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text by Nao Machida

「関係性に甘えず、相手を思いやる心を忘れない」『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』 ジョセフィーヌ・ジャピ インタビュー




夢を実現したベストセラーSF作家の夫。小さなピアノ教室を開きながらピアニストとしての成功を夢見る妻。仕事に夢中で自分本位な夫は、妻の抱える孤独に少しも気づいていない。そしてある朝、見知らぬ部屋で目覚めた夫は、自分がしがない中学校教師になっていることに気づく。彼が迷い込んだ“もう一つの世界”に生きる妻は、自分のことなど知らない人気ピアニストだった——。失ってから大切な存在に気づいた経験がある人は、きっと少なくないはず。5月7日に全国順次公開される『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』で、気鋭の俳優フランソワ・シビルが演じる主人公ラファエルも、まさにそんな一人だ。映画はパリの美しい街並みを背景に、妻の心を取り戻し“元の世界”に帰ろうと悪戦苦闘する彼の姿を通して、本当に大切なものは何かを描き出す。若くして結婚したユーゴ・ジェラン監督が自身の結婚生活を見直す中で誕生したという、実にファンタジックなラブストーリーだ。ここでは妻のオリヴィア役を魅力たっぷりに演じたジョセフィーヌ・ジャピにリモートインタビューを行い、作品に込めた想いや製作秘話を聞いた。

——『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』は、とてもユニークなラブストーリーですね。オリヴィア役を引き受けようと思った理由は?


ジョセフィーヌ・ジャピ「私自身がロマンティックコメディというジャンルがとても好きだったのと、脚本を読んだときに、ロマンティックコメディとしての本作の良さを感じたからです。普段は物語の中で少しずつ成長していく一人の女性を演じることが多いのですが、今回は1つの作品の中に異なる2人の女性が共存していて、その両方の若い頃から成熟した姿までを演じられるということ、また、ユーゴ監督と一緒に仕事ができることなど、様々な理由から即答で引き受けました」

——ユーゴ・ジェラン監督は「一番大切な人に出会わなかったら、人生はどうなっていたのだろう?」という発想からこの映画を制作したそうですね。監督とは本作のコンセプトやオリヴィアの人物像について、どのようなお話をしましたか?


ジョセフィーヌ・ジャピ「ユーゴ監督とは、オリヴィアのキャラクターについてたくさん話し合いました。実在する人物からインスパイアされたキャラクターですので、監督にはどういう人物像にしたいかという明確なイメージがありました。(元の世界ともう一つの世界の)どちらのオリヴィアも意志が強く、自分がしたいこととしたくないことがとてもはっきりしています。だからこそ、ラファエルに自分の気持ちをぶつけてケンカにも至るし、初めて会った人にも心を開いていく。そういう自発的なところがある人物像でした。実は監督のインスピレーションの源はオードリー・ヘップバーンで、彼女は本作でも必要だった様々な色彩を持つ女優でした。屈託のない陽気で軽やかなところもあれば、グラマラスな部分や、自信に満ち溢れた部分もある。私自身もオードリーが大好きで多くの作品を観ていますし、監督にとっても私にとってもオリヴィアにぴったりのモデルでした」









——2つのパラレルワールドにおけるオリヴィアの心理描写が絶妙でした。別の世界で生きる同一人物を演じ分ける上で、こだわったことや難しかったことがあれば教えてください。


ジョセフィーヌ・ジャピ「しっかりと準備ができたのがとても大きかったです。実はクランクインの3ヶ月前に、監督とフランソワ(・シビル)と3人だけでプラハに行ったんです。映画で使う衣装をスーツケースにたくさん詰めて行って、監督が小さなカメラでちょっとしたシーンを撮ったりしました。撮影が始まる前に、どういう役者、そして監督といっしょに仕事をするのか、どういう人物を演じるのかということがすべて頭の中に入っていたので、実際の撮影現場に立ったときには、それが初めてではないような感覚でした。とても自信があって貫禄のある女性と、若々しく初々しい女性を演じ分けるということは、私にとってはむしろ快感でした」


——劇中のラファエルのように、愛する人の大切さを失ってから気づくという経験をしたことのある人は少なくないと思います。ジョセフィーヌさんは、ラファエルやオリヴィアに共感する部分はありますか? 


ジョセフィーヌ・ジャピ「人間ってやっぱり、“この人とは家族だから、友だちだから、恋人だから”と、その関係性に安心してしまうところがありますよね。“この人たちは一生、私に忠実だろう”と。まさかその人が自分から離れてしまうなんて思わない。それはこの作品でも描かれていて、とても人間的なことです。だからこそ、脚本を読んだときに、自分に語りかけてくるものがありました。“この人はあまり気にかけなくても大丈夫”と思ってしまいがちですが、そういう部分と闘って、相手を思いやる心を忘れないということは、すごく大事だと思います。私が人生で常々思っていることでもあったので、そういうテーマもこの作品の気に入っているところです」







——本作に出演した経験から得た最も大きなことは何ですか?


ジョセフィーヌ・ジャピ「まさに先ほどお答えした部分が、私にとっては本作の一番のメインテーマだと思います。自分の周りにいる人たちにどういう視線を投げかけるかという問題で、それはオリヴィアとラファエルだけでなく、ラファエルと友人のフェリックスの関係にも言えることです。ラファエルは、元の世界ではオリヴィアのことを見なくなるし、もう一つの世界に行ったらフェリックスに投げやりな態度をとってしまう。そして、そんな中で描かれる“もしこの人と出会っていなかったら、どうなっていただろう?”という問いかけも、もう一つの大きなテーマだと思います」


——日本にいらっしゃったことはありますか? 


ジョセフィーヌ・ジャピ「2度訪れたことがあります。最初は東京と京都、2回目は東京のみでしたが、どちらもプライベートで行きました。日本は大好きなので、また行きたいなと思っています。これまでは短い時間しかいられなかったので、今度はいろいろなところに行けるようにたっぷりと時間を取って訪れたいです。日本映画にもとても興味があります。フランス映画と日本映画には、どこか架け橋というか、共通項のようなものがある気がします。ぜひまた来日したいです」





text Nao Machida



『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』
5月7日(金)全国順次ロードショー
監督:ユーゴ・ジェラン『あしたは最高のはじまり』
キャスト:フランソワ・シビル、ジョセフィーヌ・ジャピ、バンジャマン・ラヴェルネ
配給:シンカ  提供:シンカ、フラッグ、ハピネット
公式サイト:love-second-sight.jp  
Twitter/Instagram:@lovesecondmovie #ラブセカ
© 2018 / ZAZI FILMS – MARS CINEMA – MARS FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 3 CINEMA – C8 FILMS



高校時代に一目惚れをして結婚した、ラファエルとオリヴィア。結婚 10 年目を迎え、小説家を目指していたラファエルは、いまや子どもたちに人気のベストセラーSF 作家に。 一方、小さなピアノ教室を開きながらピアニストの頂点を目指すオリヴィアは、仕事のことばかり考えているラファエルとのすれ違いの生活に孤独を感じていた。そんなある日、我慢の限界に達したオリヴィアがラファエルに想いをぶつけると大喧嘩に…。翌日、人気作家の特別授業として中学校を訪れたラファエルは、出会う人々の様子がおかしいことに戸惑いを覚える。そこでの自分は卓球に熱を上げるしがない中学校の教師で、オリヴィアは人気ピアニストとして活躍する、立場が逆転した<もう一つの世界>だった。そして、その世界のオリヴィアはラファエルを知らなかった…。自分にとってオリヴィアがすべてだと気付かされたラファエル。もう一度オリヴィアと愛し合うことで元の世界に戻れると信じ、あの手この手を使って接触を試みる。二人は少しずつ心を通わせ合うものの、オリヴィアは公私共に長年連れ添ったパートナーと婚約することに。そこでラファエルは、ある重大なことに気づき、人生最大の決断を下す。それは、“恋”しか知らなかったラファエルがオリヴィアの幸せを一番に願う“愛”の決断だった…。

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