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text by Shiki Sugawara

『ともしび』監督アンドレア・パラオロ インタビュー/Interview with Andrea Pallaoro about”Hannah”

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『ともしび』に登場する人物たちは、観客に説明するための行動や動作を一切とらない。詳細な心理描写や背景説明を一切排した本作では観客に関係なく登場人物たちの生活は送られている。私たちはスクリーンに映し出されるあらゆる事柄から彼らの置かれた状況や背景、心境を前のめりで読み取る。それは謎解きのようでもあるし、また映画を通したひとつの体験とも呼べるだろう。
その唯一無二の存在感と圧倒的な表現力でこれまでにヴェネツィア、ベルリンなど多くの映画賞を獲得し名優と知られるシャーロット・ランプリングを主演に迎え、彼女との共同作業で本作を完成させた監督アンドレア・パラオロにその旅路を訊いた。



――作中では語られない“過去の出来事”により、社会から許されぬ存在となった主人公を描くという本作の着想はあるニュース記事から得たときいております。その記事を見た時点でどのような思いがあなたの頭に横切りましたか?また、そこからどのようにしてアイデアを膨らませていったのですか?


アンドレア・パラオロ「確かに夫が何故収監されているかは掘り下げていないけれど、劇中のたくさんのヒントがあるアイディアを示唆している。そこに焦点を当てようとしなかったのは、僕が興味を持っていたのは彼女の感情(エモーション)と心理的な状況だったからだ。でも夫が刑務所にいる理由はなんとなくわかるようになっている。僕が目にしたのは実際の事件の裁判についての記事で、ペドフィリアで服役中の夫を持つ妻のインタビューだった。僕にとってひどく興味深かったのが、彼女が夫を守ろうとしていたことだった。彼女自身のアイデンティティが彼という存在に依存していたんだね。そのこと自体に僕は同時に怖くも感じ、惹かれもした。自分が誰であるか、ということが、カップルという関係性、文脈の中においては、パートナーによって変わってしまう、というアイディアにね。脚本の開発はここから始まったんだ」

――ナラティヴにアンナという女性の人物像を描くのではなく、アンナを取り巻くムードから彼女の心理描写をする手法によって、観客は自分自身のアイデンティティをもアンビエントな自由さで探求することが出来ると思います。脚本執筆にあたり、アンナの心理をどのように構築し深めていったのでしょうか。


アンドレア・パラオロ「そんな風に感じてもらってすごく嬉しいよ。最初から僕の意図したところだったからね。僕にとってとても重要なのは観客に何を考えるべきか、感じるべきか、言わない事なんだ。観客にはそれぞれの旅をしてもらいたいし、自身をキャラクターやストーリーに重ねて欲しい。映画が最もパワフルな瞬間、それは作品が観客に観客自身を理解する機会を与えてくれる瞬間だと思っている。観て、観察して、キャラクターに投影して。それが僕の作りたいシネマだ。だからそういう風な体験をしてもらえてすごく嬉しい。最初からの目的でもあったからね」


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――The idea to explore this film that based on actual events which is you chose not to describe in the film but you read about it in news paper article and that’s how the journey began.So when you were reading it,what went through your mind and how did you expand the idea?


Andrea Pallaoro”Well,I was very very interested in…let me explain that there are many trues in this film present the idea but I chose not to focus on it because my interest is always in emotion and phycological state of mine.But there are that give a sense of why the husband is in prison.And I read a story of wife who has a husband in prison because of pedophilia.What was very interesting for me is how she protects him and how her own sense of identity depend on him.That scares me and faascinates me at the same time.That idea is who we are and a couple in relationship,and your identity can be changed depends on the partner.The story began from that thought”


――Instead of discribing us to who this woman narratively,you aproached the way of discribing the mood that is around her,and that allows us not only explore this woman but also the identity of audience with ambient freedom.Can you talk about it?



Andrea Pallaoro”Yeah I’m so happy that you felt it because that was my intension on the way begining.For me it’s very important to not to tell how the audience should think or feel from my film.I want them to have their own journey to see themselves onto reflected the characters and onto the story.I think the moment cinema can be powerful is when the film gives the audience an oppotunity to understand what they are.That is the cinema I want to make.I’m happy that you had an experience because that was exactely what I want to do”



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――脚本段階でシャーロットの起用が頭に浮かんでいたと仰られていましたが、監督は彼女とともにどのような演技プロセスを踏みアンナの人格形成をしていったのでしょうか?


アンドレア・パラオロ「運がすごく良かったのは、彼女がすごくやりたいと言ってくれてそれで撮影に入るまで2年半、コラボレーションする時間があったこと。その間に自分たちお互いことをよく知ることができたし、ベルリン、パリ、ロンドン、NY、LA、イタリアでミーティングを重ねてお互いのことを本当に良く知っていた。それによってより深いコミュニケーションを持っていたし、だからこそよりこのキャラクターの複雑で深い探求という模索ができたと思っているし、やはり監督と役者のクリエイティブなコラボレーションに絶対欠かせないものは絶対的な信頼だと思う。その信頼がなければ、物を作りながら発見をすることができない、その信頼が僕らの間にはあったし、そこから二人は手を休めることなく模索し続けていき、このキャラクターの持つ感情面の深さというのを明かしていくということができたんじゃないかなと思う。もともとこのキャラクターを思いついた時点からシャルロットに、とイメージしながらそのアテガキをしたが、まだその時は彼女に会っていなかった。やってくれたら嬉しいなと思って脚本送ったらやってくれることになったけれど、本当に最初から彼女がやるって言ってくれて、キャラクターを作り始めた時から完全に二人のコラボレーションと呼べるそんな作品になっているよ。彼女も全てをこの作品に明け渡して演じてくれたし、だからこそ、自分の内なる世界にこの役を演じるためにアクセスしてくれた、それだけ深いものができたんじゃないかな」

――本作のヒリヒリとした質感が伝わってくるような映像や蛍光灯の冷たく寂しい光は、アンナの心象風景を描写する上で非常に効果的に機能していたと思いますが、撮影監督のチェイス・アーヴィンとはどのような意思疎通が行われましたか?



アンドレア・パラオロ「本当に撮影監督は照明も絵作りも天才的なアーティストなんだ。前作でもご一緒してて今回が2作目になるけれど、お互いにもう、人となりを僕たちはお互いに知っていて、お互いに何を言おうとしているかわかる、そんな阿吽の呼吸の関係だね。今回は作品を一番ピュアな形でキャラクターの心模様とゆう物を雄弁に伝えられるような視覚的なストーリーテリング、映像的な見せ方ってどういうものなんだろう、ということを模索していきながら作ってきた。最初にいろんな話をしたんだけれども、アンナと自分を置き換えて、あるいは自分の人生と比べてアンナの置かれている立場やその関係性や、ということから話しあってきた。そこから想起するイメージっていうものはどういうものなのか、自由に連想していくような、そんな形で映像のイメージだったり、アイデアというものを出して行ったり、そこから今度は心象風景を反映するような映像を自分たちの中で見つけて行って、そこから更にカメラでこういうものを撮ればいいんじゃないか、などカメラワークというものを考えていった。それはすごく直感的な作業で、結果的には扉の間から、とか窓を通してとか、廊下からとか、というショットがとても多いのは、観客の方が、まるで隣の部屋からアンナを見ているようなそんな感覚というものを観客に感じて欲しかったからなんだ。テイクも割と今回は長めのものが多くて、編集であまりそれをいじってないものもかなりある。僕のコンセプトとしては、それぞれのショットが絵画じゃないけれども、自立した一つの絵みたいな形で切り取れるような、そういった絵作りというのを模索した。なので、構図がとても重要だし、色彩設定もとても重要な要素だったんだ」



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――While you writing this script,Charlotte Rampling is in your mind as you mentioned earlier,can you tell us how you worked with her on creating this character and also how you worked on forming the interphysic who she was.

Andrea Pallaoro”I was really lucky because she said she wants to play this role after I sent a script,and we had two years for preparing before started filming.We could get to know each other very well during that term and we had meeting at Berlin,Paris,London,NY,LA and Italy.Because of that,we had comunication very deeply that’s why we could explore this complicated and deep character so well.I think most important thing for creative collaboration between director and actor is absolute relationship of mutual trust.It is impossible to discover something while creating without trust.There was absolutely trust between us and we kept exploring,so we found the depth of the emotion that this woman has.I wrote this character for Charlotte but I hadn’t met her at that time.I thoght It will be nice if she play this role so I sent this script to her,and she said yes.She showed her everything in this film so that’s why this film can access to your iner world”


――The visual is for example cold-lonely lights,these all defenitely work together convey sored,edged texture of this film in very effective way functioning for portrait this woman’s inner landscape.You coraborated with Chase Irving your DP on this film,can you tell me what discution did you have with him?



Andrea Pallaoro”He is kind of genius of lighting and making picture,we worked together on my previous film so this was the second time for us and we know each other so well,we know what we want to do ,kind of like that relationship.We tried to find the way how we discribe the inner thoughts of characters purely on visual storytelling.We had discussion at the beggining,and we talked about if we were this woman or the difference from our lives and position from her.What is the image from that thinking,and we associated the visual image and idea.And then, we went to find the visual image that reflects the inner landscape of characters,so we found the camera work from that.It was really intuitional way so there are many shots from the between doors, or through the window,from hall as a result because we wanted audience to feel the sense like seeing her from next room.There are also many long take and I didn’t edit it.It’s not picture but I wanted every shots to be looked like independent picture,that was my concept.So the composition and color were very important in this film”



text Shiki Sugawara





シャーロット・ランプリング主演!2017年ヴェネチア国際映画祭 コンペティション部門 主演女優賞受賞


『ともしび』
2019年2月2日シネスイッチ銀座ほか全国順次公開


<story>ベルギーのある小さな都市。アンナとその夫は、慎ましやかに過ごしていたが、夫が犯したある罪により、その生活はわずかに歯車が狂い始める。やがてそれは見て見ぬふりが出来ないほどに、大きな狂いを生じていくのだった・・・。「わたしはあの時、いったい何を失ったのだろう」――。老年にさしかったアンナに一体なにが起きたのか?人は一度犯してしまった罪は、二度と許されないのか?そもそも彼女は自分の人生を生きていたのか?そして「決して明らかにしてはならぬ家族の秘密」とは?人生の終盤、様々な業を背負ったひとりの女が、もう一度、生き直しを図るまでの、哀しみと決意を追う人生最後のドラマが、ミステリー小説のごとく描かれていくー。
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監督:アンドレア・パラオロ脚本:アンドレア・パラオロ、オーランド・ティラド製作:アンドレア・ストゥコビッツ, ジョン・エンゲル, クレマン・デュヴァイン音楽:ミケリーノ・ビシェリャ撮影:チェイス・アーヴィン出演:シャーロット・ランプリング(『さざなみ』『まぼろし』『愛の嵐』)、アンドレ・ウィルム(『ル・アーヴルの靴みがき』『ラヴィ・ド・ボエーム』)他
2017年/フランス=イタリア=ベルギー/フランス語・英語/カラー/4Kスコープ/5.1ch/93分/原題:Hannah配給:彩プロ <コピーライト>2017 © Partner Media Investment – Left Field Ventures -Good Fortune Films

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