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Chara『Secret Garden』インタビュー(前編)

――ソウルはリスナーとして今でも良く聴いているんですか?

Chara「そうですね。元気を出したい時に、車の中でヴァレリー・カーターの『Ooh Child』をかけて一緒に歌ったりとか。ふり幅の広いダイナミックな曲なので。ミニー・リパートンも、有名な『Lovin’ You』ではなく『Perfect Angel』や『Inside My Love』だったり、同じようにふり幅がちょっと広い曲を、良く一緒に歌ってますよ」

――Charaさんの場合、ソウル=パワフルなヴォーカル・スタイルという端的な認識がある中で、全く違うアプローチをしていますよね。全体的な音色やグルーヴで圧倒的なソウル感を醸していて、すごく難易度が高い。

Chara「だって、自分という楽器にそういうパワフルなソウルの声があるかと言えば、そうじゃないから。でも私が一番好きなのは楽曲を作ることだし、そこから、自分が歌うならどの声で歌えばいいのかを見極めて、私というヴィンテージの楽器を操るってことを、“Charaプロ”はわりと自然にやってます。例えば今回はあまり地声を使っていなくて、中声とウィスパーを主に使ってますね。自分で全部ある程度アレンジをして、色々判断して行くので、純粋に自分に基いていればいい。自分をどうさらけ出すかっていうところで、頭の中で、他人には見えない音のお絵描きをやらなくちゃいけないんですけど、それを素直にやれる勇気みたいなものは持っているから(笑)」

――そして、結果的に大好きなソウル・ミュージックのフィーリングが強調された、と。

Chara「まあ、それは人が判断するもので、私にとっては内側の秘密を出しているような感じなんですよ。内側に溜まっている悲しみや喜びとか、色んな点が付いたものが、楽器を持ったりした時にわーっと出てくる。ひどい時は……というか、むしろいい時って言えるのかな、歌いながら泣いてたりしますから。ちょっと儀式みたいになっちゃってイヤなんだけど(笑)、それくらい純粋に自分が出ているんだってことに後々気付いたりして、面白いなと思ったりするんです。でも、そういう風にやろうと思って出来ることじゃないし」

――“儀式”という捉え方は面白いですね。

Chara「なんか神秘的な感じはするよね。もちろんソウル・ミュージックひとつとってもそうだし、今までに影響を受けたミュージシャンや作曲家や色んな演奏家がいて、私はそこに点を付けてもらっているから、自分もそこにつながって、音楽を出せる。先輩方に出して頂いて、私はそれに憧れて、心を揺らされた。そういう経緯があってこそ、うまくつながったんでしょうね。だから自分自身も点を付けたいなっていう想いがある。そういう意味で、このアルバムはタイトルに“secret”という言葉が使われているのも面白いし、もうひとつの“garden”という言葉は非常に女性っぽい感じがするし、自分の声を使ったり作曲することを通じて表した、私の女性としての人生そのもの。女という職業そのものってこと」

――だから子宮というイメージにつながるわけですね。

Chara「子宮って女の人にしかないから、男の人には“子宮でものを考える”みたいなことは分かり難いかもしれないけど、男の人もみんなそこにいたんだよね(笑)。それもまた面白いし、私が誰かに伝えたくて書いていたものが、結果的には聴いてくれるほかの人のものになったり、共有してもらえるところがまたすごい。見ず知らずのたくさんの女性のために書こうとは全然思ってないのに、“それを意識しているんですか?”と訊かれることがあって、“いや、全然”みたいな。本当に自分の内側の秘密を、自分が素晴らしいと思ったことを、出しているだけ。“これは素晴らしいね”とか“この言葉を私は気に入っているよ”とか。言葉は一度出したらひっこめられないので、責任を持って出しているけど、それがそんな風に受け止められるのは面白いなって」

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