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サーストン・ムーア『ザ・ベスト・デイ』インタビュー

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―とても充実されているようですね。

サーストン「そうやって様々な分野で活動する機会に恵まれて、そうした機会を最大限に利用させてもらってる。たとえ望んでたとしても、なかなかこういう機会に恵まれない人達のほうが多いんだろうし。だから、自分が今こういう機会に恵まれたのも、何かの縁だろうと思って、ありがたく仕事させてもらってるよ。まあ、1年くらい誰にも気づかれずにパリかどこかに雲隠れしたいと思ってても、顔が知られてる身なんで完全にフリーってわけにもいかないだろうし、常に何かしらしてたいタイプだからね。ただ、自分ではそんなに忙しくしてるって感じもしないんだけど……政治家なんかと比べたらさ(笑)。政治家なんかのほうがよっぽど忙しいって(笑)。ごめん(笑)、やけに長い答えになっちゃったけど(笑)」

―(笑)それこそニューヨークにいた頃は、よく若手のバンドのライヴを観に行ったりとかされていたと思うんですが、現在住まれているロンドンでも、そういう機会はひんぱんにある感じですか?

サーストン「いや、前ほど若手のバンドのライヴを観に行くことはないかな。なぜかというと……自分がライヴに求める音楽体験っていうのが変化してきたこともあって。同じ即興音楽でも、より実験的な要素の強いものだったり、作曲家による音楽だったり、ノイズ・ミュージックのほうに今は惹かれるんだよね。ロックンロール・バンドに関しては、興味はあるんだけど、実際にライヴに行くと、最近はどうもバツが悪いというか。それは55歳という年齢のせいでなくて(笑)、自分がソニック・ユースのメンバーとして顔が割れてるからで、プライベートまで土足で踏み込まれるとね。ただ普通にしてるだけなのに驚かれたりして(笑)、そういうのにうんざりしてるところもあるし。だから、最近は地味なクラブで、あんまり有名でないバンドを観てることのほうが多い。あくまでも自分のプライベートな楽しみとしてライヴを観ていたいから。ただまあ、大抵の人はそっとしといてくれるけど、酔っぱらいとか、一番面倒臭そうだなって思う奴に限って話しかけてくるんだよ(笑)。幸い、今の時代はYouTubeだの何だので気軽にライヴの様子がチェックできることもあるし。ブルックリン出身のバンドでロンドンにしょっちゅうライヴに来てるバンドでParqete Courteってバンドなんかいいよ。ただ、いざライヴに行くとなると、覚悟がなあ……まわりからジロジロ見られたりするからさ。こないだもスワンズのライヴに行って。スワンズは古くからの友人だし、自分も昔スワンズで演奏してたことがあったくらいだし。ただ、会場があまりにもお客さんでいっぱいで、落ち着かなくなってさ。そしたら案の定、トイレに行く途中、若い奴が興奮して話しかけてきた上に、キスまでしてきてさ(笑)。そんなんで、最近はライヴから足が遠のいちゃってるんだよ(笑)」

―なるほど(笑)。

サーストン「あ、でも、ロンドン出身のTrash Kidsっていう3人組の女の子はおすすめだ。今は観たいバンドがいたら、自分がライヴをやるときに呼ぶほうが多いけどね。それなら安心して観れるから」

―そういえば最近、イギー・ポップやニック・ケイヴと共演したガン・クラブのカヴァー“Nobody’s City”が公開されましたけど、これはどういう経緯で?

サーストン「ニック・ケイヴ&バッドシーズでドラムをやってるジム・スクラノヴスが、今は亡き(ガン・クラブの)ジェフリー・リー・ピアーズのトリュビュート・アルバムを仕切ってた縁でね。いろんなミュージシャンに声をかけてカヴァー曲をやろうってことで、自分のとこにもギターを弾かないかっていう連絡があったんだ。ジムが今住んでいるロンドンのスタジオで……ジムとはニューヨーク時代からの付き合いで、それこそ70年代にジムがティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークスでベースを弾いてたときからの知り合いなんだ。ソニック・ユースのセカンドの『コンフュージョン・イズ・セックス』でもドラムを叩いてくれてるし、今はバッドシーズのドラマーとして活動してて、奥さんとロンドンに住んでてさ。とにかくまあ、2人ともジェフリーと付き合いがあって、80年代なんかは頻繁に交流してたんだ。その縁で自分もギターを弾かせてもらってるんだけど、基本的にテープで録音してるんだよね」

―顔を合わせてどうこう、って感じではなかったんですね。

サーストン「ニックとイギーは隣の部屋でどんちゃん歌ったり騒いだりしてたのかもしれないけど(笑)、自分は残念ながらその場にはいなかった。ただ、同じ曲に参加してるだけで、3人でつるんで酔っぱらってヘロインきめてっていう感じではなかったよ(笑)。酒やドラッグで相当イっちゃってる中で、さぞかしクレイジーなロックンロールを鳴らしてたんだろうって想像してたかもしれないけど、そんなことは決してなく(笑)、スタジオで普通におとなしくレコーディングしてただけだよ(笑)」

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