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text by Junnosuke Amai

Interview with MOUNT KIMBIE about『Love What Survives』

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——今回の制作にはアディショナル・プレイヤーとして5人ほど参加していて、レコーディングの担当者も複数クレジットされています。クリエイティヴな部分におけるふたりの関係性や、マウント・キンビーとしての組織の在り方みたいなところにも変化があったのではないでしょうか。


カイ「どうだろう? 今回、レコーディング前にライヴでプレイしてた曲が何曲かあって、その人達が関わってたりするんだけど、その曲にとって一番ベストな形で作品にしたかった。他のミュージシャンが入ったことで得たものだったり、新たに生まれたアイデアをそのままレコーディングのほうに反映させようというか。誰がどう関わってるかよりも、最終的にどういう作品になるかってことのほうが重要だからね。しかも今回、ヴォーカルだったりホーンだったり、自分達だけではカバーできない領域を他のミュージシャンに担当してもらうことで、新たな世界が開けた感じがあったし」


——曲作りのアプローチも変化した?


カイ「そうだね。どのミュージシャンもそうだと思うんだけど、同じことを繰り返すのはやっぱりイヤだ。ただ、アルバムを作るって、一応作品としての体裁を整えて、CDとして出して、みんなに聴いてもらえるように宣伝してというプロセスを前提にした上でのことなんで、そこにはリスナーとの関係が確実にあるわけで、リスナーに対してある種のコミットメントを果たさなくちゃいけない」


——ええ。


カイ「リスナーから自分達が何を求められてるのか理解した上で、一定の期待値に応えるというか、そもそもこのバンドに興味を持ってもらったポイントは押さえておかないと。でもそれはバンドのイメージとか作品を通じて自然に現れてくるようなものだと思うし、ある種のストーリーなりキャラクターみたいなものに自分達が乗っかってるみたいな。要するに、リスナーに敬意を払うってことだよね。この程度やってれば満足だろ?っていう上から目線の態度で接するんじゃなくて、毎回、今の自分達をぶつけて、さらに手を変え品を変え楽しませていくっていう」


——たとえばポップ・ミュージックの世界では、いまは一曲に何人ものソングライターやプロデューサーが参加し、アルバム全体ではそのクレジットが数十人に及ぶのは当たり前になっていますよね。もちろんマウント・キンビーの場合はそこまでではないですが、初期に比べると曲作りの環境はオープンなものへと変化してきたという実感がありますか。


カイ「そうだね、そういうアプローチを自分達のサウンドにも採用してるし、そのほうが自分達にとっても面白いからね。ただ、最近のメジャーなポップ・ミュージックって、あまりにも関わってる人数が多すぎて、逆に収集がつかなくなってるんじゃないかな。15人のキッズを同じホテルの一室に集めてリアーナのためにビートを作らせたりとか、継ぎ接ぎだらけのフランケンシュタインみたいで全然イケてないし(笑)。だから、ただ闇雲に片っ端からいろんなアプローチを試していけばいいってもんじゃない。全体のヴィジョンが見えてないとね」

——いまのマウント・キンビーって、デュオなのか、バンドなのか、それともコレクティヴに近いのか、どの感覚がいちばんしっくりきますか。


ドミニク「いまのところバンドかな……いや、どうだろう、わかんなくなってきた(笑)。参加ミュージシャンが増えるってことは、それだけ使える道具も増えるわけで、サウンドも面白くなるよね。外からミュージシャンを呼んでやるのにもだいぶ馴れたし、それなりに経験も積んでるから。実際に、生のサックスやトロンボーン奏者を呼んで演奏するほうが、サンプリングで作るよりもはるかに厚みがある音になるし」


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