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『ピンクとグレー』行定勲×後藤正文×山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)インタビュー

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行定「僕は本来、映画に押しつけがましいメッセージは要らないと思ってるんです。物語の中で起きた出来事をそれぞれが受け止めればいい。でも『ピンクとグレー』に関しては、作品を観終わった人が、その先どこまで歩いていけるかが気になったんですね。メッセージというほど大袈裟なものじゃないけど。中島裕翔くんが演じた主人公が最後の最後に言うセリフの、その先に広がっていく未来を、何とかして肯定してあげたかった。その思いをリレーしてくれる曲がどうしても必要だなと」

後藤「そこは加藤シゲアキさんの小説とまた違う、映画版ならではの部分かもしれませんね。僕自身、最初にフィルムを見せていただいたとき、いい意味で原作を裏切る展開にすごく驚いたんです。なので、映画を観終わった後、それぞれの生活に戻っていく観客を祝福したいという監督の気持ちも、僕なりにわかる気がした。今回『Right Now』はそういう抜けというか、広がりを意識して作りました。もう少し具体的に言うと、『ごっち』『りばちゃん』『サリー』という物語の軸となる幼なじみ。複雑に絡み合ってしまったこの3人の自意識をどうにか解きほぐし、それぞれがインディペンデントな存在としてまた新しく始まる──みたいな感じが出せればいいなと」

山田「そこは僕も同じです。監督からのリクエストも『観た人にすっきりして帰ってもらいたい』というものだったし。僕自身、実際に作品を見せていただいて、『うん、たしかにそうだよな』と納得しました。曲作りの過程ではいろいろ考えることも多かったけど、行定監督が提案された方向性と今のアジカンのモードをうまく融合して、いい形で昇華できた気がしています」

──行定監督は今回、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのどこに惹かれてオファーされたんですか?

行定「最初期の『君という花』(2003年)という曲を聴いたときから、実はすごく気になっていたんですよ。何かに似ているとか、影響を受けたとか、そういう日本のロックとは明らかに違う世界観みたいなものを感じて。ちょっと衝撃だったんですよね。あれってたしか、2枚目のシングルでしたっけ?」

山田「ええ、そうですね」

行定「あの曲、ミュージックビデオを豊田利晃監督が手掛けているでしょう。たまたま僕、彼が日活スタジオでオフライン編集をしているときに居合わせて、聴かせてもらった。で、ファーストアルバムを出てすぐ買いました」

後藤「ありがとうございます(笑)」

行定「自分と同期の映画監督が若くて才能あるバンドの出現に立ち会っているのが、当時はすごくうらやましかったんですよね。その意味では、いわば10年以上の片想いとも言えるわけで(笑)。今回オファーを受けていただけて、率直に嬉しかった。ただ、自分でお願いをしておきながら、ある種の迷いがあったのも事実なんですね」

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