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赤い公園『猛烈リトミック』インタビュー 後編

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―ところで、そうした楽曲の仕上がりや内容云々とは別に、いかにして作品を手に取ってもらうか、どうやってアルバムをリスナーに届けていくか、みたいなところで、考えたり悩んだりすることはありますか?

津野「あー、それは考えますね。こういう取材のときも、何話したらいいんだろうかって思いますけど……できたもののこと話すのって難しいじゃないですか(笑)、結構。でも、作品ができたときの『やっとできたぞー! つくったったぞー!』っていう爽快感というか、あれがプロモーションを続けていくことで、『疲れた……』って、そういう気持ちに変わってしまうのは嫌なので。だからスタッフにも『いやちょっと、イベントとかちゃんと考えてるんすか?』とか、『(机をトントン叩いて)発売日近いんすけど?』って、そういうところは詰めながら、アルバム自体も作っていってましたね。で、それは(『猛烈リトミック』が)いっぱい届いてほしいって思いからで。これは聴いてもらわないといけないから、聴いてもらうために作ってるようなものだし。聴いてもらえるために作ってるようなものだから自分たちも聴いていて楽しいし、ほんとにいいアルバムだと思うから、こういっぱいの人にとりあえず届いて、で、盤を受け取ってくれたら、あとはもう、ほんと自由に聴いていただいていいかなーと思って。“NOW ON AIR”を聴いて、『わー、すごい暗い歌!』って感じる人も――そいつはたぶんほんとに頭がいおかしいと思うけど(笑)――いるかもしれないしね」

佐藤「いやーでも、一曲一曲、レコーディングが終わるごとに『これをA面にしようよ!』って、みんな本気で言ってたぐらいに、もう全部いい曲だから。だからなんだろう、どこかでアルバムを聴いてもらって、その上で『赤い公園、合わないわ!』って言われるんだったら、ぜんぜんなんか、「こちらも合わないわ!」みたいな感じで行けるけど(笑)、でも、聴いてもらえないとか、『えっ、赤い公園、アルバム出してたんだ!?』ぐらいの、存在すら知られてもらえないというのは、すごくもったいないなと思うバンドなので。今までももちろんそうなんですけど、だからなんとか自分たちで『どうしたらこれ売れるんだろう?』とか、『どうしたら赤い公園って存在を知ってもらえるんだ?』ってところも考えた結果、やっぱ“入り口”が広くあるべきだなって思って」

―“入り口”ですか。

佐藤「だから最近は、音楽以外のことでも、みんなでテレビで面白いことを言ったりだとか、少しでも可愛く写れるようにみんなで写真の角度を研究したりだとか(笑)。でも、なんかそれに対して、『赤い公園、どこに行っちゃうんだろうな?』みたいな人はやっぱりそりゃいるけど、それでこう、『面白いな、ちょっと気になるな』とか、『あ、可愛いな、気になるな』とか、プラスに働いていることが多くて。だからほんとに、でもそれはすべて、やっぱり赤い公園という存在を知ってほしくて、『猛烈リトミック』を聴いてほしいってことに繋がると思うので、その“入り口”をどんどん広げていきたいなって思いですね。赤い公園って知ってもらったらやっぱり調べるだろうし、調べたら『猛烈リトミック』が今は一番宣伝しているものなので、どうしても目につくだろうし。そういう感じでやっていきたいなって思います」

津野「運営、ですね(笑)」

―たとえば、今回の『猛烈リトミック』を作るにあたって、それこそ“Joy!!”で赤い公園のことを知った人にもアルバムが届くように意識していた部分もあった?

津野「いやー、もうぜんぜん、私、自分のバンドのことで精いっぱいなので(笑)。ぜんぜん意識してなかったですけど、でも、赤い公園としては、そういう、自分が誰かに曲を提供したからってそれがバンドに直結してっていうことではなくて、赤い公園は私ひとりじゃないし、4人いてバンドなわけで。で、私ひとりの場合よりも、もっと明るいところに曲が行った方が面白いなっていうのは、ずっと思っていました。ただ、それに自分の技量が追い付かなかった部分だったりとか、自分たちの頭や心が追い付かなかった部分だったりがあったんですよね。それで、今回ほんとに、いろんな人たちと音楽をやって、みんなで楽しく気持ちよく作ったものが結果、こういうことになっているので、なんかいい方向に向かってるんじゃないかなと思います。その……“バンド”だって別に把握してほしいわけでもないし、女の子だろうが男の子だろうが、若かろうが、ギターが歪んでいようが歪んでなかろうが、なんか『いい曲だなーって思ってもらえたらいいなー』って思って、作りましたね」

―最初の方の質問で、『猛烈リトミック』の方がやりたいことに近づけたって話していましたけど、あらためて、そのやりたかったことっていうのは?

津野「これはほんとに、『4人揃って、いい曲をやる』ってことなんで」

―それと、そのいい曲を多くの人に届けたい?

津野「うん、そうですね。もったいない、いいバンドだと思うので、自分たちのことを。前は、自分たちのことを、自分たちで『こういう人なんですよ』ってやろうとしてたんですけど、『自分たちはこういう人間なんです、こういうバンドなんです』って言うには、ぜんぜんまだ早かったかなって感じですよね。自分たちがどういう人か、自分たちでもわからなかったんですよ。手に負えなかった。でも、自分たちがなんとなく面白い人たちなんだっていうのは、こう、頭ではなく身体で感じていて。それが今回、他人によって整理された感じですね。それと、やっぱりポップネスは大事だと思うので。それがなくて、面白いだけのバンドだとは、もう思われたくないなって」

―“面白いだけのバンド”?

津野「そう。“面白い”より、“いい音楽”の方が、音楽的な方がいいなって思います」

―赤い公園って、音楽好きな人の耳を引くバンドってイメージが自分の周りではありますけど、面白いだけ、なんて思われていると感じることあるんですか?

津野「ありますねー、ぜんぜん。それは、自分にも自信がなかったからだと思うんですけど。でも、今回はやっぱり、自分たちもJ-POPが大好きで聴いて育ってきて、せっかくこういう日本でバンドをやってて、せっかくこんな意味がわからないメンバーが集まっている私たちが、ロック・バンドだとかどうとかそういう垣根を越えて“歌”として機能するものを演奏しているっていうのの方が面白いなって、なんか思ったんですよね。で、そうじゃない曲は、できるときにはできるし、そういうポップな曲の方が作るのは難しいんですよ。だから、ポップな曲ができる人間はやったほうがいいなって、うん」

―その、音楽を作り出す発生源みたいなところは『公園デビュー』の頃と変わらず?

津野「曲によりますね。でも、『こういう曲が書きたい』と思って書けるようにもなったし。ただ、それは毎回自由にできるわけじゃないから。たとえば、それこそ“108”とかは、もうほんとに歌詞もアレンジも一筆書きで、『こういうことだろー! わー!』って書いた感じもあって。だから、それは両方持ってていいかなって思いますね。そればかりだと間に合わないときもあるじゃないですか。間に合わなくても作らなきゃいけないときに、やっつけじゃなくて、こっちでもちゃんとできるぞっていうのを持っていた方が、どっちもあった方が面白いなって思います。そういえば、“108”のとき、蔦谷さんが『こんな“お釈迦ソング”、聴いたことない!』って(笑)。『ファンキー釈迦ソング』だって(笑)」

(前編はこちら)
(中編はこちら)

撮影 吉場正和/photo  Masakazu Yoshiba

文 天井潤之介/text  Junnosuke Amai

編集 桑原亮子/edit  Ryoko Kuwahara

 

 

赤い公園

高校の軽音楽部の先輩後輩として出会い、佐藤、藤本、歌川の3名によるコピーバンドにサポートギターとして津野が加入。2010年1月結成。東京:立川BABELを拠点に活動を始める。2012年2月ミニ・アルバム『透明なのか黒なのか』をEMIミュージック・ジャパン(当時)より発売。2012年5月ミニ・アルバム『ランドリーで漂白を』発売。約半年の活動休止を経て、2013年3月1日活動再開を発表。5月5日から復活祭と称したツアーを東京/名古屋/大阪で実施。全公演ソールドアウト。2013年8月14日1st FULL ALBUM『公園デビュー』発売。作詞・作曲・プロデュースを務める津野の才能がアーティスト・クリエイターから注目を集めており、SMAP「Joy!!」の作詞・作曲、南波志帆「ばらばらバトル」などの作詞・編曲等の楽曲提供を行うなど、活動の幅を広げている。

http://akaiko-en.com/

 

 

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赤い公園

『猛烈リトミック』

発売中

http://www.amazon.co.jp/猛烈リトミック-赤い公園/dp/B00M20E65Q

https://itunes.apple.com/jp/album/mouretsu-rhythmics/id912742335

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