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text by Ryoko Kuwahara

Interview with Tomo Jidai and SARAI MARI

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hair : Tomo Jidai


Peach Bum
photography : SARAI MARI



22歳で渡英し、「i-D」「Dazed & Confused」などロンドンを代表するファッションマガジンを総ざらい、現在はNYに拠点を移し「Interview Magazine」や「Vogue」で活躍し、そこで繋がったFabien Baron、Karl Templerなどの超一流のトップクリエイターたちとValentino、Tommy Hilfiger、Sacaiなどのハイブランドの広告を数多く手がけるヘアスタイリストTomo Jidai。NYでの2年のフォトジャーナリスト経験を経て帰国後、東京で引っ張りだこのフォトグラファーとなるもロンドン、そしてNYへ移り住み、「Interview Magazine」でレギュラーメンバーに入り、『Speak Easy』などの作品集をイタリアの老舗出版社DAMIANIから出版し、三冊目の写真集はFabien Baron自らがアートディレクターとしてコラボレーションするなど確実にキャリアを築いているSARAI MARI。世界中のクリエイターが集結するNYでもトップクラスの活躍で知られる二人に、仕事への向き合い方を聞いた。

——Tomoさんは早くから海外でヘアスタイリストとして成功されているイメージですが、何歳ごろからロンドンでお仕事をされていたんでしょうか。


Tomo「22歳からですね。当時Vidal Sassoonを卒業してソーホーのサロンで働いていて、たまたまNicola Formichettiの働いていた店の近くで、共通の友人を介して知り合ったんです。彼が『Dazed & Confused』で撮影するときに声をかけてくれてくれたのが全ての始まり。彼のクリエイションに関する無茶振りに応え続けてきたのが功を奏していまに至るという感じです。ロンドンに住んで10年以上くらい経った時に、MARIちゃんと出会って恋に落ちて」


MARI「(笑)。私は20歳の時からカリフォルニア州のサンタモニカ・カレッジで3年写真の勉強をして、そのあとNYで2年フォトジャーナリズムを経験して、日本に帰り、ファッション・フォトグラファーとして活躍している時に一時帰国中のTomoくんと仕事で会って、2005年にロンドンに行きました。日本では初めの2〜3年は全然仕事が増えなくて、奈良の父に『帰りたい』と泣き言を言ってたくらいで。でも帰ってきちゃ駄目と言われて、もうやるしかないと思い、周りのクリエイターの友達にエージェントを探しなよと助言され、angle(http://www.angle-management.com)に所属しました。素晴らしい仕事仲間に会えて、そこから忙しくなりました」

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hair : Tomo Jidai


——ロンドンからNYに拠点を変えたのは、アメリカのお仕事が増えたから?

Tomo「そもそもは2011年にCALVIN KLEINのアンダーウェアのワールドキャンペーンにSteven Kleinが僕を押してくれたのがことの始まりで、その時のクリエイティヴ・ディレクターがFabien Baronで、スタイリストがKarl Templer!! もう僕のヒーローたちですよ。その時やったヘアを気に入ってくれて、そこから少しずつNYに呼んでくれるようになり、2013年からは毎月3回は行くようになり、完全に移住しないと精神的にも体力的にも限界に来ていて、MARIちゃんと相談して決めました。海外で22年間やっていますが、ロンドン期とNY期とはやっぱり違いますね。NYでやるようになって5、6年で、それくらいから仕事に対するアプローチが変わってきました。超一流の大御所の方達と仕事をして、物事の突き詰め方が全く違うことがわかったんです。俺は今まで何やってたんだ、というくらいの違いを見せつけられました。
先ほども話した2011年にCALVIN KLEINのヘアスタイリングをやらせていただいたとき。その時期は、ロンドンでも若手がたくさん出てきて、自分も中堅になって少し立ち位置を見失いそうになっていたんです。いつもチームを組んでいたNicolaもロンドンからNYに移ってしまったし。そんなとき、Steven KleinがCALVIN KLEINに僕を推してくれたんですが、Fabienとクライアントが僕のポートフォリオを見て即決してくれたらしいです。もう人生最大の緊張感、そして僕のことなんて誰も知らないというアウェー感、俺の味方はStevenしかいない現場で、彼が現場に来ていない。さらにブランドからはヘアに関して何のリファレンスもない。とりあえず軽くブリーフィングがあり、その後即自分の意見を聞かせろとくるわけです。FabienとKarlに挟まれながら、0.5秒で頭をフル回転させて、50年代のオリンピックのクラシカルなアスリートの感じはどうですかと言ったら、見せてみろ、そして30分で作れと言われて。僕のことは全く知らないけれど、彼らのアイデアをただやらされる技術者ではなく『ヘアの責任者』として意見を聞き、それを実現する機会を与えてくれたわけです。お互いがプロとして仕事をしている現場であれば、言ったことは完璧にやらなきゃいけない。例え5分でも遅れたらとんでもない目にあうけれど、本当に良いものは良いと言う、そういう環境で仕事をすることで気づくことや自覚することがとてもたくさんありました。厳しいけれど実力を発揮できれば評価される、そういう世界に身を置かせてもらっているのは本当にありがたいですね」


MARI「海外では率直に言ってくれるし、意見の交換がスマートで的確。曖昧に仕事を終わらせる感じはまずない。自分の言葉に自信があり、妥協を一切許さない姿勢には、私も随分と鍛えられました」

Tomo「常に真剣勝負なんですよ。そうやって現場で揉まれていたら、怖いと言われるクライアントにも動じなくなる」


MARI「どこに行っても動じなくなりますよね。学校みたいなもので、そういうことを教えてくれたんじゃないかな」


Pineapple
photography : SARAI MARI


Tomo「日本に帰るとよく大きいメゾンの仕事や大御所との仕事についてどうなのかと聞かれるんですけど、いくら説明してもあの緊張感は実際に体験してみないとわからないと思うんです。僕のアシスタントも僕の代理でKarl Templerと仕事をした時、Karlはヘアについてもヘアスタイリスト並みに知識があるので、その緊張感と早すぎる展開のあまり普段できることができなくなり、『Tomoさんはあんな状況でやってたんですね』ってわかったようで。それから彼も撮影に関して色々リサーチしてきたり、意識改革があったんでしょうね。そこからもっといいチームになった。俺はMARIちゃんを13年間知ってるけど、緊張して追い込まれているところを『Interview Magazine』の撮影の時に初めて見たんじゃないかな。直接Karlと仕事をはしていないけど、撮った写真をメールで送って色々言われるその内容が的確すぎて。でもKarlがMARIちゃんの写真を見て僕に『I like your wife’s picture』と言ったのは本当に嬉しかったですね。有名な写真家のことでもいいと思わないと評価しない、厳しくて率直な人だから」


MARI「人間は緊張した時の方がもっと頑張らなきゃと力が湧いて、自分の能力を超えられる域に到達できる気がします。だから私は緊張するのが好きなんですよね。そんな私でもきついくらいのプレッシャーなんです(笑)。『頑張れ』とかじゃなく『頑張らないと次は無い』くらい有無を言わさない。もはや脅されてる感じ。でもそこで決めないと家に帰れないし、自分が納得しないのに帰りたくないからみんな頑張るんです。あそこで諦めてたら二度とお呼びはない」


Tomo「基本的に僕らが思っている以上に、僕らのポテンシャルを信じていてくれるから要求が高いというのもあるんです」


MARI「そうだね。やっている時に愛が1ミリも無いくらいひどいこと言われるけど(笑)」


Tomo「トップの人たちは本当の責任というものをすごく分かっているんですよ。普通のレベルでは人任せの場合がわりとあって、誰かが意見を言った後に合わせるようなことを言ったりしますよね。それだと『本当にそう思っているの?』となってしまう。よくないと思ったら、誰かが『これでいい』と言ってもノーと言わなきゃ。数をこなすことに意義を感じて次の現場に行かなきゃと中途半端になったり、そういうことはこちらでは絶対ないかな」


MARI「私たちはアーティストで、クリエイターなんで、現場に呼ばれていって仕事をする、ただの技術者では無い。クライアントが欲しいもの、求めているものをいち早く察知し、形にして行く。もちろん現場だけがフォトグラファーの仕事ではない。撮影前の絵作りと段取りが一番の鍵です。あと、ヨーロッパやアメリカは小学校の時から『リーダーになるためには』と考えて行動させられているんですよ。日本は逆で、思っていても言ってはいけなくて、思いやりを見せるというカルチャー。上司がいるところで前に出ると打たれるんです。日本のカルチャーとして『まだ思うものが撮れてないから撮ろう』なんて誰も言わないけど、誰かが言えばやると思うし、それが日本のカルチャー。そういう文化の違いが仕事のやり方にも影響しているんだと思います」


Tomo「日本と海外では、やり方が違うと言ったらそれで片付いてしまうけど、自分が見せたいものがあるなら責任は持つべき。自分の作品に責任があるから、完成度を上げるために意見を言う。意図を分かってくれる人とやったほうがいいし、そこを分からずにおざなりにやられても困る。徹底して良いものを作るには、ちゃんと意見を言い合える集団を少しでも作っていったほうが良いと思いますね。
これは本当に難しい問題で。大御所と言われる人たちだって、俺だって、MARIちゃんだって、最初は育てられてきたわけで。そういう育てたり、育てられたりという環境は海外の方があると思う。『いいね』と褒められる環境だけが全てじゃない。厳しいけど的確な意見をもらえることは大切なんです。そういう環境じゃないとプロフェッショナルは育たないと思います」


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hair : Tomo Jidai


——おっしゃるように教育の違いもあってディスカッションに慣れていないので、自分の意見が言える人は少ないかもしれないですね。


Tomo「むしろ若い子たちの方が意見は言ってくれますよね。いらない意見かもしれなくても、そうやって真剣に考えているほうがいいと思う。関わった仕事に対して責任を持つことは大事だし、ベストを尽くすというのが基本にないと」


MARI「NYにも日本にもクリエイターはごまんといるけど、生き残るのは数人。その人たちの中には意見を言えない人もいると思うんです。でも少なくとも自分の意志を持って、自分がやってることを信じているはず」


——日本では没個性が著しく、言われたことを完璧に出来る。が、言われなければ自分では動けない人が多い。自分から発信したいと切に願う人が少ない気がします。


Tomo「言われたこともプロなら当然できなくてはいけない。予習復習するのは当たり前だし、無茶だったり曖昧な注文にも手探りででも応じられるようにしておかなくてはいけないですよね。
クライアントとクリエイターサイドの意見が違う場合もあるけど、クライアントを説き伏せるのはクリエイティヴ・ディレクターなんですよね。ブランド以上にブランドを理解しなくてはいけない。大きい組織なので、いろんな人が関わってくる中で、その色々の意見を掌握する力がすごいんです。1言ったら1000返ってくる感じです。そういう力を見ると、作品に対してこちらもシャンとした姿勢で臨めます。いろんな立場の一流を見たけれど、共通しているところはやはり詰め方と情熱ですね。好きだという情熱と、それを諦めずにかつ他にない高いクオリティでやり遂げる力が必要」


MARI「作り手に全ての知識が入っていて驚きますよね。計算とリサーチをして、次に何が流行るかを組み立て、どうやってイメージを売るかまで把握している」


Tomo「そこがスタートの時点で撮影の時も超一流たちは完成度が高い。さらに計算して決めていても、現場で変える力もあるんですよ。そういうところは本当にすごくて、ライティングも一気に変えてヘアも変わるのだけど、追って行くだけで必死。でもいいヘアをすると大絶賛してくれるわけですよ」


——クリエイターが全ての知識を持っているというのは驚きました。私は海外で成功するにはヘアメイクよりもフォトグラファーの方が難しいイメージがあるんですね。その違いはどう考えていますか?


MARI「フォトグラファーはディレクターの役割もあるからだと思います。ただ撮っているだけじゃなく、仕事をくれた方たちとコミュニケーションをとって、いいものを作って商品を売っていかないといけない立場。そこのコミュニケーション能力も問われてくるから、ヘアメイクとアプローチが違う部分はあります。言葉の壁がとても大きいんだと思う。言葉はとても重要で、チームの良き長にならないといけないし、そのうえ、自分のスタイルを残し、さらにクライアントが望むヴィジュアルを作らないといけない。ちょっとしたカリスマ性はマストです。総合能力を問われる」

Tomo「そうですね。でも逆に、全くコミュニケーションをしないけど凄い人もいるんですよね。作家性があるというか」


MARI「それは作家なんですよ。作家に対しては、そのスタイルに対してクライアントが支払いをするわけで、コマーシャル・フォトグラファーとは違う。コマーシャルな立場なのに作家性で行こうと勘違いするのは間違いだから、そういうカテゴリー分けはするべきだと思います。作家は作家で、納得させられるだけのものをずっと撮り続けないといけない苦しみはありますよね。私はコマーシャル・フォトグラファーの中でも、恵まれて今のところ2冊の写真集を出すことができました。おかげで私の作家的なイメージも定着しつつあります。それを知っているからこそ、なんとかオリジナルの良い作品を作らないと、と思う」


Tomo「そうだね。俺もそれは思ってる。MARIちゃんに良く言われるのが『すごくぼろぼろになってるけど良い顔して帰ってきてる』ってことで」


MARI「すごく疲れても良い顔をして帰れる日が嬉しいという中毒症状みたいなものなに二人ともかかっていて。いい加減な仕事をして帰るなんてしたくない。私はこんなんでいいのかなと思いながら帰ったのはここ最近一回も無いんです。難しい撮影で、もっと強い人がいて、その意見でがんじがらめにされて、ちょっと妥協して帰ったなんてことになったら死んだ方がマシってくらい悔しい。完全にやり遂げたという気持ちじゃないと帰っちゃ駄目だと思っています。好きな仕事をやって、毎日全力で、毎日進化して。それってすごく幸せなことですよね」


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SPEAK EASY - SARAI MARI


SARAI MARI
http://www.saraimari.com
http://slits.jp/


Tomo Jidai
http://www.streeters.com/artists/hair-stylists/tomo-jidai

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