NeoL

開く
text by Ryoko Kuwahara
photo by Kotetsu Nakazato

Craft Curiosity Issue :クレイアートで推し活。RISAKO HISAMATSU&中里虎鉄&野村由芽&haru.&宮 有里奈&綿貫大介




フィジカルな距離を求められる今、オンラインに没入する時間が増加傾向にある。情報収集や人との繋がりはもちろん大切だが、同時に自身を落ち着いたオフラインの環境に置くこともまた重要だ。自分が求めるものや喜びを感じるものを、己の手を動かして創り上げる時間は、ストレスフルな時代を生き抜くための術でもある。NeoLではハンドメイドのアートで人々を魅了する作家の作品を紹介するとともに、ものづくりの時間へ誘う。
第1弾はクレイアートやイラストを手がけるRISAKO HISAMATSUを講師に迎え、推しを持つエディターたちが集まり、それぞれに推しにまつわる作品を制作。アートセラピーにも用いられる粘土での制作を行いながら、各自の活動やメディア、社会への考察などを語らいあった。



参加者
講師:RISAKO HISAMATSU(粘土作家/イラストレーター ) 推し:TWICE チェヨン
https://www.instagram.com/risakohisamatsu/


中里虎鉄(『IWAKAN』エディター /フォトグラファー) 推し:ENHYPHEN / Seventeen / Hu Yetao
https://www.instagram.com/kotetsunakazato/
https://www.instagram.com/iwakanmagazine/


野村由芽(me and you エディター) 推し:ソン・ドンピョ(MIRAE / 未来少年)
https://www.instagram.com/ymue/
https://meandyou.co.jp


haru.(HUG Inc. エディター/プロデューサー) 推し:テヨン&テン(NCT)
https://www.instagram.com/hahaharu777/
https://h-u-g.co.jp


宮 有里奈(HUG Inc. エディター/フォトグラファー) 推し:ファンダム / シズニ / マイリー・サイラス
https://www.instagram.com/38uia/


綿貫大介(編集者/ライター) 推し:自分 / キムタク(木村拓哉)
https://www.instagram.com/watanukinow/


NeoL編集部 推し:BTS
https://www.instagram.com/neol_magazine/
https://www.neol.jp

*五十音順



準備したもの
● 粘土(PADICO Hearty Soft ホワイト標準)200G1個
アクリルガッシュ
COBALT BLUE/LAMP BLACK/CRIMSON/PERM YELLOW/LILAC/DEEP PURPLE/VERMILION/POPPY RED/SPRING GREEN/JAUNE BRILLANT
*上記はRISAKO HISAMATSUさんがよく使用するカラー。任意のカラーで制作OK
● ラップ(紙粘土は乾きが早いため、ラップを巻いておかないと固まって使えなくなる)
● 粘土板 or カッター板(制作物が小さい場合15×20 くらいあれば十分)
● 木工用ボンド(ベースとパーツの繋ぎを強固にしたい時に使用)
● ピンセット(細かい作業やパーツを扱う時に使用)
● ビニール手袋(色を入れる段階で絵具が手につかないよう使用。医療用ではなく、調理加工用の手袋の方が作業しやすい)
● ボックス(出来上がりを保存する)



作業行程
1ベースを作る
・粘土に色を入れる
・原色を主として鮮やかなイメージが作れるような色選び
2パーツ
・大体一つひとつのパーツは1円玉サイズ
*パーツで分けずに一つのまとまりとして作る場合 サイズは大体縦横それぞれ約4cm(作るものの大きさによって随時変更)


制作時間目安
粘土を分けて色を作る行程 10色で約30分
人物を作る場合、1人を制作するのに約30分(取材時は作業時間の合計約4時間)


ご挨拶



RISAKO「HISAMATSU RISAKOです。粘土制作をしています。大学4年生、21歳です。大学でメンタルヘルスの研究をしていて、『Neut Magazine』で仕事をさせていただいて以降は本格的に粘土をやっています。TWICEのチェヨンちゃんを推してます」



虎鉄「虎鉄です。普段はフォトグラファーをやっていて、『IWAKAN』という雑誌も作っています。『IWAKAN』は主にジェンダーやセクシャリティを軸にいろんなテーマを組み合わせながら作っている雑誌です。ジェンダーに関する自分の考えやストーリーも日々発信しています。虎鉄は推しを分散させていて、グループだとENHYPHENが大好きだし、Seventeenも好きで、個人だと中国のINTO1というグループに入れなかったHu Yetaoという子が大好きです」



宮「宮です。haru.と一緒にHUG inc.という会社で働いています。写真も撮れと言われたら撮るし、やれと言われたらやってみようという感じです(笑)。私は推しはいないかもしれなくて、推しを推してるこの集団を推してるということに最近とても自覚的になりました。虎鉄とマイリー・サイラスのファン仲間で、冷めたりもしながらもマイリーは一生の推しだなというのはありつつ、最近はK-POPを追いかけてます。NCTを好きな子が周りに多いのでNCTを見てるんですけど、それはNCTを好きなシズニたちがいるから情報を追いかけてるんだと実感してます。だから推しはシズニです」



野村「野村由芽です。元々は『She is』というメディアを竹中万季ちゃんと一緒にCINRA, Inc.という会社で立ち上げて、自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティを作っていたんですが、運営会社の都合で停止することになって。そのあと万季ちゃんと一緒に独立して今年『me and you』という会社を作りました。『She is』の時は女性の生き方について考えることを軸にしていたのですが、そこで出会ったことや学んだことを引き続き大事にしながら、より個人と個人の小さな主語での対話を大切にした場所を作っていきたいと考えていて、今メディア・コミュニティを作る準備をしています。今日作ろうとしているのは、『PRODUCE X 101』というオーディション番組からX1というグループがデビューしたんですけど、そのメンバーとして活動した後、2021年からMIRAE(未来少年)で活動中のソン・ドンピョくんという子です。今日写真集も持ってきたんですけど、可愛いんですよ(写真集を披露)」


一同「素晴らしい!」


haru.「なんかおっとり感が由芽さんに似てる。唇の感じとか」


野村「本当……! いちごのマカロンが好きだったり、ロールモデルとしてIUを挙げていたり、固定観念にとらわれないジェンダー観にも影響を受けています。MIRAEは8月にセカンド・ミニアルバムが出てカムバするので、応援したいなと思っています」



綿貫「綿貫です。今は編集者兼ライターの仕事をしています。もともと出版社でも働いていたんですけど、出版の未来なども考えて自分で好きなことをやりたいなと今はフリーでその仕事をしています。それとは別に、個人的な活動としてzineや雑誌を作ったりしていて、個人でも発信ツールとしてそうしたものを持ちながら、好きなことをやっています。今推しの話がK-POPの流れできてるんですけど、そっちにあまりがっつり行ってなくて。去年おハル.にWayVを教えてもらって、そこから徐々にNCTとか色々聴くようにはなってるんですが、基本的にはみんなのように推しは持ってなくて。なんでだろうとよく考えたところ、結局自分のことを一番推してるんです」


一同「最高!」


綿貫「ただ精神衛生上いろんなことを好きでいることはめちゃめちゃいいなと思っていて、それでいうと自分はキムタクのことを一番推してるというのは気づきとしてありました。すごいテレビっ子なんですけど、テレビの象徴としてキムタクをめちゃくちゃ崇めてるんですよ。その好きな気持ちを今日は形にしたいと思います」



haru.「haru.です。今はHUG inc.という会社でプロデュースだったり、冊子の制作のお仕事などをやっています。今の活動のもとになっているのが大学時代に始めた『HIGH(er) magazine』というインディペンデントマガジンなんですが、こうやって今日たくさん編集者の方と集まって粘土を作るという素晴らしい会に参加できて嬉しいです。K-POPは中学校くらいから好きでもともとは2AMという、2PMの兄弟グループでバラードしか歌わないグループにすごくハマって、そこからIUとかが出てきて、高校時代とかはそこに救われてきたんですけど、そこからちょっとK-POPを離れてました。それがコロナ禍にNCTに出会い、そのままズブズブと23人なんて覚えれらないなんて言ってたのに、いつのまにか23人全員の声を聞きわけるようになってしまって。今日もNCTのジャニーのデザインしたTシャツを着てます。後ろに彼の描いた絵が入ってます。推しはNCTのテヨンとテンで今日はその二人を作ります」


RISAKO「私、高校生の時にharu.さんの『HIGH(er) magazine』のイベント行きました」


haru.「ええっ、本当に!? 実はもう出会ってたとは」

制作開始





1.粘土にアクリルガナッシュを混ぜてベースを作っていく


綿貫「紙粘土、軽い! こんなに軽いんだ。想像の半分の軽さ。小学生の時にやってた粘土と違う」


haru.「あれは油粘土かも。紙粘土はすぐ乾く」


綿貫「じゃあこれまで紙粘土に出会ってなかったんだ。軽さに感動した」


haru.「高校時代めっちゃ粘土作ってた」


NeoL「作業中の音楽、リクエストを受け付けてます」





haru.「最近STAYCが好きです」


NeoL「私も好き。『LOUD』(オーディション番組)観てる人いますか? 楽曲制作のスキルが高い人がたくさん出ててすごく面白いんですが、YouTubeで3話まで観れるからよかったら」


虎鉄「I-LAND観てました? その時はソヌが好きだったけど、ENHYPENでデビューしてからはジェイク推しになった」


NeoL「ソヌ、かわいいよね。ジョンウォンも好きだし、正統派のソンフンも良いです」


虎鉄「もともとアイススケートの選手でそこからアイドルになったんだよね」


宮「フィギュアの世界はヤバい」





RISAKO「では粘土に色をつけていきましょう。人数が多いので、みんなが同じ色を作るんじゃなく、手分けして違う色を練り込んでいくのがいいと思います。その後に色のついた粘土を分け合って作ればいいので」


綿貫「それぞれ1色ずつ作るんですね。分担しましょう。何色作っていきます?」


虎鉄「紫にしようかな」


RISAKO「紫、2色ありますよ」


NeoL「じゃあ、私もARMYとして紫がんばります」


haru.「私は緑」


宮「オレンジ混ぜまーす! これ、歯医者さんの気分になる(笑)」


haru.「歯医者さんの匂いがする(笑)」


綿貫「赤やります!」


野村「黄色を作ってみようかな。混ぜる比率は?」




RISAKO「粘土を1/4袋ほど出して、粘土にそのままアクリルガナッシュを練り込んでいってください。どういう色を欲しいかによると思いますが、混ぜる量が多いと濃くなり、少ないと薄くなるので、自分が欲しい色を加減を見ながら作っていってください」


虎鉄「それはベージュですか?」


RISAKO「はい。ベージュはよくベースに使われるのでたくさんあるといいかもしれません。色が全体的に馴染むように混ぜていってください」


綿貫「(混ぜながら)なんか色がマダラになる。線ができてしまう」


RISAKO「中に中に入れていく感じで混ぜていくと均一になりやすいです。全体に均等に混ざったらサランラップで包んでおきましょう」


野村「乾いたらくっつかなくなりますもんね」


haru.「由芽さんの服かわいい」


野村「ありがとう。作ったんです」


綿貫「作ったんですか!? ヤバい」


(ひたすら粘土に色を混ぜていく)





haru「宮」


宮「はい」


haru「おにぎり(テヨンのキャラクター/주먹밥쿵야 )作りたい」


宮「作りな」


haru.「人間にも挑戦したいけど、最初はおにぎりを作る」


野村「おにぎりっていうのは何かのあだ名じゃなくて、本当におにぎりなの?」


haru.「おにぎりのキャラクターがいて、それが推しに似てて(見せる)」


野村「かわいい。韓国のキャラクター?」


haru.「これはテヨン本人が描いたやつ」


野村「あ、じゃあ本人も知ってるんだね」


haru.「本人も似てるってわかってる」


野村「テヨンって日本だとテヨヨって言うの?」


haru.「そう。宮がテヨンのインスタライヴ中に『テヨヨ』ってコメントしたらそれを読んでくれたの」


宮「『みなさん、テヨヨです』って。おハルが見たら喜ぶかなって思って『テヨヨ〜』ってコメントしたら『テヨン、テヨヨ〜はいみなさん〜』って言ってくれた」


虎鉄「虎鉄の推しに宮がそれをやったら嫉妬しちゃう。『なんで読まれてるの!?』って。私の方が好きだから!って」


宮「怖い(笑)。でも『そうだよ、虎鉄の方が好きだよ』って言える」





虎鉄「(笑)。青ほしい」


野村「確かに。青ないね」


虎鉄「やりまーす」


宮「作るもの決めた!」


haru.「何?」


宮「“Low Low”(テン&ヤンヤンによるシングル)のロゴ作る。カムバだから」


haru.「あー」





綿貫「これはもっと発色良くなりますか?」


RISAKO「いや、それで限界だと思います」


綿貫「じゃあ混ぜるのは終わりで、これを分けていきますね」


虎鉄「水色ほしい」





宮「青の強弱を作ろうか」


haru.「白はどうしたらいいですか?」


RISAKO「粘土そのままで大丈夫です」


野村「ピンクを作りたい」


綿貫「ピンクやってます。いい感じかも。かわいくなりそう」


野村「この黒はもっと濃くしたほうがいいですか?」


RISAKO「そうですね。これくらいにしてください。でもならなかったら大丈夫です」


野村「結構濃くするんですね! わかりました」





綿貫「茶色がほしいです」


RISAKO「赤と黒とかを混ぜて作ってみます」


野村「オレンジも混ぜるといいかも」


RISAKO「赤と緑で茶色になるかな」


綿貫「めっちゃ化学的。やってみよう」


野村「すごい、茶色になりそう!」





NeoL「由芽さんの推しは元X1なんですよね?」


野村「はい。活動期間は本当に一瞬で、すぐ解散になってしまったんです。あのグループが存在した事実を知ってもらえるのが嬉しいので、こうして曲をかけてくれてありがとう……」


NeoL「着々とできてますね」


野村「バリエーションを出すために、色の組み合わせ方を調べてから絵の具を混ぜることもあるんですか?」


RISAKO「そうですね。ほしい色がない時はそうしてます」


野村「すごい」


綿貫「想像してたクオリティと違ってちゃんとしてた。『クレヨンしんちゃん』の映画のオープニングみたいなのを想像してた(笑)」


虎鉄「はいはいはい。懐かしい(笑)」





2.パーツを作る


haru.「虎鉄は人を作る?」


虎鉄「作る」


綿貫「これ(RISAKOのお手本)を見てると人作りたくなる」


野村「なるね」


虎鉄「ENHYPEN聴きたい」


NeoL「流します」





宮「K-POPでラップが発生するとそのラップが言えるようになりたい問題出てくる。K-POPだけじゃないけど言えそうなやつとか。SPICE GIRLSとか頑張っちゃうもん」


虎鉄「なるよね(笑)」


宮「K-POPは受験勉強みたいなところある。予習復習みたいな」


虎鉄「わかる」





綿貫「『BISTRO SMAP』にしようかな」


haru.「キムタクのボブは作りやすそう」


綿貫「でもロン毛がいいんだよね」


haru.「真ん中わけのロン毛みたいなやつは?」


綿貫「あ、そうだね。ちょうど尾道の古本屋でキムタクの写真集を見つけて買っちゃったんだよ。『MEN’S NON-NO』の20年分くらいのカバーと中ページを集めたやつで、今日持って来ればよかった!」


宮「最近Koki.ちゃんがCOACHのヴィジュアルに出たじゃないですか。犬の出演料がめっちゃ気になってる(笑)」


綿貫「木村家の犬かわいいよね。犬も作ろうかな」


haru.「そういう推しにまつわるものもいいよね」


綿貫「サブも愛せるもんね」


haru.「推しが飼ってる犬と猫を作ろうかな」


宮「あれ、由芽さん何作ってる?」


野村「猫。自分が飼ってる猫(笑)」


haru.「それも推し(笑)」





RISAKO「では、ここからパーツを作っていきます。みなさんで一度顔の部分だけ作ってみましょうか。きれいな丸にするには、一度適当な丸を作って左手の親指と人差し指で持って、右手を回転させるといいです。上下と側面がきれいになるのであとは上下に力を入れて潰していきながら輪郭を作っていってください」


綿貫「おおっ! チベットの回すと幸せになるやつみたい(マニ車)」


RISAKO「(笑)。あとはわからないことがあったら随時訊いてもらって、それぞれ好きに作ってみてください」





野村「(携帯画面と粘土を重ねながら)こうすれば輪郭が合うんじゃないかな。ズル感がすごいけど(笑)」


RISAKO「素晴らしいです。輪郭、大事ですから。あ、時間が経つと乾燥するので、全ての作業をなるべく早くやった方がいいです」


綿貫「髪の毛の前に、顔を作った方がいいですか?」


RISAKO「そうですね。鼻と目、口を作ってから髪の毛の方がいいです」


綿貫「ヤバい、唇をミスった」


haru.「めっちゃ細かいね。まだおにぎりの輪郭しかできてないよ(笑)」


綿貫「ちょっとスカした口になった。目が大きすぎるかな」


野村「目が難しい」


RISAKO「白目を大きく、黒目が小さい方がかわいく見えるかもしれません」


綿貫「そうなんだ」





野村「……推しに似てない」


一同「推しに似てない問題発生!」


野村「似せようとするのがおこがましいんですかね……。いつか似るのかな」


綿貫「本当に目がムズいなあ!」


野村「ムズいよう」


虎鉄「顔のパーツをつけるのにボンドは必要ですか?」


RISAKO「つけなくて大丈夫です。普段はボンドは使ってないんですけど、乾燥してたまに取れたりするので念のために。つけるとしたら首とか繋ぎの部分ですね」


綿貫「なるほど」


野村「髪の毛も難しい」


綿貫「髪の毛、細かく作った方がいいですか?」


RISAKO「そうですね。あと髪の毛は後ろ部分からつけていった方が自然に見えるかもしれないです。立体的に見せたい場合はその方が調整しやすいと思います」





NeoL「推しには似てないけど顔にはなりました」


haru.「粘土が推しに似てるって大分難しいですよね」


宮「似てたら仕事にした方がいい!」


haru.「フィギュアづくりの人みたいな。これ、アイシングクッキーみたい」


宮「それで思い出したけど、2月はNCTメンバーの誕生日が多くて、毎日おハルとケーキを食べてる感じだったんですよ。私は『推しのデリバリーサービス』という名前を虎鉄につけてもらって。3月くらいからみんなに推しを送るということをやってました」


NeoL「それはどういうサービス?」


宮「えばナナちゃん(NCTジェミン)のことを好きな人だとしたら、もう観てることは前提で良い動画を送るみたいな。それをやってたらインスタからK-POP大好きな人というターゲティングされてて、インスタがそれしか広告を出さなくなってきて。ファンが出してる広告とかもたくさんあるんだけど、Twitterを見てたら、『まだ社会人になってないK-POPのファンもいると思うんだけど、例え100円でも広告を打ったことがあったら、それは就活で言っていいんだよと伝えたい。広告を回すことって本当にないことだから、それを自分で写真を選んでデザインまで組んで、数字も見てということをやったことがあるならそれは素晴らしいこと。だから自信を持って、あなたがやってきたオタ活をしっかり役立ててください』って言ってる社会人オタクがいて。BTSもファンがしっかりしてるからあそこまで大きくなってるとはよく言われてることだけど、ファンが推しを支えるところから派生して社会を支えてるのはすごいことだと思いました」





NeoL「本当にそうですよね。どんな活動も必ず社会と関係している。私は特に推しがBTSで社会へのアクションも起こすからそこも含めて推せると思ってます。由芽さん、私も媒体で同じような体験をしたことがあるのでお話したいなあと思ってました」


野村「メディアを運営するうえで、関係者同士で意見にズレが生じる難しさはどうしてもありますよね。たとえばどれくらいのスピード感で、どんなサイズまで成長させるのか? といったことに関して、求めるものが異なってくるケースは少なくないように思います。特にわたし自身は、個人的なものや小さなものを大事にしていきたいという思いが強まっていることもあり、それらを大切にしながら文化をあたためていける規模感やスピード感で、場所をつくっていきたいなと思っているんです」


NeoL「そうですね。メディアも時代で変わってきていて、ビジネス目線で作られるものが多い。エディターとして今募集があるものはオウンドメディアのPRばかりで、雑誌やウェブマガジンのような自分たちで情報や文化を作って発信するような仕事はあまりないと聞きます」


野村「まだ価値の定まっていない新しい文化を生み出す人たちに寄り添い、その熱量を伝えていくようなメディアの場合、収益面で効率がいいとは言えないと思うんです。それでもやる意義がある。だから規模が大きくなくても、そこに関わる人たちに十分なお金が無理なく支払えるような仕組みをつくることが重要だし、そんなメディアが社会に必要なんじゃないかなと思います」


NeoL「本当に文化とお金を両立させるのは難しいですよね。いつもそこは悩みます」


haru.「うちもです! その仕事につきっきりになるし、難しいですよね」





NeoL「考える時間は換算されず、成果物だけお買い上げというのも辛いなあと思います」


野村「プロジェクトによってはリサーチに予算がついていることもあって、重要な視点だなと感じます」


haru.「そのプロセスが大事なところだとわかってくれるところとお仕事できたらいいけど」


NeoL「あまりないですよね。参加していただく方のフォロワー数ばかりが重視されるお仕事も、数字の偏重を感じてしまってしんどくなります」


野村「“本当はフォロワー数で判断すべきではないとわかっているけれど、〇〇な理由があって”と説明が添えられている場合もあれば、“数字が多ければいい”という場合もありますよね。担当の方だけの努力でどうこうなる話ではなく、数字を求めなければならない社会構造の問題だとも感じます」


NeoL「マーケティングには数字は不可欠だけど、文化を数字に換算するのは厳しいなあと」





綿貫「学校とかでも利益主義のところがほとんどだと思うんです。国からいかにお金をもらうかとか、文系は儲からないからと理系ばかりにするとかそういうところが増えてます」


haru.「芸術系のところだと教授が自分の作品制作や研究に学生を使うから、それもパワーバランスがおかしいなといつも思う。私もそれでバイトだということで行って、何も支払われなかったことがあって。先生の作品の一部になりたいわけじゃなかったけど、学生でバイト代が入ると思ってたからやったのになんだったんだろうって」


綿貫「ポスドク(博士研究員)とか大変だっていうよね」


野村「先生という立場には構造上、権力が発生してしまうので、差別やハラスメント、あるいは搾取などに気をつけないといけないですよね。生徒からすると、もし被害に遭ってしまったとしても“まさか先生が”という思いや、自分が不利な立場になってしまうのではないかといった不安から、被害に気づけなかったり、声があげられなかったりする場合もあると聞きます」


虎鉄「ジェンダーとかハラスメントの知識を持ってる人でも、自分の加害性に対して向き合っていない人って無意識に加害的な行為をしてしまうと思うし、知識を得て発信していても自分の加害性を感じる時もある。でもそこを無視したり、気づかないふりをしてやり過ごしてしまう人もいるだろうなって思う」


NeoL「すごくよくわかります。一方ではマイノリティでも違う側面では力を持ってる側になることもあるので気をつけないとなと常に思います。エディターは仕事を発注する立場でもあるので、そういう時にもそれは感じますね」


宮「自分はわかってます、理解がありますっていう人の方のハラスメントの方がダメージが大きい。なんであんたがそれをするのって。先生がというのもそうだし、いいお父さんって外では言われてる人が虐待したりというのは余計にきつい」





野村「知識は自分の方があるという前提で他者とコミュニケーションをとるケースなども問題ですよね」


綿貫「それって教える立場にいたいというマンスプレイニングと同じですよね」


NeoL「家庭内での所得での序列ができる話とかも聞きます。稼いでる方は家事やらないとか。そもそも結婚とは、とも思うけど」


野村「それはケア労働の問題にも通じますよね。セクハラの話だと、先日“わたしたちのスリープオーバー”というme and youのPodcast番組で、『これってセクハラなのか…? セクハラだったのか……?』といったテーマについて話したのですが、その際にセクハラの裁判では『違法性が認められるかどうか』が判決に影響するという話を聞いたんです。そして『違法性が認められるかどうか』は社会通念によって変わるそうです。つまり、時代によって変化する常識や見解が、判決に影響するのだと知って驚きました。だからこそ、一人ひとりの心がけが重要ですよね」


NeoL「そのムードを作る側のメディアですらハラスメントが多い」


haru.「わかる。ある。泣いちゃう」





野村「構図はすぐには変わらないかもしれないけれど、少しずつやっていくしかないですよね」


虎鉄「たくさん考えたいこととか一緒に声あげたいこととかあるけど、ありすぎてしんどくなった時に、黙々と推し活したりするけど、それすらも罪悪感になることがあって。実際に今すごいしんどい思いをして逃げてる人もいる中で、一緒に戦いたい気持ちもあるけど、しきれない自分だったり、逃避として推し活をできる現状にうわってなっちゃう」


NeoL「なりますよね。でも自分がまいっちゃうと何もできなくなるから、長く続けるためにも自分のケアはした方がいいなとも思います。あと仕事や体調でいっぱいいっぱいの時には情報にすら気づていない時があって、後で後悔したりするけど、全部はできないなとも思います」


野村「自分は一人しかいないから。いろんなことをやりたいし、できたらいいのにと思うけれど、どんなことも自分だけでできるのだと過信することも、きっと違うんだなと思ったりもします」


NeoL「自分にも限界があるからいろんな支援も順番ができちゃうのも辛かったです」


宮「うん。でも何もできてないって否定するんじゃなくて、すぐに知れたことやできたこと、今すぐじゃなくてもこの後でもどうしていくかだし、できるだけ否定じゃなくて肯定していく気持ちを忘れずにいたい」


NeoL「環境だったりも知るということに関わっていて、逃れる手段や情報を知らない方も多い。本来ならお金がかからない初等教育のうちに知ることの大切さやをもっと生活の基盤となる情報に触れる機会を増やすことは大切ですよね」


宮「生活保護も特別な人がもらうものということではなく、国民の権利としてあって。所得より生活保護の人の方がお金もらえるとおかしいと言う人もいるけど、それは生活保護をもらっている人がズルをしているわけではなく、所得を低くさせている国がおかしいのだとわかっていなきゃいけない。私は秋の選挙では絶望したくないと思ってます!」





綿貫「話に入りたいけど、めっちゃ集中しちゃってる」


野村「それも真理です」


綿貫「目を取り替えたい……」


野村「(綿貫のキムタクを見て)あっ、かわいい!」


虎鉄「ちゃんと髪にハイライト入ってる(笑)」


綿貫「首っていりますよね?」


RISAKO「はい。頭の下に首はつけます。少し小さめがいいかも。それで顔とのバランスがよかったらそのままつけちゃいます」


綿貫「服は一度身体を作ってその上にのっけてます?」


RISAKO「身体は服から出ているところだけ作ってます。服は繋げないで、先に作っておいてドッキングさせてます」


NeoL「パーツを色々作っておいてドッキングさせる方がいいんですね」


綿貫「なるほど!」


NeoL「虎鉄、上手! 真似したい。上半身の作り方が上手」


虎鉄「上半身の質がすごく難しかった。体の抜け方というか」


RISAKO「(推しに)とても似てますね。すごく上手です」


宮「器用じゃないって言ってたのに」


NeoL「写真も撮りながらなのに」


虎鉄「頑張ってみた(笑)」





haru.「粘土でアニメを作る人とかすごすぎる」


野村「確かに」


綿貫「もう1個作ろうかな」


宮「(綿貫の粘土人形を見て)すごい! できてる! 『BISTRO SMAP』本当に出たかった。オリンピック選手になって出てやると思ってた」


綿貫「夢が二段階(笑)」





haru.「推しと同じ空気が吸いたい」


NeoL「吸いたいよね。長らくライヴに行けてない。2019年まではファンミもツアーも行けてたのに」


野村「当選してたんですね、すごい!」


NeoL「そうです。当選して行けてました」


宮「すごい。でもおハルもランダムのトレカで絶対推しが出るよね。この間も開けたらテンとテヨヨが出てきた」


haru.「呼ばれてた」


宮「何呼ばれたとか言ってんのって言いたいけど、そうだねって気持ちになる」


haru.「でもそういうところで運を使い切るタイプ(笑)」


haru.「テヨヨしかできなそう。テンのも何か作ろうと思ってたのに」


宮「ファイティン!」


haru.「おにぎりできた!」


RISAKO「すごい! 忠実ですね」


野村「かわいい」


虎鉄「上手すぎて笑う(笑)」


RISAKO「そのまましばらく置いて固めましょう」


haru.「ちょっと集中しすぎて疲れたな。みんなスピードがはやい。平均2作品」


宮「見て、ルビー作ったよ(テヨンの亡くなった愛犬)」


haru.「かわいい」




NeoL「虎鉄は今何作ってる?」


虎鉄「これはHu Yetao」


NeoL「どうやって好きになったの?」


虎鉄「オーディション番組に出た時に、『自分がボーイズ・グループの定義を変えます!』って言ってて、自分の見た目ではボーイズ・グループに相応しくないって言われてきたけど、自分がそれを変えていくって言ってて、しかもそこでパフォーマンスしたのもヴォーギングでマジでやばいってなりました。グループでのデビューできなかったけど、ソロでデビューしたんです」


NeoL「虎鉄はよく韓国料理食べてるけど、元々好きだった?」


虎鉄「K-POP好きになってから。食べられるようになったものがめっちゃ増えた」


宮「何食べれるようになった?」


虎鉄「冷麺とキムチとビビン麺」


宮「そうね(笑)」


haru.「冷たい麺、めっちゃディスってたもん」


虎鉄「一番嫌いだった(笑)」


野村「味覚が変わった? 受け入れてみようと思った?」


虎鉄「食わず嫌いではなくて、食べてみたことはあったんですけど、不味いわって思ってそこから手を出さなかったんです。でももう一度手を出してみようと思ったことと、美味しいって思うようになった。ちゃんと脳が理解してくれた(笑)」


野村「好きな気持ちが味覚にも影響を与えたんだ」


NeoL「推しが食べてると美味しそうに見えるよね」


虎鉄「そう! それで中国のアイドルを好きになって、また自分の中で受け入れられたものやチャレンジできるものが増えていくのは楽しい」

NeoL「推し活が人生に影響を与えていってる」





虎鉄「猫かわいい」


野村「ありがとう。飼ってる猫です」


NeoL「RISAKOさんはどうして粘土をやるようになったんですか?」


RISAKO「最初はクレイアニメを作ってたんです。大学はデザイン系なんですけど、やることが幅広くてなかなか好きなことが見つからなくて、一人でクレイアニメを作るようになったら段々そういう方向になっていきました」


NeoL「手を動かして作業するとメンタルに良いというのはなぜなんでしょう?」


RISAKO「私は芸術療法として研究してたんですけど、粘土だけでいうと、粘土は触っていると退行という、幼い頃に戻るというのがあって。それこそカウンセリングで、壊れてしまった家族を修復する時に、みんなで粘土を触りながら話すという方法があったり。自分の中にあるものを、粘土は好きに形に表せるので、それが目に見えてわかることは心にも脳にも良かったりというのは言われています」


綿貫「幼い頃に粘土をあまり触ったことがない人には影響ないんですか?」


RISAKO「いや、大人になってやっても作用します。箱庭療法は本当にすごい知識がいるので生半可な気持ちでやるのはリスクが高いんですが、そうした中で自分で粘土を作ることに辿り着きました」


(手前から時計まわりに。最後中央)野村/宮/綿貫/haru./NeoL/RISAKO/虎鉄作








作品紹介


野村「私はMIRAE(未来少年)というアイドル・グループのソン・ドンピョさんを作りました。ソン・ドンピョさんが好きなイチゴのマカロンと未来少年のロゴも添えました。これは家で飼っている猫の月見。あと、ドンピョさんが今回のカムバで赤色の髪になったのでその試作もあります。猫と推しの共演がテーマです。粘土で推しを作るうえで推しを眺めるのとはまた違う発見があり、作ってみるとまだまだわからないところがたくさんあると気づき、より理解したいなと思いました。また他の構図でも作ってみたいです」


haru.「私が作ったのはNCTのテヨンに似ていると言われているおにぎりのキャラクターです。あと粘土を混ぜて作ったフレームと、鳥みたいなのと、お餅を作りました。一人だとこういう作業ってなかなかやるのに勇気というか、みんなこんな大変でいっぱい働いているのに自分だけ一人で粘土をやってていいのかなみたいな気持ちになっちゃう時もあるんですけど、こういうことに夢中になれる環境を作ってもらえたことが嬉しかったです」


宮「私はNCT DREAMの最新のリパケしたアルバム(『Hello Future』)のロゴマークを作りました。あとはおハルが好きなテヨンのペットのルビーを描いたものがあったので、おハルが買えなかったキーホルダーを作ってみました。粘土が余ってたので、本当は他のものを作りたかったんですがうまくいかなくて混ぜてみたたらきれいな色ができたから小物のお皿にして。失敗してもきれいなものになって、みんなにいいねって言ってもらえる環境がハッピーでした」


虎鉄「虎鉄はHu Yetaoという中国のアイドルの人形と、YetaoのHuの漢字『胡』と裏に『虎鉄』という字を書いたチャームを作って、この紙粘土のチャームをつけたネックレスを作ろうと思ったので穴も開けました。普段は何かやりながらでも別のことを考えたりしてるけど、紙粘土という普段触れないものだったから慣れてもいないし、ほぼ初めてやる感覚に戻ってたから、集中しないとどう扱っていいかわからなくて。集中して、普段いろんなことを考えていることをデトックスする時間ができたのがよかったです」


綿貫「キムタクなんですけど、90年代の一番イケイケの、ロン毛で小麦色に焼かれた時の最高の時を再現したのと、イメージしやすい『BISTRO SMAP』の赤がアクセントのコック服を着ているところ。あと木村家の犬・アムールちゃんです。特に犬を作ってる時がすごく楽しくて。推し本人よりも、推しが愛してるものや推しが考えていることを作ってる時に、推しの気持ちをより理解できるというか、同じ愛情を注げてる気がしてその面白さがありました」


RISAKO「自分の粘土制作を人に教えるというのは今回が初めてで、緊張していたのですが、とにかく楽しかったです。みなさんの作品、それぞれどれも可愛く個性がみえて刺激を受けました。宮さんのマーブル柄のお皿、色を混ぜている途中で良い感じになったからそのまま作ってみた、とおっしゃっていて素敵でした。粘土の可能性に改めて気づくことができた気がします。
読者の皆様へ。粘土を触る機会はあまりないとは思うのですが、今回皆さんと制作したような作品作りは材料を揃えていただければ、どなたでも簡単に行っていただけます。ぜひ、友達や家族と話しながら、もしくは1人で集中してなど、自由にリラックスして一度試していただければいいなと思います」



photography Kotetsu Nakazato(IG & TW)
text & edit Ryoko Kuwahara(IG & TW

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS