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『マエストロ!』松坂桃李インタビュー

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──この映画自体が、クラシック音楽に対するイントロダクションになっている気がするんですが、演じてみて松坂さん自身の“クラシック観”が変わった部分ってありました? 

松坂「すごくありますね。それまで僕の中で、クラシックというのは“芸術として完璧に構築されたもの”というイメージがあったんです。もちろん実際にそういう側面はあると思うんですけど、でも今回『マエストロ!』に出演して、そこに辿りつくまでの過程みたいなものを疑似体験させてもらって……。変な表現ですが、『あ、クラシックってこんなに人間くさい音楽だったんだな』と思いました。どんな一流のオーケストラでもきっと、楽団員それぞれが血眼 になって、1つの曲に取り組み、没頭してるんですよね」

──そこにはたしかに、人間がいると。

松坂「そうなんです。そもそも18〜19世紀にベートーヴェンやシューベルトが作った楽曲が今でも演奏されている理由は、正解がないからだと思うんです。曲に込めた本当の思いは、作曲家本人じゃないとわからない。それを、それぞれの時代に生きている指揮者やコンサートマスター、楽団員たちが『これが正解なんじゃないか』と悪戦苦闘して……。もう1つの真実を作りだしていく。過去からの挑戦状を受け取って、次世代に繋ぐというのかな(笑)。それが映画の中に出てくる『誰かと響き合えたら、音楽の一瞬は永遠になる』という言葉にも繋がっていくのかなと。真実というのは見つけるだけじゃなくて、作り出す側面も大きい。その意味では、役者という仕事にも似てるかもしれませんね」

──いくつか重要な曲が出てきますが、特に気に入ったパートはどこでしょう?

松坂「やっぱりベートーヴェン作曲『運命』の第4楽章ですね。クラシックの交響曲は、ちゃんと起承転結があるんです。なかでもこの曲の最終楽章はすごく心が躍るというか、僕にとっては心を揺り動かされるメロディーでした。演ってる最中もすごく燃えましたし、いま思い返してもぐっときますね」

──一風変わった指揮者・天道徹三郎を演じた西田敏行さんとは、今回が初共演ですね。演奏シーンで対峙してみた印象はいかがでした?

松坂「もう圧倒的でしたね。指揮者のオーラを身にまとって指揮台に立たれた時の存在感がすごい。演じながら目を離せないというか……。身体全体や目線を駆使して、『俺が演りたい“運命”はこうだ!』という意志をバシバシ伝えてくださるんです。具体的には、微妙にワンテンポ速い指揮でぐいぐい攻めてくる。なのでこちらも演じながら、『わかりましたぁ!』みたいな(笑)。その仕掛けから目が離せなくて、刺激的でした」

──それも踏まえて、『マエストロ!』という作品に出て良かったことは何でしょう。

松坂「たくさんありますが、一番大きかったのはクランクインの1年前から作品に携われたことです。その期間中は、ヴァイオリンを見たり触ったりするたびに『マエストロ!』という作品の意味や香坂の人物像について考え、作品と向き合う時間を濃厚に過ごすことができました。もちろんプレッシャーもありましたし、スタッフの皆さん本当に大変だったと思うんですが、妥協せずに作ることができたのは僕の中では貴重な財産になっています。あのコンサートシーンは、もう二度とできないんじゃないかなと思います。全キャスト、スタッフの集大成と言ってもいいくらいです。監督が本当にこだわりぬいて、ようやく完成したシーンになっています」

──では最後に、NeoL読者にリコメンドの一言をお願いします!

松坂「1800円でクラシックのコンサートが体感できるのはお得だと思うので、ぜひ劇場に来ていただきたいです。本番に加えてオーケストラの裏側も全部見せてくれます(笑)。最高の演奏と人間ドラマが一緒になったような、盛りだくさんな作品なので、これを機会にクラシック音楽と親しんでいただけるとすごく嬉しいです」

 

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『マエストロ!』

1月31日(土)全国ロードショー

公式サイト: http://maestro-movie.com/

配給:松竹/アスミック・エース

(C)2015『マエストロ!』製作委員会

(C)さそうあきら/双葉社

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監督:小林聖太郎(『毎日かあさん』)

脚本:奥寺佐渡子(『八日目の蝉』)

原作:さそうあきら「マエストロ」(双葉社刊)漫画アクション連載

出演:松坂桃李、miwa/西田敏行ほか

 

 

 

 

撮影 田口まき/photo  Maki Taguchi

文 大谷隆之/text  Takayukii Otani

スタイリング 伊藤省吾/styling  Shogo Ito

ヘアメイク INOMATA/hair & make-up  INOMATA(&’ s management)

編集 桑原亮子/edit  Ryoko Kuwahara


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