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text by Maya Lee

Craft Curiosity Issue : Molley May「自然を見て、その圧倒的な混乱と美しさを捉えたいといつも思う」




フィジカルな距離を求められる今、オンラインに没入する時間が増加傾向にある。情報収集や人との繋がりはもちろん大切だが、同時に自身を落ち着いたオフラインの環境に置くこともまた重要だ。自分が求めるものや喜びを感じるものを、己の手を動かして創り上げる時間は、ストレスフルな時代を生き抜くための術でもある。NeoLではハンドメイドのアートで人々を魅了する作家の作品を紹介するとともに、ものづくりの時間へ誘う。
特集の最終章を飾るのは、イラストレーターのMolley May。自然を愛し、ドローイングを愛する彼女の、繊細でいて伸びやかな筆致は観るものの感情や郷愁を呼び起こす。その日の気分でマテリアルを選び、そのマテリアルに沿って描くーー創作はそんな風に身近な友人のような存在なのだ。

→ in English)

――あなたが自分のスタイルを確立したのはいつ頃でしょうか。どのようにして自分のスタイルに確信を持てたのでしょう。


Molley May「私は“スタイル”という概念を信じていないんです。それよりも、どういう風に形づくって整えていくのかというコンセプトを見つけたのだと思います。物心ついたときからずっと絵を描き続けているのですが、スタイルにこだわらないようになって、自然と自分のものだという印のようなものが作品の中にできていったときから自信を持って表現をしていくようになりました」


――ソーシャル・メディアがスタイルやファッションの流れを決めているように思える今、自分のスタイルを保つためにどうしていますか。


Molley May「ファッショナブルなアートやドローイングを制作するつもりはないので、絵との繋がりを感じながら描くだけです。特定のルックを維持することが常に重要であるとは限りません。好きなだけ実験して好きなだけ遊ぶことも重要なんです。
これはファッションにも当てはまると思います。トレンドをあまり見ないのですが、マイクロトレンドが台頭してきているのはとても心配。私はいつも自分を反映しているようなものを見つけたり、つくったりすることが好き。たとえば、私は16歳のときにヴィンテージ・マーケットで買ったベビーブルーのレースの洗礼ドレスを今でも着ています(もう10年以上も前なんですね!)。私たちがパーソナルなスタイルをつくり出すときに焦点を当てるべきは、その命を存えさせるということでしょう」





――あなたの作品は繊細であたたかみがあり、リアルさがあります。あなたの作品を形づくったのはどのような過去の経験なのでしょうか。


Molley May「私はいろんなことに共感を覚えるし、全てのことをとても注意深く眺めるのが大好きな優れた観察者でもあるんです。そういう点が自分の生き方や絵の描き方に大きな影響を与えていると思います」


――デイジーにて何度かワークショップを開かれています。教えることでご自分の視点も何か変わったりしましたか。


Molley May「教えるということはいつも非常に特別でユニークな体験で、本当に光栄なことだと思います。自分の知識や経験が実際のところどれくらい蓄積されているかが分かりますし、他の人がその知識や経験をどれくらい聴きたがっているかも実感できます! このワークショップの私なりの目標は、何か可愛いものをつくることではなく、絵を描くことの喜びをわかってもらうことなんです」





――作品の多くは鉛筆とパステルで描かれていますね。


Molley May「素材こそが全てです! 私がつくるもののほぼ全てがその日に選んだマテリアルによって決まります。パステル画はスケールが大きく、本能的なイメージですが、つけペンを用いることでより緻密で繊細な味わいにもできます」


――花と人が大きなテーマのようですが、どうしてこの2つがあなたの中で結びついているのか知りたいです。


Molley May「田舎で育って、常に植物がたくさんある家にいたので、自然と植物は私のスタイルに大きな影響を与えているんだと思います。植物や揺れ動き、変わりゆく自然を見て、その圧倒的な混乱と美しさの感覚を捉えたいといつも思う。そうした姿は時に人間の感情にも反映されるのだと感じます」





――あなたの作品はとても繊細ですが、アーティストの感度というのは時間と共に変化すると思いますか。


Molley May「そうではないことを祈ります。私は繊細で感じやすい人間で、とても深く受け止めてしまうから難しい時もありますが、寛容さも常に持ち続けたいですね」


――意味を持つ作品を制作することはアーティストにとって重要だと思いますか。


Molley May「アートには必ずしも意味は必要ではないと思います。私の作品の多くは観察の上で成り立っているもので、カタログとしてしかほぼ意味は成さないかもしれない。でも絵との結びつきを得ることはできるから、メタフォリカルな視点での意味に沿うことはできるのではないでしょうか」


――人々はあなたの作品を通してあなたを認識しますが、あなたにとってドローイングはどんな意味を持ちますか。


Molley May「私はドローイングとずっと共にありました。深いレベルでどんな意味を持つかはわかりませんが、ドローイングは人生や目的を理解するための導きや助けになってくれています」





――自分のイラストのスタイルがファッションにも繋がっていると思います?


Molley May「あまり考えたことはなかったけど、確かにそうかも。オイルパステルと鉛筆の間でスウィングするのと同じように、その日の気分でたくさんの白もたくさんの色も身につけます。衣装を身につけるときは肌触りや細かな部分にもとても注意して選ぶのですが、それもまさにドローイングでやってることです」


――アートスクールでの経験はどのようにあなたを形づくったのでしょうか。


Molley May「アートスクールに戻れたらもっと頑張りたいですね。当時大好きだったイラストレーションの学位を取得しましたが、芸術や絵画の学位を取得する自信がなかったため、クールな気分でもいい気分でもありませんでした。私はイラストが大好きで、今でも自分をイラストレーターと呼んでいます。コマーシャルアートから離れて、実践について多くのことを学び、さらにイラストレーションに対する愛情が深まりました。
アートスクールでの経験はコンテンツという枠を超えて貴重なものでした。自分何者であるかを学ぶ契機となったのです。学校ではいつも自分をアウトサイダーのように感じていて、友達もあまりいなかったのですが、自信を持って作品をつくれるようになったら突然周りに人がやってくるようになったんです」





――パンデミックで何か影響はありましたか。作品へのアプローチが変わったなど変化があれば。


Molley May「パンデミックのトラウマは少しだけマシになりました。何ヶ月も創作に苦悩したし、加えて財政的にも大きな打撃があったんです。そしてそれは私だけに起こったことじゃなく、残念ながらたくさんの友人たちも同じような状況です。そのためにパートタイムの仕事を再開したばかり。社会構造や日々のルーティーンが以前のように戻る手助けとなってくれてばいいなと願っています」



――近い将来の目標のようなものがあれば教えてください。


Molley May「人々の記憶に残る作品をつくりたい。人々が作品を観て、とても大切なものに触れたような感情の渦に襲われているのを見るのがとても好きなんです。役に立たないように思えるかもしれないけど、私は人々のその感情のために創作を続けていきたいです」





text Maya Lee (IG)


Molley May
Drawing and looking. Multi-media illustrator and artist.
https://www.molleymay.com
https://www.instagram.com/molley.may/

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