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text by Ryoko Kuwahara
photo by Satomi Yamauchi

Interview with Akiko Kiyama and YOSHIROTTEN

neol_kiyama_yoshirotten | Photography : Satomi Yamauchi


ドイツ、日本を拠点に活動し、リッチー・ホーティン、ジャイルス・ピーターソンなど世界のトップDJから高い評価を得てきた電子音楽アーティスト=Akiko Kiyama。その最新作は、NYやベルリン、シドニーなど国境を越えて活躍するグラフィックデザイナー/アートディレクターYOSHIROTTENとのコラボレーションによるサウンド&アートピース作品“JABARA”。「日本古来の音楽を再解釈する」というテーマのもと、Akiko Kiyamaが和楽器を素材に邦楽の音楽構造を現代的手法で再構築。この楽曲に触発されたYOSHIROTTENが、5面屏風構造の鋭利なヴィジュアル作品とソノシートによる蛇腹型アートピースを創作。サウンド、ヴィジュアルの先端表現を走る2アーティストによるコラボレーション作品となった。3月23日の本作の発売を前に、現在開催中のYOSHIROTTENの個展“FUTURE NATURE”の会場にて対談を敢行。独自の視点が交錯し、刺激を生み合う、創作とはなんたるかの本質がうかがい知れる対話となった。



——お二人は元々お知り合いだったんですか?


YOSHIROTTEN「知ってはいましたが面識はなくて、JABARA RECORDSの原田さんの紹介で初めてお会いしました」


Kiyama「2年くらい前に原田さんから和楽器を使った音楽を現代風に再構築してみないかとお話をいただいたんです。そこでYOSHIROTTENさんをご紹介いただいて」



——それが今回のプロジェクトのスタート地点となったわけですね。Kiyamaさんは和楽器や華道、茶道など日本の伝統文化にも触れられていますが、一方YOSHIROTTENさんはあまり日本文化に影響の受けていない印象で、“JABARA”は新鮮でした。


YOSHIROTTEN「そうですね、自分の作品ではそこまで日本にはこだわっていないというのはあります。聴いてきたのも海外のアーティストが多く、自分自身も日本人だからという意識もなくて。今回“日本”というテーマを提示されて、自分なりにどういうところを持っていこうと考える初めてのきっかけになりました」


——考えてみて、どういったものが日本のキーワードとして思い浮かびましたか?


YOSHIROTTEN「“JABARA”のアートワークを自分がやるうえで、和というもののイメージとして出てきたのは屏風でした。昔からある日本の絵を見せるディスプレイ形式であり、独自のもので、空間があっての屏風というものが音楽にもハマるんじゃないかというところからの発想です。さらに音をもらって、聴きながら考えたものがああいった風に落とし込まれていった感じです。だからちょっと竹っぽい色味になっていたり、そんなにサイケデリックではない、和っぽい色味に自然となっていたのではないかなと思います。透明のソノシートというのも良いですよね」


Kiyama「ありがとうございます。アートワークが蛇腹で出来上がってきて、その邪魔にならないようにと考えました」


——音楽先行だったということですが、音はいつ頃に出来ていたのですか?


Kiyama「全部で約6曲作ったんですが、今回収録したものに関しては主に2015年の夏に作っています」


——アートワークもですが、音自体も和楽器を用いつつも、いわゆる伝統的な和の音楽というよりはモダンな解釈ですね。


Kiyama「そこは意識しました。和楽器の奏者の方に演奏してもらったものを録音しているのですが、もちろんその方々のほうが和楽器の特性はご存知なので、こうやったらこういう音が出るなどという方法を教えていただいて、それはそのまま取り入れたりしています。チューニングの部分をそのまま入れたりもしていて。ただ、本作では和の旋律より、”間”のほうを意識して作っているんです。例えば『いっせーのせ』でジャーンと弾いても大体ずれるというのが和の音楽なので、そういった点ですね。音楽も色々なテンポや音の伸縮のものを混在させているのですが、屏風は伸縮、畳み方などで見え方が全く違ってくるものだし、”間”がアートワークでも表現されていて、嬉しかったです」


neol_kiyama_yoshirotten1 | Photography : Satomi Yamauchi


——話し合いではなく、共通の“間”に辿りつくというのはすごい。改めて、Kiayamaさんから見たYOSHIROTTENさんの作品の特徴をおうかがいさせてください。


Kiyama「日本の作家さんは良い意味で儚い感じが多い印象ですが、YOSHIROTTENさんは淡い色は使うけれど線や形は強いので、そこが好きです。迷いがないというか。迷ってごまかす綺麗さもありますが、ビシッと決まっているところがはっきりしていて好きです。あと、世代も同じなんですよね。UKが面白い時期に思春期を過ごしていて。10代の時の影響は果てしなく深く切り刻まれているので、そのあたりで強く影響を受けたものが似ているのかもしれないですね」


YOSHIROTTEN「僕もパンクロックや70年代のUKなどが一番根底にあると思います」


Kiyama「アートワークもそういった影響がわかる気がします。ただ、私は大元はヴィジュアル系ルーツで、LUNA SEAの大ファンというところからUKに入っていった口なのですが(笑)」


YOSHIROTTEN「その話でめっちゃ盛り上がりましたよね(笑)。先日LUNA SEAのジャケットをやらせてもらったので一番に言わなきゃと思って」


neol_kiyama_yoshirotten3| Photography : Satomi Yamauchi


——(笑)。YOSHIROTTEN さんはNINJA TUNEともお仕事されていましたし、Kiyamaさんとの親和性が高いのも頷けます。“JABARA”も展示されていましが、今回の個展はどうご覧になりましたか。


Kiyama「とにかくスケールが大きかったので、まずはそこにびっくりしました。個人的には赤の部屋で映像が微妙に動いているというのがすごく好きで。あとは音を使うというところも催し物といった感じで楽しかったです」


——有機的な展示ですよね。細胞のような動きの映像もあり、オープニング・レセプションではライヴもあったり。


YOSHIROTTEN「アートのオープニングらしくないオープニングになりましたね。うるさいという意味で(笑)。ライヴをやってくれたのはロシアから呼んだアーティストなのですが、Maria (Teriaeva)をインスタで見つけたとき、宇宙人っぽいモジュラー使いがいるぞというので惹かれて。その子が自分の作品が大きなスクリーンで映し出される中で顔だけ混ざり合うということがやりたかったんです。かつ、こういう場所だから、音じゃない音というのが響き合って混ざり合う感じになる。それが、この場所を使ったオープニングの意味だと思いました。それはそれで一つの作品になればいいなと」


——まさにインスタレーションですね。今回の展示はいつ頃から構想されていたのですか?


YOSHIROTTEN「4年前からやりたかったのですが、やっと動き出したのが1年半前。作品を作り始めたのは4ヶ月前です。全部このために作ったもので、展示している大きなキャンバスは5点ですけれど、作品数自体は200点あって、そこから選んだ5点。それと映像に落とし込んだものがあります」


neol_kiyama_yoshirotten4 | Photograpy : Satomi Yamauchi



——このタイミングで大規模な個展をやろうと思ったのはなにかきっかけがあったのでしょうか。


YOSHIROTTEN「5年前に個展をやって、そこからベルリンとロンドンで小さい展示をやってきた中で、自分が作ってきた“FUTURE NATURE”というテーマの作品群は、やはり大規模で見せないと伝わらないと思ったんです。“FUTURE NATURE”とは、可視光線という光の線によって物の色や形が見えているわけなのですが、本当はもっと沢山の光の線があって、見えていない線が光が当たることで見えたり、ここにはもっと色々な物があるんだというところからイメージをしていったもの。これはこうだと決める必要はなく、いろんなことが起こる可能性があると気づいて生きていったほうが楽しいかもしれないという提示でもあって。その試みを宇宙に飛ばしてみたらどうなるかというのが今回の展示です。昔、NASAがボイジャーという無人惑星探査機にボイジャーレコードという地球の生命や文化の素材を伝える情報を入れて宇宙へ飛ばしたのですが、それはまだ空を飛んでいるんです。それへのオマージュでもありました。一つめの部屋(光の記録)はそれを飛ばすまでの試みをする部屋。二つめ(宙の窓)はそれを飛ばして、三つめ(記憶の彼方)はそこに入っていくという経験が出来る部屋です」


——なるほど。有機的であったり、見えないものを見るというのはKiyamaさんの専門分野の、バイオロジーにも繋がります。


Kiyama「個人的なことなんですが、私は変な夢をいっぱい見る人で、夢の中で青い光が出てくると基本的に最悪なことが起こるんですね。指などの身体のパーツが分断されて、それぞれのパーツがゆらーっと動いて全く違う事象に行ってしまって『ああ、もう自分の身体にアクセス出来ないんだ』という悲しい夢をよく見ていて、それを思い出しました(笑)。丸とか四角とか前とか後ろとかわからなくなってしまう感覚です。そういう個人的な見方がありつつ、バイオ的な見方としては、顕微鏡の中を覗いてみると、綺麗な細胞は理路整然と並んでいるのですが、雑菌が入ってしまうとものすごく悪そうな見た目の物が大量に増殖されたりするんですよ。実験室では雑菌が入るのは最悪なこととされていますが、雑菌が入ってしまった顕微鏡の画のほうが面白いなと思っていたんです。異質感があるほうが面白いというか。そういった印象を今回の作品から受けましたね」


YOSHIROTTEN「凄い感想! めちゃくちゃ嬉しいです」


Kiyama「あと、バイオの実験の手法で紫外線や赤外線などは沢山使うんです。それがあるからこそ例えばタンパク質の濃度がいくらか分かったり。肉眼で見えない物を光を通して知るというのは普段から実験としてやっているのですが、その光がアートではインスピレーション源になるというのはとても面白い体験でした」


YOSHIROTTEN「こういう話を聞いていると、やってみたいなという新たなアイデアに繋がりますね」


——Kiyamaさんは既に6曲作られているということでしたが、“JABARA”はこれが第一弾で、シリーズ化されていくのでしょうか。


YOSHIROTTEN「そうですね。今回の展示にカセットテープのようなものがあって、いま25メートルあるのですが、それが今後何百メートルになっていっても面白いかなと思っているんです。パッケージデザインとは違ってアートワークというのは、その音楽の一瞬を止めているということだと思っていて。その一瞬というのは音楽が鳴り続けたら変化していくので、延々と続いていくという発想から作っているものなんです。だから“JABARA”シリーズも、この続きが連なっていくというのもイメージしたりしています」


——なるほど。YOSHIROTTENさんの作品は、視点も発想も出し先となるメディアまでも面白い。そのアイデアのベースにあるのは?


YOSHIROTTEN「出来るなら誰もまだやっていないこと、見たことがないことを作りたいんです。そこに向かって探っているだけですね」


——Kiyamaさんはこのところ新作のリリースが続いていますが、今も制作中ですか?


Kiyama「通常のカセットテープのリリースではないのですが、実はいまキャンドルを作っていて。昔からキノコが原型の女の子のキャラクターを描いていて、それが立体になったら嬉しいなと思ったところからキャンドルアーティストの方に作っていただいたんです。黒いキャンドルなんですけれど……人が溶けちゃう、みたいな(笑)。それで、キャンドルを点しながら聴く音楽というのをこれから作ろうと考えています。派手に溶けていくキャンドルなので、しんみりではなくアグレッシブな感じにしようかなと。溶けているのをただ待っている時間に聴く音楽も良いかなと考えているところです」


neol_kiyama_yoshirotten5 Photography : Satomi Yamauchi



photography Satomi Yamauchi
interview & edit Ryoko Kuwahara



JABARA_Jacket_OPEN001
JABARA_Jacket_main

Akiko Kiyama
『JABARA』
Artwork:YOSHIROTTEN
(JABARA RECORDS)
発売中
蛇腹型アートピース&7inchソノシート(楽曲ダウンロード情報付き)
Folding Screen & 7inch Flexi Disc Vinyl(with DL code sheet)
限定200部(Limited 200 Copies)
5400円(税別)


Official Site:
http://jabara.tokyo


Bandcamp:
https://jabararecords.bandcamp.com


YOSHIROTTEN Exhibition “FUTURE NATURE”
会期:2018年3月10日(土)〜3月29日(木)※会期中無休
開場時間:11:00〜21:00 (入場時間は20:30まで)
会場:TOLOT heuristic SHINONOME
住所:東京都江東区東雲2丁目9-13
入場料金:1,000円(ポストカード付き)※未就学児は無料
http://www.yoshirotten.com/futurenature/

AKIKO KIYAMA
音楽家。東京生まれ。2002年から音楽制作を始め、04年にロンドンの Sud ElectronicからEP『Dimension』をリリース。ミニマルテクノの旗手として高い評価を受ける。07年よりベルリンを拠点として、トロントで開催されたRedbull Music Academyへの招聘やバロセロナの「Sonar Festival」への出演など、世界を 舞台に活動を行う。15年から東京に拠点を戻し、カセットテープ主体のレーベル「Kebko Music」を始動。17年には新プロジェクト「Aalko(アールコ)」にて活動開始、電子音楽&デジタルアートの祭典「MUTEK.JP」に出演。
http://akikokiyama.com


YOSHIROTTEN
東京を拠点に活動するグラフィックアーティスト、アートディレクター。1983年生まれ。魚座。グラフィック、映像、立体、インスタレーション、音楽など、ジャンルを超えた様々な表現方法を用い、自然そしてまだ見ぬ未来の景色を主題とした作品を制作している。主な個展として、不思議な板を透過して現れる世界を描いた「ABYDOS」(東京2012年)、水溜まりに映った景色を、グラフィックとインスタレーションを用いて描いた「PUDDLE」(東京2013年)、浮遊し重なりできる未来を描いた「FLOATING FUTURE」(ロンドン2015年)などがある。また、グループ展「As We Collide」(ベルリン2014年)にも参加している。
グラフィックアーティストとして活動する傍ら、著名ミュージシャンのアートワーク製作、ファッションブランドへのグラフィック提供、企業、ブランドなどの広告制作、店舗空間デザインなど、アートディレクターとしても活動している。
http://www.yoshirotten.com

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