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text by Ryoko Kuwahara

Self Isolation Issue : 「色々わかっていないことが多い中で、私たちより、2ヶ月くらい先に新型コロナウィルス感染症の危機に晒されていた中国が今どうなっているのかを聞いたり、近隣諸国がどういう風にいま対応しているのかということを聞くだけでも安心材料になる」Jo Motoyo Instagram Live/Talk More – Jo Motoyo



フィジカルには距離を置かねばならない現状に際し、アイデアや情報のシェアでポジティヴに自宅での時間に向き合うための「Self Isolation」特集。アーティスト/クリエイターによる現状への向き合い方やオンラインで楽しめる情報などを随時アップデートしていく。
映像作家であるJo Motoyoが4月5日にインスタグラムでライヴ配信を行った。内容は彼女の友人3人と新型コロナウィルス感染症について語りあうというもので、参加者は中国人であるケント、日本在住の韓国人であるヒスン、同じく日本在住の台湾人シン。医療の専門家ではないが、アジア各国の状況をそれぞれの国の人間から聞こう、それも顔が見える形で聞こうという趣旨に基づいている。配信開始にあたって、Joはこう述べた。
「今回インスタライブしようと思ったのは、私も色々と漠然とした不安があったから。新型コロナウィルス感染症のことも、他にも色々わかっていないことが多い中で自粛してくださいと言われてもより一層怖い。その中で、私たちより、2ヶ月くらい先に新型コロナウィルス感染症の危機に晒されていた中国が今どうなっているのかを聞いたり、近隣諸国の台湾や韓国みたいに対策が評価されている国がどういう風にいま対応しているのかということを聞くだけでも安心材料になるんじゃないかなと思ってこの機会を設けました」
医療従事者や専門家の話ではないということはくれぐれも留意してほしいが、先の見えない漠然とした恐怖にさらされている中、先駆者たちの話を聞くことは勇気づけられる。その思いは同じであることから、NeoLではJoに今回のインスタライヴを記させてほしいと依頼した。以下はそこで語られた言葉である。



――今日はこの4人で大きくは3つのことを話したいと思っています。1つは、それぞれの国のCOVID-19感染拡大の防ぎ方。2つ目は台湾も韓国も中国も外出制限とまではいかないけど自粛ということが続いていましたが、これぞれの国の人たちが家でどう過ごしていたのか、それに対してのメンタルヘルス。3つ目は、みんなも心配だと思うけど今後の経済活動がどうなっていくのか。この3つをみんなで話して情報共有できたらなと思っています。では最初に自己紹介からおねがいします。


ケント:僕は中国人なんですけど、生まれも育ちも日本で、今は仕事の関係で中国に拠点を移して中国で暮らして3年くらいになります。


ヒスン:私は韓国から留学で日本に来て、今までは大学で仕事していました。今はお仕事はないので家で待機10日目を迎えました。日本滞在13年目だから韓国の現在はよくわからないんですけど、お母さんや友達からの情報を集めて来たので、不安が広がってるなか、元気に過ごすことに役に立てたら良いなと思います。


シン:私もヒスンさんと同じように台湾から12年前に日本に移住して、大学卒業してからは日本の会社で働いています。私も日本にずっといるので、台湾の詳しい事情はそこまでわからないかもしれないですが、周りの親戚などから情報を得て少しでも役に立てたら嬉しいです。


――ありがとう。じゃあ早速、それぞれの国のCOVID-19の感染の防ぎ方を教えてください。


ケント:中国では、新型コロナウイルス感染症が公に存在すると言われだしたのが、だいたい今年の1月中旬くらいからでした。今、震源地なんじゃないかなと言われている中国・湖北省の方では去年の末くらい。情報公開されたものの、最初の方は結局これはどういう特性のウイルスかというのがわからなかった。空気感染するんじゃないかとか、動物に接触したら感染するんじゃないかとか、ヒトとヒトは感染するのかどうかという検証とかーーあまりにも情報が錯綜していて、みんなどう対策をすれば良いかわからないけど、ウイルスだからとりあえずマスクはしておけという感じで、まずマスクをし始めた。何が何だかわからない状況で、薬局にマスクを買いにいくと、既に長い行列が出来ていて、今思えば情報もない中で個人的な対策を求められていたあの時期が一番怖かった。で、徐々にいろんな研究がされていって、どうやら接触感染もある、飛沫感染もあると。それを防ぐためには、人との距離を保つことも必要。発熱もするので体温計測も必要ということで、徐々に、手洗い、マスク、体温検査が必須になってきたんだよね。最近では、各建物に入るときは、体温検査を必ずする、除菌のための消毒をやってもらう。あと出社する人の場合は、毎日健康状態の申請をして、熱が何度か、症状はあるかないかというのを申請して、許可証を取ってから初めて二日目に会社に行くことができるようになっている。だから段々と時間を経て、今回のウイルスに合わせた対策が少しずつ揃ってきた感じかな。


――韓国はいま感染の爆発的なピークを超えたと言われてる唯一の国ということになっていますよね。韓国の対策はどうでしたか。


ヒスン:韓国は、1月20日くらいに武漢から帰国した5、6名が発病していて、その人たちから始まりました。韓国は2016年くらいにMarsというコロナウイルスの一種が国内で広まってしまった過去があって、病院の中に感染が広まって大変だったので、その時から今実施されているようなウイルス対策のシステムを徐々に作り上げていたんです。だから、最初の感染者が出た時から、どういう風に隔離、治療するかという対策を練っていて、最初から国民にも情報を公開しつつ、それの通りに実行していって。回復した方も亡くなった方もいる中で、収まりかけて感染者が30人くらいになった時に、とある団体が莫大な感染者を作ってしまって多いときは一日700人もの感染者が出た。その時に、日本や他の国もやっているように、感染者がどこに行っているかという経路を見やすいようにネットでマップ上に公開して、みんなに警戒してもらえるようにして。
韓国は検査ができるキットを早めに開発してその精度を上げたことが一番良かった。体調が悪くなって感染が疑われたときは、その人たちの検査ができるようにたくさんの対応策を作って、ドライブスルーの検査などのアイデアを早めに取り入れて採用して、検査の機械と場所を多数作って取り掛かったのが早かった、それがよかったと言われています。韓国は空港は閉鎖しませんでした。入国してくる人に対しても、自分の国だけじゃなく、世界のみんなで今のウイルスに対しての危機を乗り越えなきゃいけないということで、自分の国のやり方に沿って従ってくれる人たちはちゃんと受け入れて、検査、隔離したり、自国の国民と同じように対応していたらしい。一部で悪い話も聞こえてくるけど、一応政府の方針はそうで。あと、武漢にいる韓国籍の人たちでどうしても帰ってきたいという人に関しては特別に飛行機を送って、希望したらその家族も一緒に帰国できて、帰ったら専用のバスで隔離場所に移動して、治療ということを徹底的にやったと聞いてます。





――ありがとう。台湾はかなり初動がはやかったことが感染を抑えられてる要因だと言われているけど具体的にどんなことしたかを教えてください。


シン : 台湾の状況を簡単に説明します。4月3日現在で国内での感染者は363人、5名が死亡となっています。


――これは非常に低い数字だよね。


シン :台湾では1月20日、ほぼ中国と同じ時期に政府が防疫機関の対策センターを作りました。台湾では百万人以上の人が中国で仕事をしていて、台湾と中国の間を頻繁に行き来しているので、どういう風に防ぐか、政府も最初の段階から強い警戒心を持っていました。政府機関では、防疫に対応する政府の大臣は医学の背景を持っている人がとても多くて、ちゃんとはやく対応法を国民に伝えています。具体的には、1月下旬からテレビで、手洗いをするということやマスクをつけるということを徹底したらウイルス感染を防げるということを24時間ずっと放送しています。だから新型コロナウイルス感染症が怖いという国民の意識は高いんです。WHOの情報を待つのではなく、自ら対策をとったのがパンデミックにならなかった理由だと思います。今日も家族に電話しましたが、今はみんな普通に生活しています。外に出かけたり、マスクをしてお店もやっていますね。


ーー中国も韓国も日本も外出の自粛や制限を求めてるんだけど、台湾だけはそうじゃないんだよね。もちろんみんな気をつけているんだけど、政府からそういう要請が出ていないというのはびっくりしたし、すごいと思った。


シン:それはどういう人が感染するかということを徹底して調べて、対応してるから。隔離の対応策は、自主管理(外出可)、自宅隔離、集中管理の三段階にわかれています。自宅隔離の人の家族や、家の構造から二次感染のリスクが高い場合は、用意されたホテルに泊まることになります。やっぱり感染は海外から来てる人が大半なので、空港検疫があって、海外から来た人は14日間隔離をしなくてはいけないんです。空港では防疫タクシーみたいなもので自宅かホテルに送ってもらって、そこから14日間は誰とも会えない。食べ物とか生活必需品は政府の人が部屋の外まで持って来てくれる。防疫きっとの中にはちゃんとしたお菓子やNetflixやLine TVの一ヶ月お試しプランなども含まれており、メンタル面のサポートもされています。ちゃんと消毒したパソコンやゲームも持ってきてくれて、そこまでメンタルメンタルケアしてくれて。自宅隔離している人のことは携帯の位置情報ですごい厳しく監視しているので、もし外出がバレたら高い罰金を支払うことになっています。こういう風に、徹底的にやることによって防いでます。


――今韓国と台湾の話を聞いて、初動が早かったり対応がクリアだったりで、やっぱり今日本が置かれている状況とは全く違うなという感じがしていて。反面、1、2ヶ月前くらいの中国と今の日本はわりと似てるような環境で、みんな何をどうしたらいいかわからない状況で過ごしている。今自宅で過ごそうねという時間が日本には訪れていて、中国もちょっと前までそうだったと思うんだけど、その時の自宅での過ごし方を教えてほしい。どういうことを言われて、どのくらいの頻度で外に出てていたか、メンタルヘルスのことも教えて欲しいな。


ケント: 本格的に外出の制限が始まったのがまずは震源地と言われる湖北省・武漢。1月23日くらいから湖北省の武漢、黄岡などいくつかの場所で始まって、少し経ってから、全国の各都市で外出するときは外出許可証が必要になった。きちんと理由がないとダメだし、毎日出れるわけじゃなくて2日に1回とかで、きちんと身分登録証明をしている人じゃないとマンションに入れないとか、すごい厳しい外出制限をしたんだよね。ちょうど外出制限の始まりというか、病気が蔓延する直前が旧正月で、旧正月は日本の正月と近くて、外の店が全部閉まって、もともと何も言わなくても人が1週間くらいは家に家族と一緒に篭ってお祝いをするみたいな時期。だから結構みんながある程度余分に食料を買っておいて、1ヶ月先の分まであるかと言われたらないんだけど、長持ちする料理を作り置きしていたり。外出制限が始まってからは買い物の回数とかに制限があるから、一回外へ行ったら1、2週間分買うので、すごく並んでたくさん買ってというので、一時的にお店が品薄状態になったんだよね。家の中にずっと籠らせるためには物資の供給は途切れさせたらダメだから政府がどんどん備蓄の米や肉、野菜だったりを送って、特にロックダウンが厳しい湖北省とかに集中させて、物質的な欠如が無いようにある程度は気を配ってくれた。
メンタルヘルスの話では、ロックダウンがだんだん解除されてきて蓋を開けてみると、PTSDとかメンタルヘルスに問題を抱えてる人、特に子どもがたくさん見つかってきて、ずっと家にいるのが子供に限らずだけど精神衛生上に良くないってことが段々わかってきたんだよね。みんなどうやってそれを解決してきたかという記事も読んで見たんだけど、僕は結構インドア派なんだけど、インドア派の人間にとっては、テレビを観るとかゲームをするとか、色々な手段がある。政府ももともと5Gを実現させる予定だったのを、多分人が家に居てストレスが溜まらないようにという考えで、さらにはやく5Gを実現させ、通信速度をめちゃくちゃあげた。それで通信速度のストレスがなくなって、娯楽とかエンタメ系が拡充されて。もともと外に出る習慣がある人にとってはすごく辛い、例えばお医者さんに行きたくても外に出られないから、オンラインでお医者さんとやりとりできるようにしたり。子供も学校に行けないからオンラインで授業をやったり。政府も民間の企業も、メンタル的なところはできる限りオンラインでサポートしていったかな。それでも蓋を開けてみるとPTSDの傾向がある子供が増えたから、その全部が成功だったかというと、全てはカバーしきれなかったんだろうなと思う。やっぱり生活がまるっきり変わってしまったからそれによるマイナス面は大きかったんだろうなって。


――中国の人たちはほとんど1ヶ月間家にいて、そこから徐々に緩やかに外に出ていいということになって。そうなったときに子供がPTSDの症状を抱えるというのは教訓というか、日本人の私たちが先に知っておいていい情報だと思う。


ケント:そうだね。やっぱり子供って、もともと外に出て人と交流したい、刺激を常に求めていたいって感じだし。家庭によっては、ずっと両親の元にいたいというより、友達と遊びにいきたいっていう子供もたくさんいるじゃない? 夫婦関係が良ければいいんだけど、例えば共働きで、夫婦の会話も少なくて、ちょっと冷めてる感じとかだと結構家にいにくかったりするし。武漢はわりと地方では大きな街だから、地方から働きに出てきている人も多いんだって。そうなると、大体は核家族しかいなくて話す相手が自分と両親しかいない。多くても3人。おじいちゃんおばあちゃんがいるわけでもないから、親と子供の間でちょっとでも摩擦が起こったら、学校に行って友達と遊んだらなんとか解決するよねみたいなのもなくてなってしまう。問題や摩擦が起きたらそれがずっと心に引っかかりやすいというか、そういうのを抱えていると段々と精神衛生に問題が出てきてしまうみたい。





――その状況はどこの大都市でも同じだよね。NYやイギリスも狭い部屋や家に家族が全員住んでいたり、一人で住んでる人も多いから、やっぱりメンタルヘルスは重要だなって思った。オンラインでお医者さんと繋がるって話で、韓国や台湾でもその動きが強まってるという話を聞いたんだけど、韓国ではオンラインで診療できるシステムは具体的にいつから始まったのかな?


ヒスン:私はその情報は調べが足りなくてわかってない。COVID-19に関しては、日本と同じように電話相談してから、発熱が4日以上続くような深刻な状態だったら病院行くというシステムになっている。自己隔離してみてそれでも病状がすごくひどかったら病院に行くことになるんだと思うんだけど、オンライン診療はわからないな。メンタルヘルスケアはネットでもできると思うので、そういうセラピストシステムが増えることを期待してます。


――韓国と日本は世界で自殺率が1位と2位で、潜在的なうつ病患者も多いと言われていて。一人で過ごすことも増えると思うからもっとオンラインで繋がる環境になっていくといいよね。台湾はどうかな。


シン: 台湾国内でもまだなるべく病院に行かないようにしていて、医療システムは負荷できる範囲内です。海外に住んでいる台湾の人が自主的にFacebookでコミュニティーを作りました。COVID-19の知識をシェアしてくれて、もし病院にいけない場合は自主的にその人のコミュニティでサービスするお医者さんが200人くらいいて、問題があったら色んな人がみんなでコメントして回答するというようなものがあります。


――病院に行く前にまずいろんな人に聞くというのは、いま日本でもどこの国も医療崩壊の手前だからだよね。


ケント : もし何か重大な病気とかを抱えているときに、遠路遥々、病院に行って診療しなくてはいけない。そうなるとそれぞれが大変だから、まずオンラインで診断、通院が必要だったら行くという感じなんだよね。それが今回うまくいってわかったことが接触が一番危ないということで、それを減らすためにも例えば肺炎の患者さんとそれ以外の患者さんが一気に来て院内感染をするというのを防ぐためにも、患者とお医者さんがスクリーンで物理的に隔てた上で一回診断するというのがすごく功を奏した。段々と数字ではゼロに近づいて来てるからそれは本当によかったと思う。


――日本と台湾、中国、韓国の大きな違いは、SarsやMarsを経験してるか経験してないかだとは私も思っている。中国は少しずつ自宅待機が解けてて、人が外に出てるという話を聞いたんだけど、そのあたりの話を詳しく教えてください。


ケント:移動の制限が始まったのが1月の中旬で、一番厳しい移動制限が湖北省。湖北省の人は住んでるアパートから出るにも許可証が必要だし、省から出れなかった。そのほかの省だとそこまで厳しい省令はないけど、外出許可証とそれぞれが出る時にいろんな防御服を着込んだり体温検査もしないといけないから、自然と徐々に人が移動する習慣が減っていって、3月の頭くらいになって数字的にも落ち着いてきたから、政府ももう仕事に行っていいですよという宣言を出して、3月の中旬から終わり、今にかけて段々と街に人が戻って来てる状況なんだよね。でも人の行動様式というか、行動がガラリと変わってしまって、わかりやすいところでいうと例えば、中国は外食文化が根付いてるから、週の7割以上は外で食べるのが当たり前だったけど、この事態になって、なるべくみんな早めに退勤して家でご飯を作るとか、昼飯も外を出歩かずにお弁当を作って持っていくとなって、日本もいまそうなってきてると思うけど、外食産業はすごく打撃を受ける。例えば、単価が低くてたくさんお客さんを入れるスタイルのお店だとクリティカルにヒットして、料亭みたいなお客さんが少なくて単価も高いところだとそこまで影響は少ないのかな。街に少しずつ人は戻ってきてるけど活気がない、外食も行かない、旅行にも行かないという感じで、人の消費行動がガラリと変わって、それに伴っていろんなところで変化を迫られてるというか、変化をしなければもう生き残れないみたいな感じ。中国では各所リストラクチャーが起こっている最中ではあるね。


――中国だけじゃなくて今後台湾や韓国もそうだし、日本も同じ道を歩むと思うんだよね。ヨーロッパやニューヨークもみんな生活様式が変わっていく。日本ではまだ自粛してくださいとしか言われてないから何をどうするかが個人の判断に委ねられていて。私や周りの子達はStay Homeをしてるけど、外に出て普通の生活をしている方もいる。これに関しては個々の事情があるからバッシングをしたいわけじゃないというのはクリアにしておきたいんだけど、その上でも意識の格差はあるって思ってる。韓国や台湾では個々の意識格差はどういう状態なのか教えてほしいです。みんなCOVID-19に対して一丸となって何かアクションを起こそうという感覚になっているのか、それとも日本みたいに格差があるのか教えて欲しいです。韓国から教えてください。


ヒスン :韓国の人は、何か正しいことをしようという民衆の意識が高いので、今回の事態で不便なことがあるから大変だけど、みんなで乗り越えようという意識で動いていて上手くいってる。私が見る限りは、そうやって乗り越えようとしているのは見える。でもお花が咲いてしまったとかで出かけてしまう人たちはいるんだけど、強制しなくても自発的に仕事でもプライベートでも自粛するのは当たり前だから、意識は高い方なんじゃないかなって思ってる。


――韓国は日本と同じように、自粛要請を推奨しているという状態なんだけど、もしCOVID-19だとわかってた上で2週間自宅待機せず外出してしまったら、罰金とかってある?


ヒスン:あります。外に出たのがバレたら300万ウォン、日本円で30万円くらい払う。


――台湾は普通に経済活動して、生活しているから、罰金とか自粛要請とかないと思うんだけど、もし感染者が外出したら罰金とかあるのかな。


シン:罰金はその人の収入や財産に準じて、あとその人がどんな反抗をしたのか政府が判断して金額を決めます。海外に住んでる人がまだ隔離しなければいけない期間に渡航しようとして、その人が台湾では財産を持っていない場合、それ以外の保険を止めるとかいろんな方法で罰則を科すようにしていました。国民の意識でいうと、出かけるときは必ずマスクをする。だいたい90%くらいの人はマスクをする、そしてマスクをしていないと変な目で見られるから、やっぱりしなきゃいけないという意識になります。みんな一つの心でコロナを乗り越えるという意識はあると思います。


――それぞれ国で意識レベルが高いのには理由があるんじゃないかと思っていて。韓国と台湾の若者の投票率はどのくらいかというのを教えてほしいです。韓国はすごく高いよね?


ヒスン : 韓国は10代も特に大統領選挙とかは70%くらいだったかな。20代前半が77%とかで、20代後半が75%と聞きました。


――台湾はどのくらいの投票率だったかな。


シン:前回の投票率は70%でした。今までで投票率が一番高かった。政治家も若者がわかりやすいようにいろんな宣伝をしています。Facebookのアカウントを作ったり、選挙チームにも若者がいっぱいいて、わかりやすい動画やイラストなどで政権を説明しています。政治は自分からそんなに遠いものではないと台湾の若者は思っていて、自分の未来は自分で変えるという意識が高いと思います。COVID-19に政府がちゃんと対応しているのも、1月の選挙でちゃんとできる政府を選んだから良かったんだとみんなよく言っています。


ヒスン : 韓国もあと10日くらいに国会議員の選挙があるんだけど、今ちゃんと対処してる与党が評価がされると思う。みんなCOVID-19ですごく大変だけど、ちゃんと投票場所も消毒したり、感染の症状が出ている人の票をどうするかとかも練っていて、わかりやすく説明してるから、みんな頑張って投票に行こうと思っているらしい。


――中国は1党しかないのと、ケントくんはほぼ日本人だから、この話は難しいのかもしれないんだけど、初めは新型コロナウイルス感染症を隠蔽しようとしたという話あったとかで、そのあたりもお話聞かせてもらいたいです。


ケント: 皆さんご存知の通り、中国は1党しかないから対立意見がないんだよね。各政府や要人が何をやっているか、何かやってて、妥当性は何か、正しいのかどうかというのを疑問を思っても議論する機会がない。意見を言う人がいないみたいのがほとんどで、最初の感染症ができたのは公式では一応1、2月と言ってるけど、報告自体はもうちょっと早くて去年の早いうちだったんじゃないかとか。メンツの問題もあるし、公に出す前に自分たちで内々に封じ込めてしまって、表面化する前にきちんと処理すれはその問題は無かったことになるという心理だと思うんだけど、そういう部分があってこの問題が表面化するまでに時間はすごくかかった。多分今年の1月くらいになって、いよいよこれは地方の役人レベルの手には負えないと中央政府にメッセージを届けていて。中国も中央政府と地方の関係はすごく複雑で、中央政府の意向が地方に届くまでで何かが変わってしまったりとかよくあるんだよね。中央も病気があると言う情報は受けてるけど、一向に地方が情報をアップデートしてこないということで、Sarsの時も最前線に立っていた鍾 南山という、政府への反対意見も躊躇わずにガンガン言ってくれる83歳の伝説のお医者さんを派遣して、そしたらこれは大事だとすぐに戻ってきて、中央政府に提言して、政府が公開したという感じ。党や政治の中での力関係がすごく複雑だから、一つの物事がストレートに上がってこないで、何周もして出てくるというのが、初動がうまくいかなかったことだと思う。


――なるほど。質問が来てるんだけど、韓国はオンライン選挙みたいなものってあるの?


ヒスン:オンライン選挙はないけど、事前投票があって、当日に来れない人のために5、6日前くらいに2日間くらい設けられています。当日は1日限定で、自分が行かないといけない。代理はたてられない。


――見てくれている人から失業率とその対応についての質問もあったけど、これに関してはどの国もまだ計算中というのが現状だと思う。私が調べたのが、2月の時点ではアメリカは4.4%、日本は2.4%。最新統計はまだだというのと、それに対してのそれぞれに政府の対応がどうかは判断プロセスの途中だから、一概に言えないと感じます。最後に3人からメッセージあればよろしくお願いします。


ケント : 震源地の中国から日本の皆さんへ一言いうとしたら、本当に今が重要な時で、3週間前のニューヨーク、1、2ヶ月前の中国、韓国と同じ状況だと思うから、かかってもいいやと思うのは本当にやめてください。医療崩壊が起きたら、病気にかかってもお医者さんがいないんです。肺炎以外でも骨折したとか、急に心臓病になったと病院に行ってもお医者さんがいない。こういうことを言うのは悲観的かもしれないけど、お医者さんも亡くなるんです。今は大丈夫だからって外に出て、2週間後に病気になっても誰も面倒をみてくれない。仕事で2週間給料が発生しなくてもいいとは言わないけど、その後安泰に過ごすために2週間くらいはいま最大限にできることをしよう。今を、本当に気をつけてほしいです。


――中国ではかなりの規模の医療崩壊が起こったけど、実際にケントくんのいる地域ではどこまで回復しているのか聞きたいということです。


ケント : 回復はまだまだ全くできていない。震源地の湖北省でお医者さんもたくさん亡くなって、いま各省、例えば北京、上海、大都市もそうだし、地方からもお医者さんを絶え間なく送ってる。どんどんお医者さんが亡くなっているから、いくら送っても足りなんだよね。いま僕が住んでいるところでも、お医者さんがみんな出払ってしまって、病院自体の医療資源がどんどん乏しくなってしまっています。これが回復するというのには2通りあって、一旦お医者さんが帰ってくること、もう一つは新しくお医者さんを生み出すこと。2番目は時間がどれくらいかかるのか全然わからないけど、1番目に関してはお医者さんが帰ってきても2週間は隔離されなきゃいけないから、医療資源が完全に回復することはかなり先だと思う。だから、いま肺炎にかからずとも、他の病気にかかることが本当に怖い。


――シンちゃんとヒスンからもメッセージどうぞ。


シン : 私は一人で日本に住んでいるので、もしかかってしまったとしても、現在の日本の入国制限が理由で家族が日本に来れないんです。医療崩壊してちゃんとした治療が受けられない場合は、一生家族や友達と会えずにここで孤独死することになる。それはすごく怖いので、家から出ません。どうしても出ないといけない時には、絶対にマスクをつけて、帰ってきたら消毒と手洗いうがいをする、これを毎日意識しながら生きています。


ヒスン : 自分と自分の大切な人を守ることは、自分しか出来ないから、それを自覚して過ごせば大丈夫だよ。



――ケントくんは外を歩く時ゴーグルつけてるんだよね。


ケント : 中国では買える人はゴーグルも用意して、外を歩くときに着けてます。家に帰ったらゴーグルや帽子を消毒して、洋服はすぐに洗濯することを徹底して胃ます。あと手袋もつけてる。

――中国は外出制限がどこの国よりも厳しかったと思うけど、週にどのくらい外出してた?


ケント : 僕が住んでいるところはそこまで厳しくなかったから、週に2回くらい出ていた。ゴミも捨てないといけないし、食事や食材を頼んでも取りに行かないといけなかったり、家にいるとやっぱり鬱々とするからそれくらいは外に出るようにしてたけど、人と会いたくないから夜中の24時から2時の間にすごい早歩きでって感じ。もし人が歩いてたら、2メートルと言わずに10メートルくらい離れて歩いてた。ほとんどの人がそうしてるんじゃないかな。


――今回ここで話したことは、これが絶対じゃないから、見てくれた人が自分の中で解釈して、私たちと全然違う考え方をもっていてもいいし、各々の考え方に託す中での一意見として捉えてくれたら良いと思います。Stay Safeでまたみんなとオンライン飲みとかできたら良いなと思っています。ありがとう。






Jo Motoyo
映像ディレクター/フォトグラファー。TOKYO所属。脚本・監督を務めたショートフィルム『0時(英題: Midnight)』で若手ディレクターの登竜門「Young Director Award」や「Fabulous Five」を受賞。昨年開催されたTsutaya Creators’ Programで審査員賞を受賞し、映画監督としてのデビューが決定。アートプロジェクト「Besso」での活動のほか、ファッションブランドもリリース予定。
https://www.jomotoyo.com
https://www.instagram.com/jomotoyo/
*掲載した写真はJoの台湾での撮影のオフショットから

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