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text by Yukiko Yamane
photo by Tereza Mundilováe

14 Issue:Lyra Pramuk(Singer, Composer-Producer, Performance artist)




年齢は単なる数字であって、オトナになるという境界線は人ぞれぞれ。定義できないからこそ、誰もが答えを探している。多感で将来のことを考え始める14歳の頃、みんなは何を考えて過ごしたのか?そんなファイルを作りたいと始まった「14歳」特集。東京、NYに続くベルリン編には、年齢やバックグラウンド、仕事の異なる個性豊かな15名をピックアップ。6人目はベルリン拠点のアメリカ人シンガー、作曲家、プロデューサー、そしてパフォーマンスアーティストの顔を持つライラ・プラムク。10代の経験がその後の人生にどう影響したのか。よく晴れた日曜日の午後にスタジオを訪れ、彼女のストーリーを紐解いた。(→ in English


ーー14歳のときはどんな子でしたか?


ライラ「アメリカ・ペンシルバニア州のホリデーズバーグっていう小さな町で育ちました。田舎町で、周りにはたくさんの農場や高速道路があるんです。14歳になってから5年間アイスクリームショップで働いてたことを覚えてますね。あの頃は二重生活を送ってたんです。外ではみんなを楽しませるために演じる必要性を感じて、ジョークを言うとか、とても社交的でいるよう努めてて。でも、実際はとてもシャイでみんなに見せられない部分がたくさんありました。異なる2つのキャラクターで過ごしていた時期です」


ーー14歳のときにどんな24時間を送っていたか、円グラフに書いてみてください。





ーーでは、14歳のときにどんなことを考えていましたか?





ーー当時の思い出でよく覚えていることがあれば教えてください。


ライラ「かなり空っぽでただただ時間の経過を感じてました。自分の部屋で過ごすときはビデオゲームばかりしてましたよ」


ーーどんなビデオゲームをしていましたか?


ライラ「オンラインロールプレイングゲーム、MMORPG(多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)にかなりハマってました。夏には1日10時間も遊んでて。自分のキャラクターを作って、他のプレイヤーたちと一緒に遊ぶんですよ。ゲーム内では、自分とは違う他の誰かになれますし、他のプレイヤーたちもそれぞれのキャラクターを演じてます。わたしはその空間にクィア理論の基本的概念を築きました。彼らが彼らだという存在を信じるべき。あなたが思うあなたを探すってね。そんな空間がとても大事で、今日までの人生においてビデオゲームカルチャーの解釈を見出せたと思います」


ーー円グラフを見たところ、いろんな活動をしていますよね。


ライラ「スポーツをすることって社会的に大事だと思ってました。スポーツをしてると、どういうわけかみんなに尊敬されるじゃないですか?だからわたしもしてましたね。あと、学校のオーケストラと合唱団にも所属してたんですが、本当に楽しくて学校での生活のハイライトでしたね。チェロを弾いてるときに木箱の振動を感じる。そして、周りの20人全員が音を奏で、全員の体が振動してる。まさにみんながひとつになるフィジカルな体験でした」





ーー14歳のときに抱いていた夢は何ですか?


ライラ「音楽と想像力を生かした何か。自分の人生について夢を見たり想像したりしてました。どこへ行ってどこに住むのか、何ができるのか?あと、この小さな町から抜け出すことも夢見てましたよ。最初のステップは脱出すること(笑)」


ーー今の職業に就いた経緯とは?


ライラ「5〜6歳の頃からずっと歌ったりパフォーマンスしたりしてます。高校を卒業した後にニューヨークの音楽大学へ進学、そこで学生のコンテンポラリー・ミュージック・グループに所属して、実験音楽をたくさん知るようになりました。3年ほど音楽図書館でも働きましたね。大学時代はたくさんの音楽とパフォーマンスを手掛けたんです。それからベルリンへ移って、クラブやアンダーグラウンドなクィア・シーン、興味深いパフォーマンスにのめり込みました。すべてのエレメンツを集めて、そこから何かを作り上げようとしてましたね」


ーーそのために行った努力はありますか?


ライラ「たくさん。大学時代は毎日3〜4時間音楽や歌を練習しましたし、今もまだ忙しくしてますよ」





ーー14歳のときに影響を受けた、大好きだったものはありますか?


ライラ「『ディアブロⅡ(2000)』。5人の異なるキャラクターから選んで、スキルを磨いたり、武器を得たりするんです。サウンドトラックはかなりゴシックかつ怖くてセクシー。実際のところゲームは自分のパーソナリティを見つけるのを助けてくれました」


ーーユースにもおすすめできそうですね。


ライラ「ええ、もちろん 🙂 」


ーーちなみに当時はどんな音楽を聴いていましたか?


ライラ「14歳を過ぎてからたくさん音楽を聴くようになりましたし、より習慣的にインターネットにアクセスするようになりました。中でもロシア人作曲家セルゲイ・プロコフィエフにかなり夢中でしたね。彼の生み出す音楽は本当に壮大でダーク、だけどおかしくて。とても美しく、そしてクレイジー。あとはレジーナ・スペクター。今ではかなり有名ですよね。M.I.Aにもハマってましたよ。プロコフィエフのような一風変わったクラシック音楽、実験的な女性ソングライターやポップ系ミュージシャンの虜でした」



Sergei Prokofiev “Piano Concerto No 3”



ーーいま14歳を生きている人たちに知ってもらいたい作品があれば教えてください。


ライラ「トランスジェンダー界のパイオニア的存在であるケイト・ボーンスタインが書いた『Hello Cruel World: 101 Alternatives to Suicide for Teens, Freaks and Other Outlaws (2006)』。わたしは20代半ばでこの本を読みましたが、最高にクールで14歳の頃に出会いたかった1冊。”自分のアイデンティティや人生において何か上手くいかないと感じたら、コンピューターのようにオペレーティング・システムをアップデートする必要がある”ってケイトは綴ってるんです。世界が変わるように私たちは変わるってことですね」


ーー素晴らしいレコメンデーションですね! 自分らしくいるために心がけていることはありますか?


ライラ「直感を信じること。自分の考えを変えて、自分自身を超えて成長できるんだと想像できるようにする。もし自分の直感を信じられないなら、そこにはベースも根拠もありません。でも直感を信じれば、それを超越して想像することができますよ」


ーー最後に何かお知らせがあればどうぞ。


ライラ「今、新しいリリースを控えてます。まだあまり多くを語れませんが、世界中に新作をシェアすることがとても楽しみ。ぜひツアーで香港や中国、台湾へ行きたいですね。もちろん日本も!年に2回のペースで行きたいくらいです」








photography Tereza Mundilová
text Yukiko Yamane


Lyra’s outfit by Ottolinger


Lyra Pramuk
www.lyrapramuk.com
@lyra.pramuk:https://www.instagram.com/lyra.pramuk/
https://soundcloud.com/lyra_songs

This interview is available in English

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