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text by Makoto Kikuchi
photo by Kazuki Iwabuchi

Fiction Issue: ワカモノ考 #01 Interview with Kazuki Iwabuchi

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——写真の可能性に気付いたという岩渕さん自身の“変化”がさらにあの写真を意味付けしているのかもしれませんね。


岩渕「いつも端っこにいて何のグループにも属せなかったから、認められたい、僕を認識してもらいたいという気持ちが常にありました。上京して、ファッションスナップを撮られたいからおしゃれをするようになったけど、結局大したことなくて。じゃあ撮る側になってみようかな、とカメラを持つようになったのがきっかけです。人に見られることが前提でスタートしているから、撮り始めたころはこんなにいい写真が撮れたとか、綺麗な写真が撮れたっていうので満足していました。だけど、だんだんそうやって“誰かに見せるための写真”を撮っていることに疲れてきて、一時期少し写真から遠ざかるようになったんです。そんな時に久しぶりにカメラを構えたいと思わせてくれたのが、お祖父さんの死でした。そうして撮ったものが、自分が今まで撮ってきたものとは全く別の、写真としての機能を果たしていたことに気付いたんです。写真から新しい自分を発見できたような気がしました」


——自分を見つめ直したり、新しい発見をしたりする方法は、写真を始める前にもありましたか?


岩渕「ありません。強いて言うなら、他人から指摘されることが自分を見つめ直すためのたったひとつの方法でした。写真を始めたことで、客観的に自分を見つめることができるようになって、やがて写真を通してでなくてもその視点を持つようになりました。今の自分を客観的に見たとき、“誰かに見てもらう”ということにそんなに重点を置いていなかった。その事に気付かせてくれたのが、あのお祖父さんの写真でした。でもそうは言っても、やっぱり誰かに評価されたいという欲からは抜け出せていないんですけどね。ヘンリー・ダーガーっていう引きこもりの男性が生涯をかけて書き上げた世界最長の小説があって。その作品は彼の死後全くの他人によって発見された、というのを聞いて、僕だったらそれは嫌だなと思ってしまったんです。自分の作品が表に出ないまま死んでしまうなんてやっぱり嫌だと思います。認められたいという欲から抜け出せたらそれは一番いいのかもしれないけれど、所詮僕だから、結局そこから抜けることはないんだろうなって」


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