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石川竜一(写真家)×天野太郎(横浜市民ギャラリーあざみ野学芸員)「考えたときには、もう目の前にはない 石川竜一展」対談インタビュー

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考えたときには、もう目の前にはない/2014~2015年/ピールアパートタイプフィルム

平成27年度のあざみ野フォト・アニュアル企画展として、写真家石川竜一の個展『考えたときには、もう目の前にはない』が開催中。2014年に最初の写真集を2冊同時に出版し、第40回木村伊兵衛写真賞、2015年日本写真協会賞新人賞を続けて受賞し、写真界で大きな注目を浴びる石川。本展では自身の生活の場でもある沖縄で撮影された人物像と風景を中心に、最初期の実験的な作品や木村伊兵衛賞の対象となった沖縄での作品に加え、極限に近い環境での山行で撮影された最新作によって構成される。なぜ石川の写真は見るものに強烈な印象を与えるのか、本展の企画を担当した学芸員・天野が迫る。

天野「今回の石川さんの展示と同じ会期で、コレクションの中から写真を発明した一人であるウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットの展示があるんです。目の前の世界を正確に写しとりたい、そのイメージと何とか定着させたいというタルボットをはじめとする19世紀の人々の写真に対する欲望の変遷が石川さんの活動と被るところがあって興味深いのです。テクノロジーが進む中で、失われていく自然の魔術的な作用が生み出す写真イメージの誕生のプロセスの面白さは、石川さんの初期のryugraphの中で見出せるところがある」

石川「へえ、なんでですか?」

天野「コンタクトで撮ると綺麗に写るのに、レンズやネガのテクノロジーが追い付いていないから撮ろうとするとぼやける。それで、世の中は進歩していくけど、タルボットはその最初のところにもう1回戻ろうとする。ネガポジじゃない一番オリジナルのところで本人は喜びを感じたい、とことがどうもあったのではないか。で、翻って石川さんは、フォトグラム(カメラを用いずに、印画紙の上に直接物を置いて感光させるなどの方法により制作された写真作品)とは言えないかもしれないけれども、印画紙と溶剤を使って自分の絵のようなものを描く。ただ石川フォトグラムは、誰かの像を写しこんでるわけじゃない。要するに溶剤の面白さというか……」

石川「写しこんでるものがあるとすれば、液ですよね(笑)」

天野「それが印画紙の上に自分のイメージを定着させたいという欲望をストレートに表してくれている。カメラの中で何が起きてるんだろうじゃなく、今起きてることは全部見れるという直接的なことをしている。石川さんは写真始めてから10年くらいですが、19世紀から今に至る写真の歴史をその間に全部試している。だから何を撮るかという以前に、最初に興奮したのはそこだった。しかも本人は別に写真の歴史を知ってるわけじゃなく、思いのままにやったら写真の歴史とほぼ同じことをやってた。それはすごいことだと思ったわけです。これは、言い換えると、テクノロジーが進化しても、人間そのものは進化しないんだな、と。だから石川さんがなんで写真にハマったんかは聞いてみたかった」

ryu-graph #0028

ryu-graph #0028/2009年/ゼラチンシルバー・プリント

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