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text by Meisa Fujishiro
photo by Meisa Fujishiro

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#59 ティク・ナット・ハン

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 私は、こういった言葉を毎朝数ページずつ、一杯のコーヒーを味わうように、染み込ませている。当初は、ある意味、快楽的なものであったと思うが、習慣化するにつれ、良質の言葉による美しい1日の始まりは、時には夜遅くまで続く日々のハードワークによる混乱、疲労をスタートから鎮静させてくれる効果があることに気づき、心のサプリメントのようになっている。
 さらには、「怒り」を愛へと変容させるための、ベース作りになっている。穏やかなゆとりのある心の経験値を高めることにより、一歩一歩ではあるが、確実に好影響を与えている。怒りっぽい人には、穏やかに微笑んでいる時間はイレギュラーなことだが、それが逆転すれば、あとは穏やかな時をレギュラー化し増やしていける。怒りを変容させるゆとりは、このように日々の細やかな努力によって作ることが可能なのだと、私は経験上言うことができる。
 

 美しい言葉というものは、美しい人生を映す。これは飛躍が過ぎるだろうか?
 言葉というのは、声に出されるものだけではない。心に浮かべる言葉、表情に出る言葉、全て言葉である。思考は言葉によって作られる。生活は様々な思考がもたらす結果の集合でもある。生活は日々重なり、人生となる。これは逆に辿れば、人生の始まりは言葉になる。
 もちろん、言葉にならない感覚こそが、生命の主役なのだが、わずかな敷地とはいえ、言葉はやはり人生を映すと言える。他人を蔑み、比べ、妬み、憎んでいる言葉に浸されている人の、人生は、やはり暗さを映す。波動の高い言葉が脳内に常駐している人は、表情も温和で、それが類を呼び、その集団の波動を高めていく。
 再びいくつか引用したい。
 

・心が狭いと、理解も思いやりもわずかしか持てず、辛い思いをします。ほかの誰かの欠点を受
 け入れきれなくて、相手の方に変わることを強いてしまうのです。でも、心が広く大らかにな 
 ると、たとえ同じ問題が起きても、ささいなことへのこだわりは消え、心は穏やかになります。
 何よりも大切なのは、自分の心を大きく育てること。
・どんなものでも、生きているものはみんな養分を必要とするのです。それは愛ですらも同じこ 
 と。あなたが自分を大切にして、幸せでいるとき、愛する力は育ちます。
・「その人の苦しさを理解すること」が、あなたが誰かにあげられる最上の贈り物です。
・愛は樹と同じく、成長を止めたその瞬間から枯れ始めます。
・ 誰かに幸せを分け与えるためには、まずあなた自身がしあわせでなくてはなりません。
・ 「愛」とは素晴らしい言葉です。この言葉を正しくていねいに使って、この言葉を癒し、本来の意味を取り戻さなくてはなりません。
・ 子供達には、君はかけがえのない存在で、君らしくあるだけで充分なんだよ、誰かほかの人になる必要はないんだよ、と大人の私たちが伝えてあげましょう。
・ 愛する人の寝顔を見つめると、その人の幼さ、辛さ、希望、悲しみが見えてきます。ただそこに座って愛する人の寝顔を見つめてください。
 

ここまで「愛する」よりの抜粋
 

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