックリンのアパートの夜型人間が作ったこのレコードは、この街が(もしくは、その制約のなかで)作り出したとも言えるわね」


―同時に、そうしたビートやリズムと、あなたのヴォーカルやメロディとが違和感なくシームレスに、オーガニックに溶け合っているところが今作の素晴らしさだと思います。そうした全体の構成やプロダクションについては、どんなところに意識を置いて制作に臨まれましたか。


Joan「うれしいわ! わたしが自宅のスタジオで作ったトラックにトーマス・バレット(※ダブマン名義で活動するプロデューサー。スフィアン・スティーヴンスやライとの共演も)がキーボードを、パーカー・キンドレッドがドラムを重ねて演奏したのよ。彼らはものすごく繊細なプレイヤーで、とても味がある演奏をするの。わたし自身は、ヴォーカルと、バックコーラス、そのダブ処理に時間を多く費やしたわ。それからルーク・モエルマンと一緒にミックス作業をして、不要な部分をすべて取り除いたの」



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―“Valid Jagger”は、終盤で流れる壮麗なエレクトロニクスのアレンジが印象的でした。この曲はどんなふうにして生まれた曲なんでしょうか。


Joan「ありがとう! それはオムニコードと呼ばれる奇妙な楽器のおかげね。暑い暑い夏の日に、自転車に乗っているときに書いたリフレインについて聞かれるのはなんだか面白いわね。家に帰ってから、壊れたピアノでコードをつけたの。イースター・バニーとロック・センターについての詩はおもしろ半分で思いついた。最後のアルペジオの部分は、聴いている人に予想外の喜びがまるで津波のように押し寄せてくるように感じて欲しかったの」


―R&Bやジャズのモダンなフィーリング、ゴスペルの荘厳なムードやフォークの瑞々しさなど、そうした様々な要素が丁寧かつ大胆に織り込まれている印象を今作からは受けます。たとえば、今作のサウンドを作る上で刺激を受けた、もしくはいい影響をもらったアーティストやレコードを挙げるとするなら? とくに、ビート・メイキングにおいてインスピレーションを受けたアーティストを教えてほしいです。


Joan「いろんな音楽を聴いてたくさんの素晴らしいアーティストから影響を受けているから、あなたは正しいわ。J・ディラに(ドクター・)ドレー、マッドリブも大好きよ。わたしは曲作りのときに「考える」ってことをしたことは全然なくて、ただわたしが普段聴いているすべての音楽から自然に生まれてくるの。だからきっとあなたのほうが、わたしが誰の影響を受けているかわかっていると思うわ」


―“The Silence”では、昨年ワシントンで行われたウィメンズ・マーチで録音されたチャントが使われています。その事実からだけでも、様々なメッセージを受け取ることができる曲ですが、この曲が生まれた背景、そしてこの曲に込められたあなたの思いを教えてください。


Joan「この曲は個人的なコミュニケーションにおける説明としてスタートしたのだけど、そしてそれがより大きなスケールのコミュニケーションへとつながっていったの。この曲の「沈黙がナイフの斬れ味を鈍らせる」というリフレイン。わたしたちは自分の人生を望むかたちで生きていくために、シャープでい続けなければいけない。わたしたちは孤独にならないために、何を感じているかを口に出して他人に知ってもらわなければならないの。わたしは2017年の1月にDCでこのウィメンズ・マーチの音を録って、それを曲中の「わたしの身体 わたしの選択 彼女の身体 彼女の選択」という合唱部に使ったの。たくさんの声を響かせるために、女性も男性も、たくさんの人が集まることは、変革を起こすために必要なステップだわ」


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―「何を信じるか」が大事なのではなく、「信じていることを声に出して主張することが大事」であるという、この曲が投げ掛けるメッセージに感銘を受けました。そうして声を上げることで、たとえ信じることが違う者同士でもそこから対話が生まれる、という意味で。あなた自身、この曲が今の時代に持ち得る意義については、どのように考えていますか。


Joan「あなたの見解がとても好きだわ。わたし自身は曲の持つ意味や影響を考えることはあまりないの。聴いている人に判断を委ねたいのよ」


―「Warning Bell」は、「夢見がちでいることと、それに伴う純朴な無知さについて」の曲だそうですね。この曲は、あなたの個人的な経験から生まれた曲なんでしょうか。それとも、もっと大きな視点から生まれた曲なんでしょうか。私自身は、ポピュリズムが今の時代にさまざまな問題を引き起こしている状況についてもあてはまる曲なのではないか、と思いました。


Joan「わたしのすべての楽曲は、自らの個人的な経験から生まれたもので、この曲もそう。そしてその通りだと思うわ。わたしはアメリカにおけるヘイトの現状や、それについての責任転嫁、一般的な無知に関して、認識が甘かった。わたしの知る誰しもが、トランプ政権になる、マイノリティの権利が奪われることがあるなんて考えていなかったのよ」


―最後に、あなたが音楽を作る上でいちばん大切にしていることを教えてください。


Joan「自分が感じるままに表現をすることね。たとえそれが怖くても、辛くても」






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Joan As Police Woman(ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン)
『Damned Devotion (ダムド・ディヴォーション)』
(Play It Again Sam / Hostess)
発売中
https://itunes.apple.com/jp/album/damned-devotion/1298422975
https://www.amazon.co.jp/ダムド・ディヴォーション-ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン/dp/B077ZH9PNH/ref=ntt_mus_ep_dpi_2

Joan As Police Woman
90年代からNY音楽シーンの重要作品に関わってきたジョーン・ワッサー。97年恋人のジェフ・バックリーが他界後ジェフのバンドメンバーとブラック・ビートルを結成。その後アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのバンドに参加。ジョーン・アズ・ポリス・ウーマンと して3枚のアルバムを発表。06年に三菱自動車アウトランダーCM曲に、J.D.サウザー「ユア・オンリー・ロンリー」カヴァーを提供し話題をさらった。14年、『ザ・クラシック』をリリースし、同年6月開催のHostess Club Weekenderにて来日。18年2月、5作目となる新作『ダムド・ディヴォーション』をリリースする。


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ーーListening to your new album “Damned Devotion” made me think about how personal affairs can be omnipresent, and also in this time of history, that can also be political. How would you describe this album yourself?


*Yes, I agree. This album contains two themes- communication and untangling all the information I’ve missed while in a devotional/ in love/ obsessed/ focused state of mind.


ーーThe bio says that the album title is a subject you’ve been tangling with all your life. What made you decide to make an album that explores this idea (“how does one live a devoted life without becoming obsessed or losing one’s mind?”) at this timing? Or has this idea been present in your previous records too?


*Yes, this is a subject I’m constantly piecing apart but hope to have a better take on it now because I don’t spend as much time berating myself for being in this state.



ーーI would like to discuss further in details about the ideas behind individual tracks later, but first let me ask about the sound construction. The beats and rhythms on this record are structured in such expressive, imaginative ways – could you tell me how they were made? What did you focus on the most?


*I love programming beats. Usually I’ll create a rhythm track that feels good, write a song over it and then tweak it to fit the vocal. Many of the sounds are samples of live drummers, chopped up, altered with effects and used as part of the rhythm track as separate drum hits. Some are samples of my voice altered to the point of non-recognition. I try to honor the vocal and make that the focal point.



ーーYour previous album “The Classic! explored collaborations with lots of guest musicians, while on this album you seem to have turned your focus to drum patterns and syncopation. How did this change come about?


*The title track had guests but the rest of The Classic was Parker Kindred, Tyler Wood and I playing almost all the instruments and vocals.
Many of the tracks on the new record began as experiments to see if my drum programming would feel right for JAPW. Creating beats is something that can happen at 4am which serves a night owl living in an apartment in Brooklyn so you could say that the city (or it’s built-in limitations) made this record as well.


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ーーI feel that one of the beauties of this album is how those beats and rhythms seamlessly blend into your voice and melodies. What did you focus on the most in terms of overall arrangements and production to make everything sound so cohesive and organic?



*Thank you! I had Thomas Bartlett (keys) and Parker Kindred (live drums) play over the tracks I made at my home studio. They are extremely sensitive players and very tasteful! I spent a lot of time with the vocal, backing vocals and overdubs. Then in the mix, Luke Moellman and I just took out anything extraneous.


ーーThe arrangement of electronics at the end of Valid Jagger is expansive and gorgeous – how was this track born?


*Thank you! That’s mostly due to a strange instrument called the Omnichord. It’s funny you ask- the refrain I wrote while riding my bicycle on a very very hot summer day. When I arrived home, I harmonized it with broken piano chords. The verses (about the Easter bunny and Rock Center) happened when in a very playful mood. I wanted the end arpeggios to feel like a tsunami that unexpectedly overwhelm the listener with joy.


ーーCan you name some influences on the sound production of this record? What struck me washow this record incorporates various musical elements from the modern feel of R&B or jazz, solemnity of gospel, purity of folk, to the structured beats of trap music, in a bold yet careful way.Were there any specific artists that inspired the beat-making on this record?


*Great references. I listen to all that music, so you are right. I love J Dilla and Dre and Madlib as well. I don’t ever “think” about what I’m writing, it all just comes out of all the music I listen to. So you’re better at naming these than me.



ーーThe Silence features chanting recorded at the Women’s March. That fact alone speaks for itself, but could you elaborate on the background of the track and your message in this song?


*This song started as a comment on personal communication and grew into including communication on a larger scale. The refrain is “It’s the silence that’s dulling the blade”. We must stay sharp if we want to shape our lives the way we want. We must say what we feel so that others know they are not alone. I took audio of the women’s march on DC in Jan of 2017 and used the chant “My body my choice, her body her choice” in the song. The coming together of so many women and men to make their voices heard is a necessary step in making change happen.


ーーI was touched by the message of the song: what’s important is not what we believe in, but the act of saying it out loud – for the act of speaking up opens up a dialogue between people who hold different beliefs. What meaning/impact do you think this song can have in this day and age?


*I very much like your interpretation. I don’t tend to think about what meaning or impact songs have- I let the listener decide what to think for themselves.


ーーThe bio says that Warning Bell is about “being a romantic and the naiveté that goes along with it”. Was this song born out of your personal experience, or from some bigger, wider perspective? I personally felt that this also applies to the current social situation where populism is causing problems.


*This is, as all my songs are, from my personal experience. And I agree, I was very naive about the level of hate, placing blame and general ignorance in the US. No one I knew thought that our current administration had a chance of getting into office, even stealing the office.



ーーGoing back to the beginning of this interview – about how personal affairs can be omnipresent and also political in the modern time – who are other musicians/artists you can relate to or you feel you share that sort of view with?


*Meshell Ndegeocello, Moses Sumney, Anohni, Terrance Hayes (poet)



ーーLastly, could you tell us what is the most important thing for you in making music?


*Expressing how I’m feeling even if I’m afraid to, even if it hurts.



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Joan As Police Woman(ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン)
『Damned Devotion (ダムド・ディヴォーション)』
(Play It Again Sam / Hostess)
発売中
https://itunes.apple.com/jp/album/damned-devotion/1298422975
https://www.amazon.co.jp/ダムド・ディヴォーション-ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン/dp/B077ZH9PNH/ref=ntt_mus_ep_dpi_2



text Junnosuke Amai

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