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古舘佑太郎 青春群像短編小説 第三回「青春の象徴 恋のすべてvol.2」

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 「青春の象徴 恋のすべてvol.2」

心揺さぶる音楽との出会いは、時として魂さえも揺らしてしまう。

「今までどこにいたの?どこで生まれ、どこから来たの?」

と質問をしたくなるほど、突然目の前に現れて、その癖、そこに運命的な何かを感じてしまうから不思議だ。古い曲、懐かしいメロディ、思い出のリリック。彼らとの再会にも勿論、感傷は揺れてしまうものだが、往々にして新しい出会いに勝るものではないだろう。人間関係がまた、そうであるように。

僕ら人間は、バックミラー越しの景色ばかり美しく映り、ずっと眺めていたいと感じてしまうことの多い生き物だ。その中でも僕は、”過去ばかり振り返る”世界選手権では、結構上位に食い込むのではないか、と自負している。何の自慢にもならない勲章だ。しかしながら、どんなに最強と言われた選手だってたまには負ける。そう、前提は時として、ひっくり返るのだ。ここにこそ、僕らが音楽を探し求め、砂漠を旅し続ける理由があるのではないだろうか。

バックミラーに映る世界では、こんな素晴らしい音楽は流れているか?きっと永遠に流れることはない。前に向かって走り始めた今の自分のみこそが与えられた、喉潤う飲み水である、と僕は思う。

 

新たな出会いを求めるからこそ、世界は変わっていくのだ。

 

幼稚園にやっと入園した僕は、年に一度だけお遊戯会にやってくる巨大なウルトラマンの着ぐるみが怖くて小便を垂れ流すこと以外は、順調に生活を送っていた。幼稚園では、姉二人のスパルタのお陰もあって、だいぶマセた4歳児だった。クラスでは、誰よりも誕生日が早かったことも重なり、皆より早く走ることも出来たし、知ってることも多かった。流石に、小鳥小屋で飼われていたインコ同士が喧嘩をして血が流れていたのを目撃して、

「こいつら生理が来たんだ!」

と大声で叫んだときは、その夜、園長先生から家に電話が来た。母親は、電話越しに仕切りに謝っていたが、受話器を置くや否や僕に向かって、

「鳥と人では少し世界が違うのよ。」

と一言僕に伝え、ゲラゲラ笑っていた。怒られなかったので、よくわからないけど僕は喜んだ。

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