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1990年代、激動の中国に生まれた作家、フェイイ・ウェンとパン・カーによる作品群を展示。
銀座にあるシャネル・ネクサス・ホールで現在開催中の展示「Borrowed Landscapes フェイイ・ウェン|パン・カー 二人展」。目覚ましい経済成長を迎えていた1990年代の中国で生まれた二名の気鋭ビジュアルアーティストによる作品群が、5月22日から約二ヶ月に渡り展示される。
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会場に入ってまず目に飛び込んでくるのが、パン・カーによるカラフルなステンドグラスだ。香港と東京を主な拠点として活躍する建築家、小室舞が手掛けた展示空間には、自然光が清々しく差し込み、細やかな加工が施されたガラスをより一層美しく魅せる。木や金属などの素材を組み合わせたそれらの作品は、過疎化が進む中国の田舎街でカー自身が撮影した写真を元に制作された。ガラスに透ける神秘的な光と相反するように、展示される作品はどこか退廃的な空気感を纏っており、教会のステンドグラスというよりは、昔ながらの喫茶店の窓を眺めているかのような、親しみやすさを感じさせる。
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湖南省で生まれ、中国屈指の世界都市である深圳市で育ったカーにとって、都市空間は「シェルター」であった。「人々がそれぞれの居場所を見出すことができる、安全で活気があり、魅力的な公共圏」として機能する大都市に愛着を感じるのだと語っている。それを裏付けるように、彼女の作品からは、絶え間なく変化し続ける都市部に住む人々が共有する哀愁めいたものが漂う。東京の銀座という、目の前に提示されるイメージとは異なる文化圏・社会にいるはずの鑑賞者に、記憶のなかに曖昧に存在している「懐かしさ」を呼び起こすのだ。
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空間を囲うようにして展示される中国の山水画を想起させる作品群は、フェイイ・ウェンによるもの。それらが絵画であるのか、写真であるのか、鑑賞者がそれを瞬時に判断することはおそらく不可能だ。山間から勢いよく流れ落ちる水流や、余白を意識してクロースアップされた草花……東洋の自然を思わせるそれらの風景は、意外にもすべて彼女が11年前から住むイギリスの地で撮影されたものだという。それらの写真を、プリント、再撮影、再スキャン、コラージュなど様々な技法で加工することで、時間や場所、媒体といった情報を交錯させるイメージを作り出した。
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北京で生まれたウェンは、祖父母の家が紫禁城の近くだったことで、歴史的な宮殿や庭園、寺院などを幼少期から頻繁に訪れていたという。そこで培われた審美眼は、彼女の作風の基盤とも言える。「私は祖父母の家で過ごした幼少期の思い出の一部を、常に心に抱き続けています」と彼女は語る。「コルク細工のジオラマ、盆栽、ホーローの洗面器、花の刺繍が施された枕カバーは、まるでひとつの風景の縮図のようでした。これらの感覚的な記憶は、イメージに出会い、イメージを捉え、イメージを感じるたびに、私の中によみがえり続けています」
Fwiyi Wen ©CHANEL
二人が今回制作した作品において、重要なキーワードとなるのが「記憶」である。都市の記憶、幼少期の記憶、それらのごく個人的で曖昧な記憶を感覚的にイメージに投影することで、鑑賞者に考察を促す彼女たちの作品群。本展のテーマである「借景(borrowed landscapes)」は、本来〈庭園の構成に背景景観を取り入れる〉造園技法を指す言葉であるが、常に変遷を遂げる都市部で育った彼女たちが「借景」とするものが、今現在目の前に広がる光景ではなく「記憶のなかの景色」であることは、極めて自然な成り行きなのだろう。
Peng Ke ©CHANEL
20周年を迎えたシャネル・ネクサス・ホールの新たな取組みの皮切りである本展。中国・北京にあるユーレンス現代美術センター(UCCA)のディレクターを務めるフィリップ・テナリのキュレーションのもと、アジア各国の気鋭アーティストをフィーチャーした写真展を今後も開催していくという。
「Borrowed Landscapes フェイイ ウェン|パン カー 二人展」
会期:2024年5月22(水)〜 7月15日(月・祝)
開館時間:11:00〜19:00(最終入場 18:30)
入場無料・会期中無休・予約不要
会場:シャネル・ネクサス・ホール (中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4階)
主催:シャネル合同会社
URL:https://nexushall.chanel.com/program/2024/fwpk/