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text by Ryoko Kuwahara

Self Isolation Issue : 「生きるためには創作活動が必要ですが、今すぐに何かを生みだす必要はありません。今は“新しい自分”を作るための創作活動のプロセスとしています」Interview with Demi Demu




フィジカルには距離を置かねばならない現状に際し、アイデアや情報のシェアでポジティヴに自宅での時間に向き合うための「Self Isolation」特集。アーティスト/クリエイターによるいまの状況への向き合い方やオンラインで楽しめる情報などを随時アップデートしていく。
ポーランド出身、東京を拠点に各国のブランドやメディアと広く交流を持つスタイリストのDemi Demu。そのオリジナリティあふれる作品の数々を見てわかるように、服の魅力を増幅させるスタイリングはもちろんのこと、その域を超えた世界観の構築まで、常に見るものを刺激するヴィジュアルの送り手として名高い。通常の撮影ができない今も、彼女の想像力、創造する力は常に稼働し、実験を繰り返し、新たな時代に備えている。

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ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で生活、クリエイティヴ、ビジネス、それぞれの面でどのような影響が出ていますか。



Demi : 私たちはみんな平等で、等しく脆い存在。ナイーヴに聞こえるかもしれませんが、母なる地球は私たちに警告を出したのだと思います。私たちには選択肢があります。以前と同じように生きるか、または「(地球)全体」の中の一部として機能するために生活を改善し、変更するか。私自身はCOVID-19の収束後に同様の生活に戻ることはないと思い、変化の流れに合わせていく必要性を感じました。
そこで、何が来ても大丈夫なように自分をオープンな状態にし、同時に自分に付属していた様々なものを減らそうと心がけ、タバコをやめることにしました。これは自分にとってかなり大きな出来事です。
私がタバコを吸い始めたのは14歳の時。子供の頃から父親と姉がいつもタバコを吸う姿を見ていたんです。父は強い個性を持っていて自立した芸術家でした。そのため、父がタバコを吸う姿は「クール」という言葉と結びついていたし、自分にとっても性格の一部に結びついたものでした。家にいてストレスのレベルをコントロールすることができる今は、禁煙はより容易です。
また、自分の新しいやり方を明確に定義しようと、「健康的で楽しいライフスタイル」への移行に熱心に取り組んでいるところです。食事や食品の知識の獲得に情熱を燃やし、未加工食品への愛情を育み、自分の食への欲を単純化または浄化し、コストも削減できることに喜びを感じています。ジョギングも始めました。私はランナータイプではありませんが、肺機能が改善され、空気の味が変わるのを感じたかった。夫と一緒に「ボディービルディング」のエクササイズをしますが、これは本気で体を作るためというよりはおふざけのようなものですね(笑)。


創作活動(*仕事関連のプランニングやアドバイスのようなオンラインできるものは含んでいません)に関しては、大部分が保留になったので、日常生活の活動に関心をおき、些細なことに美しさを感じる日々です。
最近、私はいくつかのクリエイティヴ・エクササイズを行ったのですが、このプロセスの間に自分自身を十分に観察できていなかったことに気づきました。何が良くて、何が良くないかーーそれらを集め、ジャッジすることなく、より客観的な視点を持って自分自身を観察することに喜びを見出しました。
生きるためには創作活動が必要ですが、今すぐに何かを生みだす必要はありません。今は“新しい自分”を作るための創作活動のプロセスとしています(…)


ーーこの側面で新たに気づいたこと、心がけたいことがあれば教えてください。


Demi : 現実的な社会ではいかに多くの不要なレイヤーが構築されていたのかに気づきました。それらの人工的な圧力から作られたレイヤーは、本質を見えにくく塞いでしまっていました。東京のような大都市では速度を制御するのは非常に難しいのですが、どれほど「スロー」を楽しめて、「スロー」からどれだけを得ることができるかを実感しています。


ーー緊急事態宣言への精神的、物理的対応があれば聞かせてください。


Demi : 物理的な対応に関してはすでに知られているはずなので、メンタルについて。私はニューロサイエンスと仏教の繋がりについて関心を持っていて、それを発展させているところです。COVID-19の前から瞑想を行っていたのですが、そのおかげで上記に述べたようなことを実現できたと思っています。心と身体をちゃんと繋げてくことは、非常に意識的に行う「1つ」のプロセスになりました。両方が大きな声で必要なものを要求してくるんです。事態が好転して物事が元のスピードに戻っても、瞑想を習慣にして、時間がないという言い訳を作らないようにしたいと思います。








ーーご自身の活動を鑑みて、室内でどのような創作が可能だと思いますか。


Demi : 「通常」の方法を見直して、創造性を訓練すればどんな活動も可能ですし、その可能性は数え切れないほどあります。今は、何かを練習したり、新しいことを学んだり、スキルや知識を向上させる必要性を感じています。チームワークではなく、自分自身の成長の時間ですね。
「身の回り」のものだけを使うことを余儀なくされているのも興味深い。私はポーランドの小さな町で育ち、使えるものがあまりなかったので、リメイクしたり、何か代わりを見つけたりしていたんです。そういう私のルーツもあって、あるものを使わざるを得ない状態を楽しんでいる部分もあります。経済を立ち直らせる必要があるような時には、役立つスキルかもしれません。



ーーオンラインの活用方法や1人でもできる施策など、良いアイデアがあればシェアをお願いできますでしょうか。


Demi : 私の最もおすすめは、楽しいこと、そして学ぶことの喜びに基づいたもの。あなたがいつも学びたかったけれど、そのための時間がなかった何かについて考えてみてください。再び考え、再構築し、その後リラックスする喜びんについて。新しい健康的な習慣を作り、それらを心の中に深く根付かせましょう。先が見えなくても、そこにある贈り物を楽しんでください。

私はいつも日本語を勉強する時間がないと不満を言っていました。極端に短いヴィジュアルメモリーしか持っていないので、今まで改善ができずにいましたが、ゲーム形式の学習言語アプリを教えてもらってから一歩前進したと思います。競争、報酬などという一般的なゲームのルールに基づいているアプリのため、「楽しい」類いのプレッシャーがあります。学位をとるということではありませんが、ようやく漢字に心を開くことができ、新たな興味の種が生まれたのは間違いありません。このアプリは「duolingo」というもので、(私が思うに)ほとんどの言語に適用できます。
また、ポッドキャスト、オーディオブック、ラジオチャンネル、ライブチャットイベントをチェックすることもおすすめします。
私はSNSからはできるだけ離れるようにしていますが、Instagramへの軽度の中毒には苦労させられます。熱中しすぎて、ソーシャルに何かを差し出すことにストレスを感じてしまって。もちろん、友だちや新しい人とつながるのに、より積極的な方法で使用することもできますが、他の選択肢を見つけるのは良いこと!


個人的なおすすめは以下。
•素敵なスピリットーManami Kinoshitaが、SoundCloudのアプリを介して「週末RADIO CLUB」というラジオクラブを始めました。そのラジオクラブからのサウンドは自分の空間に愛をもたらしてくれます。
•ポッドキャストではDean&Ayesha Sherzaiの「Brain Health&Beyond」を聞き始めました。私たちの脳がどのように構築されているか、そして私たちがその活動をどのように改善できるかに興味があるなら、ここで良いアドバイスを見つけられるでしょう。
•「Audio Dahrma」というアプリでDahrmaの話も聞いています。お気に入りの先生であるGil Fronsdalの話も聞けるのですが、ユーモアのある彼の話は私にはとても効果的なんです。
•ライブトークに関して、私が見つけた最も興味深いものはBOFのものでした。BOFのウェブサイトでリストを見つけることができ、いくつかのトークを聞くには登録する必要があります。
•もちろんバランスをとるために、純粋なエンタテインメントとしての映画、ドラマシリーズ、チャンネルも視聴しています。私たちはみんな、脳のために楽しみと休息を必要としていますからね。
まだご存じない方は、パフォーマンスグループ「キュピキュピ」の石橋義正が制作した「バミリオン・プレジャー・ナイト」という90年代の日本の番組をYouTubeで観るのもいいかも。非常に美しいヴィジュアルのドラマ「POSE」もNetflixで観ることができます。










ーー新たにチャレンジしてみたいことはありますか。


Demi : 自主隔離が続く場合、自己表現の新しい方法と新しい創造的な手段を見つけたいです。
自主隔離が終了したら、自分で始めたものをより広い空間でやることを検討、挑戦し、これから起こることに適応することに挑戦したいと思います。そして、自主隔離が続くかどうかに関わらず、自分が大切にしていることと共生していき、仕事でも共生を見つけること、困難から良いチャンスを見つけることに挑戦したいです。


ーー事態が好転し、COVID-19が収束したらしたら何をしたいですか。


Demi : ハグ。


ーー政府の施策は満足できるものだと思いますか。もしNOであればどのようなことを提案したいですか。


Demi : 政府は100%正しい対応をできたとは思いませんが、その努力を全く見なかったことにするというのも違うと思います。もっとも難しい問題は、「個人の権利」とは別に、民主主義が何ができるかではないでしょうか。一部の国では、「生命の価値」を「権利の価値」より上に捉え、より深刻なロックダウンを行なっています。
何が正しい答えかは難しいですが、日本政府は決定を躊躇し、国民をかなり混乱させたと思います。オリンピック延期の公式決定後、数字が劇的に変わった悲しい真実。経済活動が私たちの命よりも大切にされているのを目の当たりにした、ちょっとした「目を見開く驚くべき瞬間」でした。その後、国民への支援について議論されたことが旅行クーポン、肉、そして1つの家族につき2つのマスクということから、安心できるような状況ではなく風刺されるような状態になってしまいました。その後に下された決定も、「数歩は遅すぎる」という気持ち。
私は天皇側からのアクションも少し期待していました。日本には強制的に家にいなくてはいけないという法律はなく、首相は「丁寧にお願いする」ことしかできないので、政治的な立場ではなく、誰もが最も尊敬する人が自分で考えて行動を起こし、人々に家にいるように頼むとしたら、それは他国と同じ強力でいて、最も穏やかな力を発することができるのではないかと思ったんです。

Magdalena Demukai aka Demi Demu
Stylist

URL: https://demidemu.com
IG : demidemu

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