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2019年7月の出来事:今だからこそ見たい、京都アニメーションが手がけた再生の物語




2019年7月、「涼宮ハルヒの憂鬱」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」など数多くの有名アニメ作品を輩出してきた京都アニメーション(以下京アニ)を突然の悲劇が襲った。第一スタジオに男が侵入。自ら撒いたガソリンの上に火を放った事件は救助隊や地域住民による懸命の救助活動にもかかわらず、戦後最悪の犠牲者を出す放火事件となってしまった。


この悲劇に対して支援の輪はすぐに広まった。事件当日から寄せられていた支援を申し出る声に応える形で、京アニは支援金預かり専用口座を設置。


アニメショップでの店頭募金、クラウドファンディングなど様々な形で国内外から集められた支援金は、同年10月31日の受付終了までに30億円にも上った。支援金額をその振込金額別に見ると、じつに全体の約8割が一万円以下の小口支援だという。これは、京アニやその作品が、いかに世界中の一人ひとりの心に浸透し大切にされてきたかを表すエピソードとしてとても印象的だ。


とはいえ、今回の放火事件で多くの優秀な技術を持つクリエイターの可能性が閉ざされてしまった痛手はあまりにも大きい。本作『聲の形』の総作画監督を務めた西屋太志さんも放火事件で犠牲になった方の1人だ。


『聲の形』は、2016年に劇場公開され160万人以上の観客動員数を記録したアニメ映画。


ある日、転校してきた聴覚に障害をもつ少女・硝子。将也たちは最初こそ筆談などでコミュニケーション取ろうとするが、うまくいかず、そのもどかしさは次第に硝子へのいじめに発展していった。いじめの事実が担任に発覚した時、その首謀者として祭り上げられたのは将也だった。それ以来、将也は一転して、いじめられる対象に。わかりあえぬまま硝子も転校していき、この時のトラウマから将也は人間不信と自己嫌悪に陥り、それ以降も孤立した日々を送っていた。そして高校3年生になった将也は、硝子に伝えられなかった謝罪の言葉を伝えてから、自殺することを決意する……。


硝子が、将也が、多くのものを失いながらもコミュニケーションを重ねる中で再生し、新たに大切なもの得ていく過程が京アニならではの精緻かつ感情溢れるアニメーションで表現された本作。改めて失ったものの大きさを痛感する。しかし、京アニの再生と発展を応援するという意味も込めてぜひ今見て欲しい作品だ。


『聲の形』
本編129分
■Blu-ray 初回限定版(BD本編ディスク+BD特典ディスク)8,000円+税
■Blu-ray 通常版(本編ディスク1枚組)5,200円+税
■DVD(本編ディスク1枚組)3,800円+税
発売元:京都アニメーション・映画聲の形製作委員会
販売元:ポニーキャニオン

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