NeoL

開く

Joe Odagiri × Yu Aoi『Over The Fence』Interview

0701_neol_0148
 
──見所と言えば、物語中盤のあるシーン。それまで何となく惹かれ合っていた2人の関係が決定的に変わり、互いの感情をぶつけ合う芝居が凄まじかったです。
 
オダギリ「ありがとうございます」
 
──詳しい内容は映画を観てもらうしかないんですが……それこそ目を背けたくなる気まずさと、誰かを好きになる切なさが入り交じった名場面と感じました。 
 
オダギリ「2人が衝突するあのシーンは、実は撮影期間の最終日に撮ったんです。いわば本作における最大のターニングポイントであり、作品全体を左右するくらい大切なやりとりだと言っていい。逆に言うと蒼井さんも僕も、そのハイライトから逆算してすべての芝居を構築していたと思うんですね。その意味で、最後の最後に一番大事なシーンを撮るというやり方は、役者として新鮮だった。しかも、どんなに脚本を読み込んで逆算しても、イメージ通り行かない部分は必ず出てくるわけで……」
 
──実際、いきなり感情を炸裂させる聡を前にして、白岩はなすすべもなく狼狽えているように見えました…。あの表情の演技も計算だけじゃなかった?
 
オダギリ「そうですね。たぶん白岩だけじゃなく、僕という生身の人間もリアルに狼狽えてたんじゃないかな(笑)」
 
蒼井「今となってはもう、笑うしかない(笑)。たしかあの場面に限っては、何度かわざわざリハーサルもしたんですよね」
 
オダギリ「そうでしたっけ?」
 
蒼井「はい。でも結局、本番ではまったく違う展開になっちゃった」
 
オダギリ「うん、そうでした。でも、あの張り詰め方じゃ当然そうなりますよねえ。毎回ほとんどぶっつけ本番ですし、リハと同じように動いてくださいと言われたも、できるわけがない(笑)」
 
蒼井「何だろう……あのシーンは役者もスタッフさんもみんな捨て身だった。現場にいる誰もが変な汗をかきながら、『どうなるかわからないけど、とりあえずカメラを回そう!』みたいなテンションで撮っていったので。いろんな人のいろんな気持ちが混ざり合って、もの凄い化学反応が起きてる気がします」
 
——言うべきじゃないって頭では分かっているのに、感情を堰き止められなくなってしまう聡の表情も忘れられません。
 
蒼井「相手を攻撃しようとすればするほど、どんどん自分が傷付いていく。それでも口だけが勝手に動いてしまう感覚が、私の中にあって…。あそこも演じながら、後悔してるのが聡なのか私なのか、分からなくなってしまう感じでした」
 
オダギリ「ああいう経験は、役者をしていてもなかなかあるもんじゃない」
 
蒼井「ないですね。たぶん今後もないと思います」
 
オダギリ「本当に。いろんなことが現場で奇跡のように影響し合って生まれたシーンでしたよね。あのウネリは僕も忘れられません」

 

 

photo Shuya Nakano

hair&make-up Yoshimi Sunahara(Joe Odagiri)/Yumi Narai(Yu Aoi)

Styling Tetusya Nishimura(Joe Odagiri)/Setsuko Morigami(Yu Aoi)

text Takayuki Otani

edit Ryoko Kuwahara

 

 

over_movie

『オーバー・フェンス』9月17日(土)、テアトル新宿他にて全国ロードショー

監督:山下敦弘『苦役列車』、『味園ユニバース』

出演:オダギリジョー、蒼井 優、松田翔太ほか

http://overfence-movie.jp/

 

 

オダギリジョー

第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『アカルイミライ』にて初主演を果たし、『あずみ』では、第27回日本アカデミー賞新人俳優賞、エランドール賞新人賞を受賞。『血と骨』で第28回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、『ゆれる』、『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』で日本アカデミー賞主演男優賞、『舟を編む』で同賞優秀助演男優賞を受賞。近年は、『合葬』、『FOUJITA』にて主演・藤田嗣治を熱演。またTBSドラマ「おかしの家」、「重版出来!」の出演も話題に。本年は、『湯を沸かす程の熱い愛』(中野量太監督/10月29日公開)、『続・深夜食堂』(松岡錠司監督/2016年11月公開)の公開も控えている。

http://www.dongyu.co.jp/profile/JoeOdagiri/

 

蒼井 優

1999年、1万人の中からミュージカル『アニー』のポリー役に選ばれデビュー。2001年、岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』で映画に初出演。その後、2002年に「三井のリハウス」の10代目リハウスガールに選ばれ、2003年に『高校教師』(TBS)で初めて連続ドラマにレギュラー出演。2006年度は、映画『フラガール』などでの演技が認められ、第30回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、第49回ブルーリボン賞主演女優賞をはじめ、数多くの映画賞を総なめにした。松井大吾監督作で主演を演じる『アズミ・ハルコは行方不明』が2016年12月3日に公開。

http://www.itoh-c.com/group/profile/prof_s/aoi/index.html

 

 

1 2 3 4 5 6

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS