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text by Nao Machida
photo by Shuya Nakano

『バンブルビー』 ヘイリー・スタインフェルド来日インタビュー/Interview with Hailee Steinfeld about “Bumblebee”

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コーエン兄弟監督作『トゥルー・グリット』(2010)で映画デビューを果たし、弱冠14歳にしてアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたヘイリー・スタインフェルド。シンガーとしても活躍しており、日本でも多くのファンを誇る彼女の最新主演作『バンブルビー』が3月22日に全国公開される。『トランスフォーマー』シリーズ史上初めて女性の主人公を迎えた映画の舞台は、1980年代のカリフォルニア。孤独な少女チャーリーと記憶を失った地球外生命体バンブルビーの出会いを通して、壮大なシリーズの起源が明かされる。ここでは公開を前に来日したヘイリーに、作品に込めた想いや自身が手掛けたエンディングテーマについて聞いた。(⇨ In English



——『トランスフォーマー』の新作がシリーズ史上初めて女の子を主軸に描いたストーリーで、あなたが主演だと聞いて、とてもうれしかったです。最初にオファーを受けたときは、どのように感じましたか?


ヘイリー・スタインフェルド「『トランスフォーマー』シリーズの新作だと聞いて、すごくワクワクしたわ。世界中で人気の高い壮大なシリーズだから、私にとってはそれだけでも十分にエキサイティングだった。でもあなたが言ったように、これまでとは一味違った『トランスフォーマー』の作品を作るというアイデアに、さらに興奮したの。本作はあらゆるレベルで過去の作品とまったく違うのだけれど、素晴らしい視覚効果やアクション満載のシーンといった、『トランスフォーマー』のファンが大好きなおなじみの要素も含まれているのよ。とても感動的でエモーショナルでユーモラスでもあり、登場人物によって突き動かされる物語だから、すごく興味深いと思ったの」


——これまでは男性が主人公だった『トランスフォーマー』シリーズへの主演オファーということで、驚いたのではないですか?


ヘイリー「驚いたわ!これまでになかったことだから、間違いなくエキサイティングで魅力的でもあったし、主軸に描かれる若い女性のキャラクターを演じられることを光栄に思った」


——主人公のチャーリーは超能力があるわけでもなければ、プリンセスでもない。どこにでもいそうな、リアルな普通の女の子で、そこがすごくいいなと思いました。


ヘイリー「私もすごくいいと思うわ」


——撮影に入る前に、トラヴィス・ナイト監督(『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』)とは、チャーリーの人物像についてどのような話をしましたか?


ヘイリー「私とトラヴィスが大切にしていたことの一つは、バンブルビーとチャーリーの関係をできるだけリアルで信ぴょう性のあるものにすることだったの。若い女の子と地球外金属生命体の関係を描くなんて突飛なことだけど、それをエモーショナルなものにして、観た人が泣いたり、笑ったり、踊ったり、ベッドに潜り込んだりしたくなるようにしたかった。2人の関係がリアルに感じられるように、私たちはすごく真剣に情熱を注いで取り組んでいたわ。もちろん、話し合いはクランクインするよりずっと前から始めたのよ。背景を十分に作り上げて、チャーリーの生い立ちやバンブルビーの生い立ちとつじつまが合うようにした。そういった話し合いは撮影中もずっと続いて、いろんな場面で役に反映できるような小さな発見が続いたの」


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——さらに本作は、女性によって書かれた女性の物語でもあります。脚本家のクリスティーナ・ホドソンとはチャーリーについて話しましたか?


ヘイリー「クリスティーナはもちろん、『スウィート17モンスター』(2016公開のヘイリーの主演作)で脚本家と監督を務めたケリー・フレモン・クレイグとも話すことができたの。ケリーは本作の脚本にも関わっていたのよ。すでにケリーのことは知っていたし、彼女とクリスティーナとは話しやすくて、チャーリーがどんな人でどんな話し方をするかを一緒に見つけていった。女性によって書かれた女の子はリアルだし、すごく理想的よね。女性は他の女性に対して繊細な感覚を持っているけれど、若い女性の声を作り上げていく上で、ほとんどの男性は10代の女の子の気持ちがわかっていないもの。それゆえに、男性が女の子の言いそうなことを想像して書くのは難しいことなの」


——なるほど。


ヘイリー「この脚本を読んだときは、すごくリアルだと感じたわ。女の子の登場人物にずれを感じるときって、原因の多くがせりふの中にあるの。なぜなら、ほとんどの場合は脚本家が思う”18歳の女の子が言いそうなこと”が書いてあって、それは実際に18歳の女の子が言うようなことではないから。クリスティーナもケリーもかつては10代の女の子だったわけで、だからこそ、チャーリーという人物をどうやったらリアルに描けるか明確に理解していたのよ」


——チャーリーに共感する部分はありますか?


ヘイリー「あなたが言ったように、チャーリーには超能力もなければスーパーヒーローでもないけれど、その資質を秘めているというところが大好きなの。超能力がないからといって、世界を相手にできないわけではないわ。最初はそのことに気づいていないんだけどね。彼女は困惑していて、途方に暮れていて、落胆していて、自分は理解されていないように感じている。でも、直面したすべての障害を乗り越えて、映画が終わるまでにはまったく違う人になるの。自分自身の中に、強さや自信や穏やかな心があることに気づくのよ。最終的には本来の姿である、強くて勇敢な女の子に戻るの」


——このような大規模なシリーズだからこそ、若い女性の物語を伝えようという作り手の決断はうれしいサプライズでした。役を選ぶ上で、女性の描かれ方を意識していますか?


ヘイリー「もちろん! 女性が観て、誠実に描かれていると感じられるものであってほしいわ。劇中のチャーリーは18歳になったばかりで、私は今22歳なんだけど、この物語の彼女には今の私でも共感できるの。私が18歳だったのもそんなに昔の話ではないけれど、18歳から22歳って多くのことが変わる時期よね。『もう大人だし』みたいな(笑)。でも、このキャラクターに17歳とか16歳とか18歳の頃に出会えていたらよかったなと思うわ。だって若い女の子にとって、時には迷ったり、困惑したり、自分を見失ったり、得意なことがわからなかったりしても大丈夫なんだと知るのは大切なことだから。劇中のチャーリーのように、自分の個性を見つけるまでの道のりを経験することもね。だからこそ、新たなオーディエンスや若い女性たちのために、この映画がたくさんの扉を開くことを願っているわ」


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——本作では主演を務めただけでなく、エンディングテーマの「Back To Life」も提供されています。あの曲はチャーリーとバンブルビーの関係と完璧に共鳴していて感動しました。劇中にはたくさんの80年代の楽曲が登場しますが、「Back To Life」は新曲なのに、『バンブルビー』の世界観に見事にマッチしていますね。


ヘイリー「必ず映画の世界観にマッチするような楽曲にしたかったの。でもそれと同時に、あまりに80年代っぽくて私の音楽のファンがしらけてしまわないよう、十分に今っぽく感じられることも大切だった。撮影中は80年代の音楽を深掘りできて楽しかったわ。でも曲作りの段階では、80年代っぽさと今っぽさのちょうど良いバランスを探ったの。自分が出演している映画の曲を書くのは、とても特別なことよ。初めての経験だったのだけど、すごくうれしかった」


——初めてエンドロールでご自身の曲が流れるのを聴いたときは、どう思いましたか?


ヘイリー「うれし泣きしたわ。すごく非現実的だった。初めて出演した映画は『トゥルー・グリット』だったんだけど、あの作品を観たときのことは絶対に忘れられないの。家族と一緒に小さな劇場で観たのよ。LAのパラマウントの試写室でね。映画が終わって、みんなが帰る準備をする中で、私は座ったまま最後までエンドロールを観ていた。(エンドロールに名を連ねた)全員のことを知っていたから、私にとってはとてもエキサイティングだったの!みんなと友だちになったからね。その瞬間まで、一本の映画を作るために、どれだけ多くの人が関わっているか気づかなかった。特別なものを作るためには、たくさんの人が必要だということをね。だから、私はいつもエンドロールが終わるまで待つようにしているわ。参加した誰もが拍手喝采に値すると思うから。みんなが2時間を費やして観終わった作品のために、名を連ねた全員が尽力したのよ」


——『バンブルビー』の完成版を最初に観たのはいつですか?


ヘイリー「『バンブルビー』はLAで行われたプレミアで初めて観たの。自分の作品に関しては、1回目は一人で観て、それからみんなと一緒に観たいものなんだけど、今回は最初からみんなと一緒だったから圧倒されちゃった。でもエンドロールが始まったら、それだけでも私にとっては特別なことなのに、さらにあの曲が流れてきたから、“ワォ、最高!”って感じだったわ」


——ジャパンプレミアや到着時の空港でも感じられたと思いますが、あなたはすでに多くの日本の女の子たちに大きなインスピレーションを与えています。この映画を観て、日本のファンにはどのようなことを感じ取ってほしいですか?


ヘイリー「良い気分になってほしいわ。この映画を観て、笑って、楽しんで、アクションや美しい視覚効果に夢中になってほしい。それと同時に、常に大丈夫ではなくてもいいんだと感じてほしいの。見失ったり、混乱したり、いら立ったりしてもいいのよ。劇中のチャーリーだって、自分が好きではないと言っているわ。大切な人を失ったことによる負のエネルギーのせいで、彼女は自分が周りのみんなの重荷になっているように感じているの。この映画を観て、それは普通のことで、問題はないし、恥じるべきことではないんだと感じてほしい。そして何よりも、良い気分で映画を楽しんで、まるでアトラクションのような体験に没頭してほしいわ」


——今後の活躍を楽しみにしています。女優として、アーティストとして、そして一人の女性として、どのように成長していきたいですか?


ヘイリー「ありがとう。今は新しい音楽作品を制作しているところ。今後も映画と音楽を通じて、できるだけ素直に自分の経験を記録していきたいわ。世界中の若い女性や皆さんと自分の経験を共有したいと思う。これまでの活動を通して何度も来日することができて、私はすごくラッキーだと思っているの。これからも新しい作品とともに、また何度も戻ってこられたらいいな」

photography Shuya Nakano(TRON)
text Nao Machida
edit Ryoko Kuwahara





『バンブルビー』
2019年3月21日(木・祝)先行上映緊急決定/3月22日(金)全国ロードショー
http://bumblebeemovie.jp/



過去5作の全世界での累計興行収入が43億7700万ドル(約5000億円)を突破し、夏には日本でも最新作『トランスフォーマー/最後の騎士王』が公開され大ヒットしたことが記憶に新しい、世界的大ヒットシリーズ『トランスフォーマー』。そのシリーズ初のスピンオフ作品として、2018年12月に全米公開を予定している『バンブルビー』の日本公開が、2019年2019年3月22日(金)に決定。
記念すべきシリーズ初のスピンオフ作品は、シリーズきっての人気キャラクターのバンブルビーが主人公。作品の舞台は、シリーズ一作目となる『トランスフォーマー』(‘07)でバンブルビーがサムと出会う以前の1980年代にさかのぼり、これまで語られることの無かったエピソードが初めて明かされる。
傷ついたバンブルビーと、自分の居場所を見つけられない少女チャーリーとの、二人の心の交流を描くと噂されている本作で、チャーリーを演じるのは、映画デビュー作『トゥルー・グリット』(‘11)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、最近では『ピッチ・パーフェクト2』(‘15)や、『スウィート17モンスター』(‘16)など、等身大のティーンを演じ、同世代の観客の熱烈な支持を集めるヘイリー・スタインフェルド。監督は、昨年の第89回アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(‘16)で知られるトラヴィス・ナイトが初の実写映画監督デビューを果たすことでも話題を集めている。
今作では初めて、過去5作全ての監督を務めたハリウッドの大ヒットフィルムメイカー マイケル・ベイ以外の監督がメガホンを取ることも注目を集めており、これまでのシリーズとは異なった、新しいイメージの作品になることが間違いなし!


<ストーリー>
自分の居場所を見つけられない思春期の少女チャーリーは、海沿いの小さな廃品置き場で、ボロボロの黄色い車を見つける。「バンブルビー」と名付け、修理したこの車が、やがて普通の車ではないと気づくのに、時間はかからなかったー。1987年、まだ地球は平和な生活を送っていた。その時までは。


<出演>
ヘイリー・スタインフェルド
『トゥルー・グリット』
『スウィート17モンスター』


<監督>
トラヴィス・ナイト
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』


<脚本>
ジョン・クラシンスキー
ブライアン・ウッズ
スコット・ベック


<製作>
スティーヴン・スピルバーグ
マイケル・ベイ



© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. © 2018 Hasbro. All Rights Reserved.

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