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芸術か、猥褻かーージムノペディに乱れる

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芸術か、猥褻かーーそんなセンセーショナルな言葉と共に語られ、 ‘71年から 88年まで昭和の日本文化に深く浸透してきた映画レーベル「ロマンポルノ」が復活する。その第一弾として放たれるのが行定勲監督作『ジムノペディに乱れる』だ。エリック・サティの名曲「ジムノペディ」をフィーチャーしながら、ひとりの男と女たちが身体を激しく重ね合せる様を艶かしく、かつミステリアスに描き尽くす。

「低予算による短期撮影。10分おきに絡みあり」。行定監督は従来のルールを遵守しつつ、この異様なラブストーリーを巧みに織り上げてみせる。主人公の“売れない映画監督”を演じるのは板尾創路。彼の哀しげな瞳で見つめられる可憐な女性陣には芦那すみれ、岡村いずみ他。一週間に及ぶ放浪で男の周囲には万華鏡のような相関図が彩られていく。その果てにたどり着くひとつの真相、そして決壊したように吐き出される主人公の思いが、胸を強く揺さぶってやまない。
 
エロスを切り口としながらも、ストーリーをきちんと集約させて観客を着地点へいざなう。本作のそうした流儀は、まさにロマンポルノの伝統を踏襲するものと言っていい。観客はこの結末を男の泣き言と笑うだろうか。あるいは思いがけず板尾に共感してしまうのか。何かと自主規制で縛られがちな現代社会が、この一周巡って生まれ変わった潮流をどう受け止めるのかにも注目したい。


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text Atsunobu Ushizu



行定勲監督『ジムノペディに乱れる』
11 月 26 日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
出演:板尾創路、芦那すみれ、岡村いずみ

1 週間―。映画監督の古谷は、肌のぬくもりを求めて女たちの隙間を彷徨っていた。仕事、名声、そして愛 …全てを失った男が、辿り着いた先に見つけたものとはー?ラブストーリーの名手・行定勲監督が、切なく 不器用な大人の愛を、美しい映像にのせ官能的に描いた入魂の一作。


© 2016日活

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