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一十三十一&弓削匠『THE MEMORY HOTEL』インタビュー

 
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角川映画と『THE MEMORY HOTEL』の関連性

 

ーーホテルっていうキーワードはどこから? 

弓削「ホテルってミステリーの重要な要素だったりすることも多いですよね。一番考えたのは、村上春樹の『ドルフィン・ホテル』です。異空間にタイムトリップしてしまうようなあの感じ。もうひとつはシンガポールのリゾートホテル『ラッフルズ・ホテル』です。TUBEの1987年のアルバム『トワイライト・スイム』のジャケットに写っています。

あとは、角川映画のイメージを現代にビジュアル化したかったというのもありますね。『里見八犬伝』とか『戦国自衛隊』なんかのファンタジー作品のアンバランス感、ギャップ感ーー『里見八犬伝』なんて日本の昔話なのに、忍者みたいな格好をした真田広之が馬に乗って砂漠を駆けるエンディングのテーマ曲がジョン・オバニオンって外国人が歌うめちゃくちゃドラマティックな曲なんですけど(笑)、そういうところと、松田優作なんかが出てくる都会的な雰囲気のミステリー。これをうまくミックスしてビジュアルに出来ないかな、と考えていました。これまでの一十三ちゃんの作品は統一されたイメージで来ていましたが、そこから変わった感じを出したいな、というのはありましたね」

ーーなるほど。ジャケットのアートワークについて、少し聞かせてください。

弓削「時間軸と空間軸の歪みみたいなことをアートワークでも表現出来たらと思っていて、そういうところを意識しています。縦(ジャケットの黄色いライン)が空間軸で横(同じくブルーのライン)が時間軸、顔を囲っているピンクのラインが一十三ちゃんの思考という意味です。このジャケットを見て、『怖さ』とか『なんなんだろう感』、つまりわけが分からないものに触れる感覚を誘発出来たら嬉しいですね」

ーー当然、制作前から書かれた脚本とも関連しているんですよね。 

弓削「はい。脚本では一十三ちゃんは記憶を失っている設定です。『メモリー・ホテル』という名の病院の患者さんで、記憶を辿る旅をしている。場面場面に扉が出てくるんですけど、ホテルから逃げ出そうとして扉を開けると砂漠に出てしまったり、逆に砂漠に扉を見つけて、それを開けると病院に戻ってくるんです。それを繰り返しながら、徐々に自分の記憶が蘇ってくるという。おおまかなストーリーはそんな感じですね」

ーー書くのに結構時間がかかった?

弓削「めちゃくちゃかかりましたし、最後まで書けてないです(笑)」

一十三十一「それをわたしが『こうなんじゃないか?』と推測して(笑)。でもそれが逆によかったんですよね。いろいろな可能性があって」

ーーこれまでのアルバムでも脚本は書いていますよね。 

弓削「はい。でもこのアルバムの脚本が一番時間かかりましたね。一応ミステリーということなので、物語のなかにトリックを織り交ぜないと面白くないじゃないですか。そういうトリックを考えるのに時間を要しました」

 

ーーそうして考えたトリックは、音楽の方にも反映しているんですか?

弓削「そこまで具体的にはないと思います。キーワードとか雰囲気みたいなところで使ってもらってはいますけど」

ーーなるほど。脚本があるなかで、「この部分を曲にしてください」ということでもなく。

一十三十一「そうですね。作曲陣には脚本の内容とおおまかなBPMやイメージは伝えますけど、あんまり具体的な依頼の仕方はしていないです」

弓削「あくまでも脚本は全体の統一感を出すためのガイドライン的というか」

一十三十一「わたしの詞も、完全に弓削さんの脚本に沿っているわけではなく、そこからインスピレーションを受けたもの、という感じですね。脚本をインプットして、それを消化、発展させて出てきたもの」

弓削「脚本はビジュアル表現のバックグラウンドとしては直結していますね。そこから音にいくのは、イメージを咀嚼してもらって、という感じです」

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