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現代写真を牽引してきたベッヒャー派のひとり、カンディダ・ヘーファー(Candida Höfer)など国際的な作家9名によるグループ展




3月10日(金)から 4月28日(金)までKOTARO NUKAGA (六本木)は現代美術家・松山智一、カルロス・ロロン、キュレーションによるグループ展「ながくとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ(Die Young, Stay Pretty)」を開催。(公式HP: https://kotaronukaga.com/)


本展には、2人の呼びかけにより、フーマ・ババ、セイヤー・ゴメス、カンディダ・ヘーファー、桑田卓郎、ジョエル・メスラー、マリリン・ミンター、エルヴィン・ヴルム、カルロス・ロロン、松山智一といったニューヨークのMoMAやヴェネチア・ビエンナーレ等でも展⽰実績があり、国際的に活躍する9名のアーティストの作品が展示される。


本展は、プエルトリコにルーツを持ち、帰属意識や⽂化的アイデンティティをテーマにシカゴを拠点に活動するアーティスト、カルロス・ロロンとニューヨークを拠点にリアリティをもった時代性を表現し、活躍するアーティスト、松⼭智⼀による共同キュレーションの展覧会。ロロンと松⼭、2名のアーティストの根底には、⾮⻄洋の⽂脈から⽣まれる美学による「美」というものに向き合っているという共通点がある。本展は、美術の歴史上、常に検討されてきた「美(美しさ)」という概念とその概念が内包する多⾯性、そして美は普遍的ではないということついてロロンと松⼭の対話の積み重ねから企画された展覧会となる。








ファッション業界において商品化され、消費される性と身体を通して「美」というものについて批判的な視点に立ち、問題意識を共有するマリリン・ミンター(Marilyn Minter)、パキスタンをルーツとするフーマ・ババ(Huma Bhabha)は⻑きに渡り、現代の人物像の奇妙さをあらゆる美術史的参照を基にした折衷的なオブジェクト、ドローイングなどの制作によって表現してきた。90 代以降のドイツ写真のみならず、現代写を牽引してきたベッヒャー派のひとりとして知られるカンディダ・ヘーファー(Candida Höfer)、さらには、セイヤー・ゴメス(Sayre Gomez)、エルヴィン・ヴルム(Erwin Wurm)、ジョエル・メスラー(Joel Mesler)、桑田卓郎、そして、キュレーションを務めたカルロス・ロロン(Carlos Rolón)と松山智一を含めた国際色豊かな9名のアーティストの作品により大文字の「美術史」を語る「美学」 に向けて批評的な視点で捉え、一石を投じる構成となっている。


展覧会タイトル「ながくとも四⼗に⾜らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ。」について


『徒然草』の第七段、「あだし野の露」より抜粋した本展覧会タイトルを現代訳にすると、「死ぬことがないならば、⼈⽣の深い感動は⽣まれてくるはずもない。やはり、⼈間の命ははかないほうが断然いい。」というような意味になる。この⼀節の本質を年齢についての問題ではなく、⼈⽣の「美しさ」について検討する姿勢であると捉えたとき、それはその後の時代の⽇本の美学に通底する概念です。その意味においてこの節を松⼭はタイトルとして選びんだ。
出典:徒然草(吉田兼好著・吾妻利秋訳)


松山智一 コメント
展覧会をキュレーションするのは4, 5回目ですが、テーマを決め作品やアーティストを選ぶことはキュレーターはじめ専門家ができることであり、表現をする当事者であるアーティストができることは、作家同士だからこそ起きる相互反応、有機的な共鳴を“今”という時間を共通項にして形にすることです。それゆえ最初この展覧会のタイトルに“リフレクション”を考えていました。時代を反映するリフレクション、同時代を生きる作家同士が互いを映し出すリフレクション。ただそれをそのまま展覧会タイトルにすることにつまらなさを感じました。

作家にとって表現とは変わりゆく今を捉えることであり、作品をつくることは時間軸を超える行為でもあります。生死という無常の概念にあらがう行為とも言えます。徒然草「長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」で詠まれた無常観は、我々現代美術作家の表現行為と根底で相通ずるものがあります。この展覧会ではアーティストがどのように表現を追求し、それぞれの作家がどのように今を捉えているのかのプロセスと眼差しを共有したいと思っています。


カルロス・ロロン コメント
かけがえのない友人である松山が選んだ本展のタイトルを英訳するのに、私は頭を悩ませました。英文タイトルは、歌手デボラ・ハリーとギタリストのクリス・スタインが結成し、70年代から活躍するアメリカのロックバンド、ブロンディが作った同名の曲(1979年リリース)から引用しています。この曲は、美しくいる事へのプレッシャーや、期待、価値観というものが商品化される今日の文化において、今なお意味を持つのです。歌詞にある、「永遠に若くあるためには、若くして死に、人々の心に残るしかない。それは人間の性の奇妙さだ」という死生観は、中世の日本人のみに流れるのではなく、時代や文化を超えて、常に人の生き様に投げかけられる問いなのかもしれません。


参加アーティスト


左) photo by Akira Yamada, 右)松山智一《Home Salvation Toner》2022


松山智一(本展のキュレーターも兼任)参加アーティスト
1976年岐阜県出身、ブルックリンを拠点に活動上智大学卒業後2002年渡米。NY Pratt Instituteを首席で卒業。ペインティングを中心に彫刻やインスタレーションも手がける。作品には、東洋と西洋、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素が見られ、これは日本とアメリカの両国で育った松山自身の経験や情報化の中で移ろいゆく現代社会が反映されている。世界各地のギャラリー、美術館、大学施設等にて展覧会を多数開催。また、ロサンゼルス・カウンティ美術館、サンフランシスコ・アジア美術館、マイアミ・ペレス美術館、龍美術館、宝龍美術館、Microsoft コレクション、香港のK11 Art Foundation、ドバイ首長国の王室コレクション等に作品が収蔵されている。2012年から2017年5月までの5年間、School of Visual Arts(SVA)の非常勤教授を勤めた。2020年、JR新宿駅東口広場のアートスペースを監修、中心に7mの巨大彫刻を制作する。2021年にはNHK「日曜美術館」で特集が組まれ、グローバルな活動と重層的な作品が高く評価される。現在はブルックリン・グリーンポイントにスタジオを構える。



右)カルロス・ロロン《Discovery in the New World II》2023


カルロス・ロロン(本展のキュレーターも兼任)
1970年シカゴ(アメリカ合衆国)生まれ。カルロス・ロロンは多角的な実践によって知られる。様々なメディアを駆使し、技工、儀礼、美、スピリチュアル、アイデンティティといったテーマと、そうしたものとアートの歴史や制度との関わりを探求する。プエルトリコの家系に生まれたという背景を持ち、帰属意識や野心、文化的アイデンティティについての問いに直結する個人的な考えを 深めてきた。ロロンは、人々が新時代のアメリカの中流階級の生活に適応していくさまを鮮やかに見せる。次々と入れ替えられる壁 紙や家具の色、テクスチャー、パターン。憧れを生み出すために家に持ち込まれた品々。それはしばしば幼少時代の記憶と結びついている。ロロンはそこからインスピレーションを得て、そうしたもののいい部分を変容させていく。その作品は、洗練された環境や社会的な障壁がどのような働きを持ち、そしてポストコロニアルの場とどう関係しているのかについての議論をもたらす。



右)フーマ・ババ《Untitled》2015


フーマ・ババ(Huma Bhabha)
パキスタン、カラチ 1962 年生まれ。フーマ・ババは⻑きに渡り、現代の人物像の奇妙さをあらゆる美術史的参照を基にした折衷的なオブジェクト、ドローイングなどの制作によって表現してきた。古代と現代の両方の文化的ソースから借用したハイブリッドな形は、哀愁とユーモアを醸し出す。



右)セイヤー・ゴメス《(To Be Titled)》2022


セイヤー・ゴメス(Sayre Gomez)
アメリカ、シカゴ 1982年生まれ。セイヤー・ゴメスは、現代における社会とわたしたち個人とのコミュニケーションの間におけるあいまいな交流の性質について、フォトリアリスティックなペインティング形式、 だまし絵、エアブラシ、ハリウッドのセットペインティング手法などコンセプチュアルな実践を通して言及する。



右)カンディダ・へーファー《Bibliothèque du CNAM Paris II 2007》2007


カンディダ・ヘーファー(Candida Höfer)
ドイツ、エーバースヴァルデ 1944 年生まれ。建築物のインテリアを緻密に構成した大判カラー写真で知られている。パリのルーヴル美術館など世界各地の有力な美術館で展示を行い、2002 年のドクメンタ11、2003 年のヴェネツィア・ビエンナーレのドイツ代表にも選ばれ、国際的な評価を得ている。



右)桑田卓郎《Untitled》2015



桑田卓郎(Takuro Kuwata)
1981年、広島に生まれる。現在は岐阜県多治見市を拠点に活動。茶の湯において不完全な美や自然の造形をたたえる「わびさび」の美学を受け継ぎ、環境、歴史、自然、時間との対話から伝統と現代を融合させ、陶芸の新たな可能性を広げている。なかでも焼成が不十分のため釉薬が溶け切れず鮫肌状に縮れた「梅華皮(かいらぎ)」や陶土に含まれた小粒の長石などが器面に現われる「石爆(いしはぜ)」といった日本の伝統的な陶芸技法を再解釈し独自の表現にしてきたことで知られる。作品はルベル・コレクション、パームスプリングス美術館、金沢21世紀美術館、ミシガン大学美術館、シカゴ美術館などのパブリックコレクションに収蔵され、ニューヨーク、ブリュッセル、ロンドンなど世界各地の美術館やギャラリーで展覧会を開催。



右)ジョエル・メスラー《Untitled (Solid Gold)》2022


ジョエル・メスラー(Joel Mesler)
アメリカ、ロサンゼルス 1974 年生まれ。ジョエル・メスラーは、自身の幼少期の記憶や人生経験を基にした私的なイメージをユーモア溢れるタッチにてレンダリングしなおし、人間の普遍的な意識の要素へと変換する。1980年代のロサンゼルスを思い起こさせるメスラーの作品は、大胆な色彩、様式化されたパターン、鮮やかな具象にアーティスト独自のカリグラフが組み合わされた特徴的なスタイルとなっている。



右)マリリン・ミンター《I C Gaga》2018


マリリン・ミンター(Marilyn Minter)
アメリカ、シュリーブポート 1948年生まれ。 写真と絵画の両方のスキルを活用し、ハイファッション広告に通じる映像言語、艶やかで ハイパーリアリスティックな表現によって、現代の美の概念を調査。彼女の作品はロサンゼルス現代美術館、ボストン美術館、ニューヨーク近代美術館などに収められている。



右)エルヴィン・ヴルム《Glory(Semmel、Brotleib)》2021


エルヴィン・ヴルム(Erwin Wurm)
オーストリア、ブルック・アン・デア・ムーア 1954年生まれ。日常のオブジェクトを擬人化したりするユーモラスな作品で、彫刻の現代的な概念を拡張することでよく知られるアーティスト。2017年の第57回ヴェネツィア・ビエンナーレへ出展、ポンピドゥーセンター、ニューヨーク近代美術館、グッゲンハイム美術館、テートなど世界の名だたる美術館での展覧会へ参加している。


参加アーティスト
フーマ・ババ、セイヤー・ゴメス、カンディダ・ヘーファー、桑田卓郎、ジョエル・メスラー、マリリン・ミンター、エルヴィン・ヴルム、カルロス・ロロン、松山智一

展覧会名: 「ながくとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ(Die Young, Stay Pretty)」
会期: 2023年3月10日(金)- 4月28日(金)
開廊時間: 11:00 – 18:00 ※日月祝休廊
公式サイト: https://kotaronukaga.com/
会場:KOATRO NUKAGA(六本木)
〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
アクセス: 東京メトロ日比谷線、
都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3番出口より徒歩約3分

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