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text by Ayana Waki

.nl Issue:アーティストとオーディエンスという境界を無くし、誰もがホストとしてステージに立てるクラブ“SEXYLAND”創設者 Aukje Dekker/Interview with Aukje Dekker founder of Sexyland




オランダのクリエティヴ業界を盛り上げているアーティスト11人を取り上げる「.nl Issue」特集。近年、多くの国が国境を閉鎖しナショナリズムが高まり、世界共通の言語でもあるアートを通して団結することが以前よりも重要となってきている。NeoLでは、現在の状況と予測不可能な未来のために、議論ができる空間を様々な形で人々に提供するアーティストやアクティビストへのインタビューに取り組み続けている。本特集では、限界に挑み続け、フロントランナーとして走るオランダに在住するアーティストを紹介し、国の魅力についてはもちろん、今現在の環境、社会構成、政治などの問題を乗り越えるために必要とされる緊急性と行動力を喚起したい。
存在するクラブの中で、365日ホストが変わり続ける場所は稀有なのではないだろうか。アーティストとオーディエンスという境界を無くし、誰もがホストとしてステージに立てるクラブを立ち上げたいという強い思いから生まれたのがここ、“SEXYLAND”。ここで開催されるパーティーは予想を超えてワイルドでありながらも、老人向けのチェスゲーム大会やサルサクラブなど幅広いイベントを開催しているという顔も持つ。SEXYLANDの設立者Aukje Dekkerにイベントやアムスのカルチャーシーンの未来について聞いてみた。

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ーーまず、クラブの名前は昔アムスの飾り窓地区に位置したセックスショップから由来しますが、かなり挑発的なメーミングだと思います。悪名高いことで有名なセックスショップと意図的に同じ名前にした理由を教えていただけますか?

Aukje「私はSEXYLAND設立の前に、Eddie the Eagle美術館を創立しています。Eddie the Eagleは世界初のイギリス出身のスキージャンプ選手の名前で、彼はある大会のレースを最下位で完走したのですが、それによって負け犬たちのヒーロー的存在になった人物です。その名前とは逆に、この美術館はとても魅力的でアート界を代表する存在にもなっています。こんな風にひとつの言葉に全く逆の2つの意味を含むことで、完全には理解できなくとも新たな価値がそこ誕生するのです。SEXYLANDの場合は、主催者が毎日変わるという特質上、私たちは多くのお客さんと相互に関わっていかなければなりません。その点ではこの名前はぴったりだと思います。その特質が故に、同時にSEXYLANDはある意味で誰のためのものでもなく、誰もが共通の認識を持ち合うような場所ではないので、少し刺激的で挑発的な名前を選びたかったのです。ネーミングはいつも難しいですが、運命的にコンセプトに相応しい名前に出会うと、そのコンセプトなどをより理解しやすくなると思いますね」





ーー「みんなのクラブ」としてのイメージをもつSEXY LANDですが、密かでセクシーな雰囲気を保つことが出来ている要因などについて教えていただけますか。

Aukje「パーティを主催したい人は、まず応募をしていただかなければなりません。でも、応募とはいえ必要条件は少ないので、ほとんどの場合が通ります。Paradisoなどの大規模なクラブは基準が高いので拒否されるイベントが多いのですが、SEXYLANDでは基本的にどんな企画でも通りますよ。滅多に企画を拒否しないクラブとして有名なので、怖がらずに気楽に提案してくる方が多く、可能性が無限大なのが面白いところです。大物からのオファーもよくくるので、レンタルスペースとしてのシステムとのバランスを保つのも大切だと思います」

ーー送られてきた企画に対して必ずOKを出している感じですか?

Aukje「個人的な好みといった理由で拒否したくないので、ほとんどの場合は許可していますが、ただのテクノイベントや誕生日会などを開催したいというリクエストはたまに拒否します。そのような場合、私たちのポリシーとして、断る前にいつも『どうやったら社会に貢献できるイベントに変えられるのか』と企画者に問いかけるようにしています。例えば、男の子が誕生日会を開きたいと言ってきたので、『そのパーティーはこの街に何か貢献できるのか』と尋ねたら、彼は『自閉症の弟のためにパーティを主催したい。弟が心地よいと思える雰囲気のパーティーを作って彼に純粋な恋を見つけて欲しい』と話してくれたのです。当日はたくさんの障害を抱えた人々が訪れてくれ、パーティーは成功しました。そこから今ではSpecial Social Clubという組織を立ち上げたようです。毎回のこだわりによって、より良いものが生まれるという一例ですね。努力がそれ相当の結果につながるんです」



ーー予想を覆すようなイベントなどはありましたか?

Aukje「毎回、予想をはるかに超えるイベントになることが大半ですが、思ったよりイベントが上手くいかずがっかりした時もあります。例えば、Joost Van Bellen がホストだったイベント“Andersomdag”。彼はオランダでは大物でアート界の人のみんなに尊敬されている人物なので、イベントは大ヒットになると思いきや、その日の同じ時間帯に別のクラブで行ったイベント客を取られてしまい、会場は空っぽでした。その時はものすごくがっかりしましたね。
 また、逆に16歳の女の子の誕生日会のイベントは私の予想をはるかに超えました。彼女から『15組のバントを呼び、インスタレーション付きの展覧会を開きたい』と言われた時は、イベント開催まで正直言って『まさか』と思ってました。だけど、当日は16歳の若者で会場はパンパン。エネルギー発散をする場がない子たちにとってはパラダイスのようなイベントだったので、みんな会場内を走り回ってもうカオス状態でしたね(笑)。どうなんだろうと思っても、みんなにチャンスを与える大切さをそのイベントから学んだように思います」

ーーかなり奇抜でワイルドなパーティが開催されるクラブとしても知られていますが、過去最強で一番印象的だったイベント、または個人的に深い意味をもつイベントについて教えてください。

Aukje「一番印象的だったイベントは“The best of sexyland”。設立の1年目に開催されたイベントのホスト365人を招待した1日限定のイベントでした。印象的だった理由は、SEXYLANDがさらに成長するための次のステップへと導いてくれたからです。大抵は月曜日はパンクナイト、火曜日はオペラ、水曜日はアートスクール展示会というように、イベントによって1つのサブカルチャーに属する特定された客層が訪問するのですがm“The Best of Sexyland”ではテント二つを貸切り、ジャンル問わず全てのイベントを同時に開催し、その結果いろんなサブカルチャーに属する人が一つの屋根の下に集まったマジカルな日になりました。
老人がチェスをしている隣で、奇妙なパンクヒップホップを聴きながら踊りだす若者。演奏が終わりシャイな女の子がオペラを歌いだすと、みんな静かに地面に座り込む。普段の生活ではあまり見ないものに刺激された客のエネルギーは爆発していました。現在私たちは、これを大規模にした“SUPER SEXYLAND”というイベントを実現するために毎日計画を進めています。うまくいけば来年の3月にはオープンする予定です」





ーー若い学生時代は自分と似たような作品を制作しているアーティストを見つけたら、すぐにその手がけている制作を止めてしまう傾向があったけれど、今はむしろアートは誰のものではなく全ての作品は様々な人からのインプットから成り立つと信じているそうですね。考え方に変化が生まれきっかけはなんですか? また、この新しい考え方はSEXYLANDを立ち上げる時に役立ったと思いますか?

Aukje「様々な経験から学んだのが大きいと思います。学生時代は、コンセプトを考えるのは得意でしたが、使う素材が思いつかなくて困っていました。例えば、もし自分が赤い風船を使った作品を制作しても、風船をいつも使っているアーティストが自分の作品を真似したら、結局それは彼女の作品になってしまうのです。ある型を作ってそれにハマれば、うまくいくというのはわかっていましたが、それが嫌でかなり長い間苦しみました。でも、あるとき自分の脳自体が素材であることに気づき、制作がうまく進むようになりました。SEXYLANDも私一人で考えたクラブではありません。私のアートのパートナーであるArthur van Beekをはじめとするグループで行なっているものです。 SEXYLANDには、頑丈だけどとても柔軟で、みんなで積み上げてきた強い基盤があります。だからこそ、何にでも変身でき、どこでもいつでもコンセプトが成り立つのです。そのことをとても気に入っていますね」





ーーSEXYLAND設立時に取り入れたかった要素をもつ、学生時代によく通っていたクラブはありますか?

Aukje「18歳の頃にアムスに引っ越し、初めてパーティに行った時『うわあ、これがアムスのナイトライフ?』と衝撃を受けました。クラブではなく、アムスでよく見かけるカナル沿いの細長い4階建ての建物の中で開催されたハウスパーティでしたが、テーマが各部屋によって違ったんです。それに影響されSexylandでは入り口に立つ警備やバウンサーがいませんし、コートを預けるクロークルームなども作っていません。何かを盗めば、私の家から盗んでいるのと同じだということを理解している人が多いので、互いに必要なリスペクトが自然と生まれるのです。ルールが少なくてもみんなをあたたかく歓迎できるスペースを作りたいと思ったきっかけはそこからきているとも思います」



ーーSEXYLANDが位置するNDSM werfはかつて造船所地区として有名でしたが、現在は様々なアーティストが在住し、文化組織などが集まったアートシティとして知られています。NDSM werfがアートシティとして、アムスのアートまたはカルチャーシーンに何か変化をもたらしたように感じますか?

Aukje「実は今、『SUPER SEXYLAND WORLD』を違う場所に建ててほしいと地方自治体からリクエストがかかっています。中心街から離れた北や西側に位置する他の地区を開拓して高級化し、その地域を高級住宅街としてアピールをしたいという思惑があるようです。人口過剰の問題を抱えているアムスではここ数年だけで、新しく何千軒も家が建てられ、今はフリースペースがなくなってしまいました。NDSM werfに居たくても、今はレッドブルやMTVなどのビジネスオフィスなどにスペースが取られてしまったので、かなり焦っている団体が多いと思います。アムスから自由が奪われていると思ったので、一時はロッテルダムに戻ろうと考えたこともありました」

ーー政府が一定の地域を改善し、ある程度高級化したらそのあとのことは考えずに、次に問題とされている場所に取り組んでいく感じなのでしょうか。

Aukje「短期的な政策を考えているだけでしょうね。仰るように、問題とされているある一定の場所に膨大なお金を投資し、ある程度改善されたらまた次の場所に移動するというのがお決まりのパターンです。実験することは大切ですが、効果があらわれるまで時間がかかることを把握しきれていない気がします。『パイロットプロジェクト』という言葉が彼らは大好きで多用しますが、その難しさや恐ろしさについてはいつも遅れて気づくのです。恥ずべきことですね」
 
text Ayana Waki
 

Sociëteit SEXYLAND
A conceptual club on the NDSM in Amsterdam North. For 365 days it has a different owner, every day. The owner of the day decides what kind of club they want it to be, which can vary from art exhibitions to sporting events, from gangster rap nights to dinners in stroboscopic light.
http://www.sexyland.amsterdam/amsterdam/
https://www.instagram.com/societeit.sexyland/

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