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text by Sunkyung Ahn/Shoko Mimbuta/Ryoko Kuwahara
photo by Your Mind

Can’t live without Books : Interview with Iro from YOUR-MIND (Seoul)/書店特集:ユア・マインド イロ(韓国・ソウル)インタビュー/질문지 이로




各都市の中でもひときわ独立型書店とリトルプレスの躍進が目立つ韓国・ソウル。2009年にオンラインからスタートし、2010年にフィジカルな書店としてオープンした「YOUR-MIND」はそれらのムーブメントの核となる存在だ。編集者からインディペンデントの出版物だけを扱う書店運営に乗り出し、出版元としても良質な書物を定期的にリリース。現在はリトルプレスのアートブックフェアとして多くの人々を集める「UNLIMITED EDITION」も主催する店主のイロに、選書やディスプレイ、運営に関してなどを語ってもらった。


ーー素晴らしい門構えの中の真っ白な建物という夢のような場所にお店がありましたが、駅からも遠いこの場所を選んだ理由は?


イロ「2017年に以前あった場所から出なければならない状況になり、ヨンヒドン(延喜洞)に新しく空間を移しました。アクセスは良くないのですが、弘大前のソギョドドン(西橋洞)にいた時も同様の状況でした。お店を構える上での様々な要素の中で、低層階や地下鉄の駅からのアクセスの良さなどは独立書店が確保しにくい点の一つです。 この建物をプロデユースしたイム·テビョンという建築家の提案で、様々なブランドが並ぶ現在の場所に入ることができました」

ーーインディペンデント系の書籍がメインですが、絞り込まれた選書が印象的でした。そのどれもがお店の雰囲気と合っていたし、形作っているようでもありました。選書の基準があれば教えてください。


イロ「選別基準はいつも言葉で説明し難い部分の一つですが、なるべく作家個人や小規模の出版社で発行された、その人だけというような要素を持っている本を集めようと努力しています。テキストがメインになる書籍は他の書店でも多く見られるため、それよりは主に視覚に訴えかけるような書籍、イラストレーション、写真、漫画、デザイン、図鑑など、コンセプトがはっきりしている本を取り上げるほうが好きですね」


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ーー小さなステッカーなど、自分で見つける喜びをもたらしてくれるようなグッズのディスプレイは、お店の場所にも通じる「YOUR-MIND」らしいあり方だと思いました。「YOUR-MIND」に来るお客さんにはどんな体験をしてもらいたいですか。



イロ「まさにその通りです! 小さな本屋として、より親切なアプローチやガイドをすべきではないかと常に悩みますが、同時に独立出版物というもの自体が、誰かの案内によって選ぶより、作家と読者の間に具体的な情報がない状態で自ら選んでいく楽しみが大きな媒体だと思います。YOUR-MINDに来るお客さんがドアを開けて入って来て出て行くまで、完全に独立した空間に入って来たような感じの、予想外の書籍や視覚的な作業に出会えたらと望みます」

ーー移転後に設置されたギャラリースペースはお店にどのような効果をもたらしましたか。


イロ「ギャラリーというには小さいので‘ポップアップコーナー’と呼んでいますが、期間別に新しい企画のイベントや小さな展示を行いながら、ポップアップコーナーと書店が互いに連動することを理想的な目標としています。イベントを見に来たお客さんがお店の本に興味を持つようになるとか、その逆の場合もできるようになることですね。 また、書店が本を作る人たちが完成させた新刊を入庫するのを待つ空間だとしたら、ポップアップコーナーは私たち自らが作り上げていくことができるので、お互いに補い合えるという長所があります」









ーーONE MORE BAGなどトートバックの販売も行っていらっしゃいますが、始めた経緯を教えてください。


イロ「ONE MORE BAGは2015年にソウル在住のクリエイターMomomiさんが運営を始め、現在まで続いています。最初は布で作られたカバンが持っている平面的な要素に惹かれましたんです。カバンでありながら印刷物のようにも見えますからね。でも、実際にやってみたらファッションに近かったので、今は別の売場を設けています」

ーー素敵なオリジナルのグッズがたくさんありますが、デザインは誰が手がけています。


イロ「うちの会社に所属しているナム·ジュヒョンというデザイナーが2015年からグッズと出版物のデザインを担当しています」

ーーお店にいた猫がアイコンのような存在として知られていましたが、最近は姿が見かけないようですね。


イロ「3匹(モロロ、クリクリ、ピョピョ)いましたけが、みんな連れてきたというよりも、道で助けた子もいたり、自然な理由で本屋にいるようになりました。ヨンヒドン(延喜洞)に移転してからは、猫がいるには良い環境ではないと思うようになって、(というのと、猫だけを見に来る客が増えたのも理由ですが)2019年から私の家で飼っています」


ーー韓国では日本以上にペーパーレス化が進み、出版業界が危機に瀕し、大型書店の存亡が危ぶまれるようになったことで逆に独立系書店が増加した印象です。今後の韓国の独立系書店の動きはどうなると予測されていますか。



イロ「「ここ数年、早いペースで増加してきて、今は維持されている傾向です。その数が多くなり、大型書店の縮小版よりは、はっきりとした性格の書店が定着しつつあると感じます。 独立書店の行方を予想するのは難しいでしょうが、まったく新しいスタイルの書店よりはすでにある空間を応用·変形する形が多くなるのではないかと思います」








ーーリトルプレス系のブックフェアであるUNLIMITED EDITIONの主催を務めていらっしゃいますが、始めようと思ったきっかけと、一見ブックフェアだとわからないこの名前にした理由を教えてください。


イロ「Unlimited Edition(以下UE)を始めたのは、独立出版物が持つ固有の特性のためでした。個人が作った本は産業的に作られた本より読者が判断できる要素(作家が誰なのか、どのように作ったのか、なぜ買わなければならないのか、なぜ読まなければならないのか)が隠されたままになりがちです。なにしろマーケティングがないし、推薦社もない、帯もないのですから。だからといって作者がより多くの読者に会えないことを諦めることはない。そこで、そんな距離感を市場の形態をしたアートブックフェアで相殺しようと始めました。名前のに関しては、イベント会場内で販売されるのは限定版(Limited Edition)だけなので、逆説的な名前をつけて、小規模に制作された本が持つ爆発力を引き出そうと考えたのです」


ーーUNLIMITED EDITIONを重ねるごとに何か変化はありますか。作り手、買い手それぞれの変化と扱うテーマや質についての推移も教えてください。

イロ「近年はイラストレーターの活動が活発で、UEに参加する作家群の中でもイラストレーションの割合が大きく増えました」















UNLIMITED EDITION photography Hyo Jin Lim

ーー世界各地でリトルプレスのムーブメントは起きているように思います。その中で韓国ならではの本との関わり方や特色などを感じることがあれば教えてください。



イロ「韓国は特にテキストを基盤に活動する作家が多いです。小説、エッセイ、詩などですね。他の国々は主に視覚芸術とアートブックに集中していますが、韓国は文学が大きな割合を占めています」


ーーそれは面白い特徴ですね。では出版元でもあり、編集者でもあるあなたから見て、リトルプレスの魅力は?


イロ「‘今自分が作りたい事柄に集中する’というところです。だから、一人で作ったとしても、市場のトレンドにそのまま従う本は実は‘リトルプレス’ではなく‘規模が小さいだけの既成出版’だと思います」



ーー書店として、出版元として、UNLIMITED EDITIONとして、それぞれ今後挑戦したいことなどあれば教えてください。


イロ「たいした目標はないですが、おっしゃった3つの要素である書店と出版とアートブックフェアを今よりもっと安定した状態に引き上げたいと思います。私たちのような独立系書店は小さなきっかけでも崩れるかもしれないので、1つずつをよりブラッシュアップしていくのが今の目標です」


ーー日本で企画していることなどありますか?他に今後の企画、予定などあれば教えてください。


イロ「毎年‘Tokyo Art Book Fair’に参加していますが機会があれば今年も参加したいです!」




photography Your Mind
text Sunkyung AhnShoko MimbutaRyoko Kuwahara








YOUR-MIND
2F, 10-6, Yeonhui-ro 11-gil, Seodaemun-gu, Seoul, South Korea
Tel: +82 70-8821-8990
Opening hours:13:00-20:00 Closed on Tuesday
Website:http://your-mind.com
Instagram:https://www.instagram.com/your_mind_com/

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