Interview with jan and naomi x Salyuneol.jp | neol.jp

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text by Shoichi Miyake
photo by Masakazu Yoshiba

Interview with jan and naomi x Salyu

NeoL_salyu_janandnaomi | Photography : Masakazu Yoshiba

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過日リリースされたjan and naomiのニューアルバム『Fracture』が素晴らしい。2人の歌はこれまで以上に気高い美しさをまといながら、それと同時に“ポピュラリティ”という言葉さえも浮かぶような、能動的に他者に向かう意志を感じさせる。今作のリリースを記念して、Salyuとの対談を実施。その内容は“変化”と“歌”と“研究”にまつわる興味深いものになった。



──今まで交流はあったんですか?


Salyu「5年くらい前かな? 下北沢のバーでやっていたjan and naomiのライブを観に行ったんですよ。ショコラ(Chocolat & Akito)ちゃんが誘ってくれて。奈々子さん(シンガーソングライターでjanの母である佐藤奈々子)も歌っていらして」


naomi「そのときご挨拶させていただいて。俺は大好きだったからうれしかったです。もともとリリイ・シュシュがすごく好きで。Salyuさんがいらしたときは僕らがライブをやり始めたころでした。そのバーで奈々子さんと月イチでライブをやっていたんですね」



Salyu「ショコラちゃんとずっと『かわいい〜!』って言いながら観てました。すみません(笑)」


jan「ショコラさん、僕が髪を剃ってから『かわいい』って言ってくれなくなったんですよ。寂しいです(笑)」


──Salyuさんが持っているjan and naomiの音楽的な印象は?


Salyu「最初から美しいという印象を持ってますね。今日、お会いするにあたってあらためて過去作から最新作まで聴いたんですけど、たとえば『Leeloo and Alexandra』は歌の強さがインパクトとしてバーン!と入ってくる。そこから歌とサウンドの空気感のインパクトが強くなっていっている印象があって。そして、最新作はほんとになんて表現したらいいかわからないくらいの最高傑作だと思います。感動しました」


──自分たちの音楽における美学を更新したという手応えがあると思います。


jan「そうですね。2年ぶりのアルバムということもあって、この間に人柄や性格が変化したところもあると思います。根本的な人間性は変わってないけど、第3のレイヤーくらいのところが色づいたところがあったと思うんですよね」


──その第3のレイヤーについてもう少し詳しく話してもらえますか?


jan「自分でもなんて言っていいかわからないところがあるんですけど、ぼやけていたものが輪郭を帯びてきたというか。たとえば今までは雲に隠れていた女の子について歌っていたのが、今は実像が見える人について描けるようになっていて。1枚目のアルバムから少しずつ曇っていた部分が消えていったのかなと。歌詞を描くという意味において」


──こういう言い方はjan and naomiの音楽に対して的確ではないかもしれないけど、歌としてのポピュラリティがグッと高くなったと思ったんですよね。


jan「ああ、歌と楽器のアンサンブルはわりとオーソドックスになってきて。それはあとから作品を聴いて気づいたことなんですけど。前はちょっとパンクっぽいというか、生々しい音楽がいいという美学が俺の中であったんだけど、今回は時間をかけてオーソドックスに作った音楽という感じで。いい意味で無機質になったのかもしれない」


──3曲目「TIC(Requiem for Tokyo)」のノイズのあとにくる、4曲目「CSKE」の名曲然とした佇まいをまとった美しい歌にすごくグッとくる。曲順もいいですよね。


jan「曲順は狙っていたわけではないけど、俺が作った曲とnaomiさんが作った曲が運命的な絡み合い方をしていった感じですね」


naomi「Salyuさんがライブを観てくださったころはふたりきりでライブをやっていたんですけど、そこからどんどんバンド編成でライブをやる機会が増えていって。それで、昔の楽曲もバンドで演奏するとノイジーになったり、音数が増えて疾走感や激しさが増したり。そういう環境の中で制作に入ったから、3曲目のノイズはわりと自然というか。そのあたりはこの2年のライブが影響してますね」


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──Salyuさんも以前からいろんな編成でライブをやってますよね。salyu × salyuというプロジェクトもあるし。今はどんなモードなんですか?


Salyu「今の私はどこに向かっているかすごく謎でしょ?(笑)」


──そうですね(笑)。リリースもお休みしているし。


Salyu「そうなんですよね。今の私は歌うことに徹しているというか。ライブという意味では、今まで提供していただいた楽曲をいかに長く多くの人に届けられるか、楽しんでもらえるか、自分でも大切にしていけるかということが人生の課題のようになっていて。そういう意味でも様々な編成の違う切り口で楽曲を楽しんでいただきたいし、自分自身も新しい発見を求めてるという感じですね」


──楽曲制作もしているんですか?


Salyu「実はね、個人的にはやりたいことがはっきりある状況なんです。それがまた個人作業の制作なんですよ(笑)。それもカバーをやりたいと思っていて(笑)」


jan「へぇ」


Salyu「salyu × salyuで突き詰めたのはコーラスという自分の音楽、歌における出発点だったんですね。私は合唱から歌うことを始めているので。salyu × salyuはそういう自分の原点をいかに楽しく、一つのポップソングとして表現することをテーマにコーネリアスさんと取り組んで。これからも大事にしていきたいプロジェクトなんですけど、その他に今、研究中のことがあって。これ、初めて話すことなんですけど。私ばかり話していて大丈夫ですか?」


naomi「もちろん大丈夫です」


jan「聞きたいです」


Salyu「それもコーラスの研究なんですけど。声というものが持っている響き、可能性、声と声が共鳴することの感動。そういうことをより自分の感性としても物理的にも研究していて。それで、アカペラアルバムを作りたいと思ってるんです」


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──アカペラアルバムを作りたいって数年前にもおっしゃっていましたよね。具体的に動き出しているんですね。


Salyu「いつまでやっているんだという感じでもあるんだけど(笑)。いつ作品をリリースできるかわからないんだけど、インストゥルメンタルの楽曲をアカペラで表現したいと思ってるんです」


jan「面白そうですね」


Salyu「本来、楽器のために書き下ろされた楽曲を、あえて多重録音した声で表現してみる。新しい声の世界が開かれていくような感覚があって。でも、何十トラックも重ねるから、だんだん人間としての挑戦にもなってくるんですね。人体をいかに機能させるか、とか」


naomi「ヒューマンビートボックスとかに近いものがあるんですかね?」


Salyu「そう、それで1回ヒューマンビートボックスにもトライしようと思って、AFRAさんに相談です」


naomi「めちゃくちゃ最高の相談相手ですね(笑)」


Salyu「2時間くらいレッスンしたんだけど、ダメだった。そこで、この研究はそこまで一人でやることにこだわらなくてもいいんだって気づけたの(笑)。ちゃんと人の力も借りようって。まぁ、最近の私はそういう感じなので、声の響きというものに今まで以上に敏感になってるんですね。だから、jan and naomiの新作を聴いて、その美しさが衝撃的だったんですよね」


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jan「ありがとうございます。アルバムの中で1曲だけどういうふうに歌っていいかわからない曲があって。それは7曲目の『City of love』という曲なんですけど。この曲の歌詞の世界観とアレンジがあまりにも自分の予想を超えていて。歌い方にすごく悩んだんです。結局、200テイク以上録って。貴重な経験でしたね」


naomi「歌えないんじゃなくて、これまでは何も意識せず歌っていたんだけど、今回のレコーディングでjanは意図的に誰かになってるみたいな歌い方をし始めていて」


──憑依するみたいな?


jan「いや、憑依というか、歌詞の内容が抽象的だったものに対して、わりとストーリー的な輪郭のあるメロディを書いたから。フワッと歌ってもストーリーテリングにならない難しさがあって。歌の説得力を増すために低い輪郭のある声で歌って、歌詞が伝わるように心がけたんですよね。途中で歌詞も変えたりして。今までは生々しい歌をぶん投げていた感覚だったんだけど、今作で歌に対してじっくり研究できたのはうれしかったです。だから、Salyuさんの研究のプロセスはすごく羨ましい。研究してるときってちょっと苦しかったりするけど、その瞬間に一番新しい細胞が生まれてると思うから」


Salyu「わかる。私もすごく楽しい。時間はかかりますけどね」


──その研究はポップミュージックのフィールドを超えたところにあるものじゃないですか。Salyuさんがそこに至ったのは興味深いですね。


jan「歌の研究として究極だと思う」


Salyu「私はポップの道に入ってよかったと思うんです。たとえば私が合唱団から音楽の道を選ぶときにクラシックや声楽の世界を選んでいたら、マイクを使わないからもっと特殊な発声をしていたと思うんですね。でも、私はポップの道に行ってマイクを使いながら日常会話程度の音量でも歌ってきた。それを今の研究に応用できるのは、自分だからこそできる試みだなと思って」


──そうですね。誰もができることではないですね。


Salyu「そこで密かに使命感が湧くんですよね」


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──jan and naomiにとってこの2年で一番大きな変化はどんなことですか?


naomi「この2年で制作の方法論が大きく変化しましたね。今まではギターを基軸にしてスタジオでセッション的に曲を作ることが多かったんですけど。jan and naomiとして昨年公開された映画『AMY SAID エミー・セッド』のサウンドトラックを制作して。それは毎回レコーディングスタジオに入って生音で録るという規模感でもなかったので、わりと自宅で制作を完結させなきゃいけなかったんですね。そういうやり方で何十曲も作らなきゃいけなかったから、自宅の制作環境とスキルを上げなきゃいけなかったし、その経験を経た恩恵が、今作に如実に出てますね。曲作りのアプローチがギターからシンセサイザーや打ち込みに変わったり」


jan「初めてトレーニングした感じでした(笑)」


naomi「5秒、10秒の効果音に近い曲もとかも作らなきゃいけなくて。しかもテクノっぽい曲とかジャズ系の曲も作ってほしいって言われて、その時点でjan and naomiっぽさはないじゃないですか(笑)。映画に出てくる吉祥寺のバーのBGMを作るという設定だったんですけど、そうなると確かにスウィングしている曲も必要だよなと思って。そこにトライするのもいい経験でした」


──今度はまたセッション的に曲を作ってもいいわけだし。


jan「今はこのアルバムを作り終えてそんなに時間が経ってないからより思うのかもしれないけど、やっぱり今度はまた生々しく制作してみたいですね」


──あと、Salyuさんの研究が実を結んだときにステージ上での共演も観たいですね。


jan「いいですね」


Salyu「私としてはぜひ楽曲提供をしていただきたいです。それをウィスパーボイスで歌いたい」


naomi「やりたいですね。じゃあ今日から作ろう!」


Salyu「やったぁ! Jan and naomiの新作を聴いてまたリリイ・シュシュみたいに歌いたいと思ったんですよね。キーもSalyuより低めにして、超ウィスパーボイスで歌ってみたいです」


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photography Masakazu Yoshiba
text Shoichi Miyake
edit Ryoko Kuwahara



janandnaomi
jan and naomi
『Fracture』
発売中
(avex)
https://www.amazon.co.jp/Fracture-jan-naomi/dp/B07B2F8K53





【Fracture tour 2018】
全公演チケット:前売り¥2,500 (税込・1Drink別・整理番号有り)
チケット発売 5/26(土)11時〜
——————————
■6/23(土) 札幌 PROVO
OPEN 19:00 / START 20:00 <チケット取り扱い>
PROVO電話予約:011-211-4821
メール予約:osso@provo.jp ※お名前・人数・連絡先をメールにてお送りください。
【問】PROVO 011-211-4821


■7/14(土) 福岡 UNION SODA
OPEN 18:00 / START 19:00 <チケット取り扱い>
チケットぴあ P-コード: 118-465
Live Pocket : https://t.livepocket.jp/e/4dw_4
メール予約 : info@herbay.co.jp
※お名前・人数・連絡先をメールにてお送りください。
【問】HERBAY 092-406-8466 / info@herbay.co.jp


■7/16(祝月) 京都 UrBANGUILD
OPEN 18:00 / START 19:00
guest : SOFT <チケット取り扱い>
UrBANGUILD HP予約:
http://www.urbanguild.net/ur_schedule/event/180716_fracturetour2018
【問】UrBANGUILD 075-212-1125


jan and naomi
Jan(GREAT3,Jan Urila Sas) とNaomi によるデュオ。2012 年、渋谷百軒店で各々がソロで活動しているときに出会う。2014 年2月、1st シングル「A Portrait of the Artis as a Young Man/time」を《Hot Buttered Record》より7inchレコードで500 枚限定リリース。10月に1st EP「jan,naomi are 」を発表し、2015年3月には『サウンド&レコーディング・マガジン』 Premium Studio Live Vol.9「Crescente Shades」INO hidefumi+jan and naomi を配信リリース。2016年6月、2ndEP “Leeloo and Alexandra” を携え全国ツアーを敢行。7月、フジロックフェスティバル2016に出演。2017年は、8月にロシア・ウラジオストックで行われたV-ROXフェスティバル、9月には第25回サンセットライブに出演。さらにアートやファッションとも親和性の高い彼らは、6月にMaison MIHARA YASUHIROの2018/SS ロンドンコレクション「#BLANK MIRRORS」ライブプレゼンテーションや、映画『Amy said』(村本大志監督・2017年9月30日公開)の映画音楽とエンディングテーマ「Black Milk」を担当するなど活躍の場をひろげている。<狂気的に静かな音楽> という新たなミュージック・スタイルを確立し、儚く切ないメロディーセンスでリスナーを虜にしている。
2018年4月18日に待望のニューアルバム『Fracture』をカッティングエッジからリリース。
http://janandnaomi.tumblr.com/
https://janandnaomi.localinfo.jp/


jan and naomi 主催によるレギュラーライブイベント
「Roarers on the road」(渋谷Bar Music 第1金曜)
http://barmusic-coffee.blogspot.jp
「Upstairs」(富ヶ谷Callas 第3or第4土曜)
http://callastokyo.com

Salyu
2000年、Lily Chou-Chouとして2枚のシングルと1枚のアルバムをリリースする。2004年、小林武史プロデュースのもとSalyuとしてデビュー。以降17枚のシングル、5枚のアルバム、1枚のベストアルバムをリリース。2011年には、「salyu × salyu」として小山田圭吾との共同プロデュース作品「s(o)un(d)beams」を発表し、数多くの海外フェス出演により国外でも注目される。2017年4月・7月には2クール連続で東京メトロCMソングに起用となる。5月にはSalyuと小林武史2人編成による初となる香港公演がソールドアウトし、12月には自身2度目となる台湾公演を開催し、大きな反響を呼んだ。また、2年半ぶりとなるフルバンド編成でのライブを中野サンプラザホールにて開催し、大盛況のうちに幕を閉じた。2018年7月には横浜ランドマークホールリニューアルオープンライブやap bank fes’18の出演が決まっている。

http://www.salyu.jp

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