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公開から30年以上経っても色褪せない「スタンド・バイ・ミー」

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ノスタルジア、青春、死生観を掛け合わせた、少年期から大人への成長物語……と聞いて、映画「スタンド・バイ・ミー」を挙げることに異論がある人はきっといないはず。公開から30年以上経つと聞いて驚く人もいるかもしれない。その原作者は、モダン・ホラーの大家として知られたスティーヴン・キング。

なのだが、さらにその原作は、四季をモチーフにした連作の一編なのはご存じだろうか?

春・夏・秋・冬の順に、“春は希望の泉”、“転落の夏”、“秋の目覚め”、“冬のおとぎ語”と、副題が付けられた4つの物語はまず、春の『刑務所のリタ・ヘイワース』で無実を主張しながらも刑務所入りした男の運命を描く。こちらも実は、名画と名高い「ショーシャンクの空に」の原作だ。そして転落する夏は、少年と老人の奇怪な交流を描く『ゴールデンボーイ』。明るい性格、成績良好。そんな13歳の少年トッドが、近所に住む老人をナチの戦犯だと疑うところから不穏な空気になっていく。なんとこれも同名のサスペンス映画の原作。

秋が「スタンド・バイ・ミー」の原作、『死体』。死体を探しにピクニック気分で2日間の旅に出た4人の少年たちの物語だ。その根底にある「人は何歳であろうと既にそれぞれの人生を背負っている」というのは(言われてみれば)当り前のことなのだが、この物語で、ハッと教えられる。

最後の冬の作品の舞台はニューヨーク東35ストリート249Bの、とある会員制社交クラブ。『マンハッタンの奇譚クラブ』はどことなくコナン・ドイルの『赤毛連盟』を彷彿とさせるゴシックな雰囲気。14歳の時に見た「スタンド・バイ・ミー」と、大人になって見る「スタンド・バイ・ミー」が違うように、四季を通して本書を読んでから見る映画は、きっとまた違うに違いない。日本語訳文庫版では春夏、秋冬の2冊での刊行。

『スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編』
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『ゴールデンボーイ 恐怖の四季 春夏編』
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スティーブン・キング
新潮社

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