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text by Ryoko Kuwahara
photo by TAKAO IWASAWA

Interview with Daisuke Fujiwara from GLAMHATE




Daisuke Fujiwaraが手がけるカルトブランドGLAMHATEが2月20日に初のショーを行う。青山学院大学在学中にブランドを立ち上げ、“HATEDIE”をテーマに掲げたムービーを制作。1日限りの上映にもかかわらずシーンにインパクトを与え、続くセカンドコレクションではアートを交えたインスタレーション/ZINEの製作など既存のシステムにおもねらない挑戦的なスタイルで独自の存在感を示し続けてきた。“SURRENDER(超降伏)”をテーマとしたこのコレクションで、彼が東京に刻みつけようとするものとは何か。


――今回のGLAMHATEは“SURRENDER”がテーマということですが、このテーマを選んだ理由、そしてあなたにとってどういう意味を持つ言葉なのかを教えてください。


Daisuke「SURRENDERとは降伏、ここでは自らの意識そのものに平伏すことを謳っています。具体的に言えば名声や愛といった欲望や、喜怒哀楽に対して支配しようとするのではなく、ニュートラルなスタンスであろうということ。同時にセックス的な降伏、BDSM(Bondage Discipline Sadism & Masochism)を取り上げています。私は愛というものを認識しづらい体質で、いわゆるみんなが愛とするものに対して“なにそれ?”という感じで。唯一“これが愛なんじゃね?”と感じられるものがセックスなんですよね。私が思う愛とは、身に付けた心の武器装備を脱ぎ捨てて裸になれることであり、それが私にとってはセックスで。特にBDSMでは首を絞める手に、乱雑に犯される穴に、笑いにも苦しみにもとれる表情に、人間の本質を感じられるんです。ただひたすら自己に従い、社会に生きる上で必要とされる体裁を脱ぎ捨てた丸裸の状態、それが私にとっては愛です。愛とは、むきだしになること」




――そのテーマのもと、2月20日にはGLAMHATE初のショーを行われます。


Daisuke「最初で最後のショーになると感じています。私の美学の核には“ゲキテキ”があって、それは“劇的”であり“撃的”でもあるんです。GLAMHATEでは服飾品、映像やインスタレーション、ZINEなどの媒体を使ってきたのですが更なる“シアター”の核心を表したかった。私にとって一番正当な見せ方として、ショーという形式が必要だったんです。そしてそこで起こる全てが大いなる意思のもとに集まっている。それは、“人間である”という意識です。私の大好きなアーティストにより彩られる、たかが人間されど人間なヒューマンエクスポージャー。
私個人が好き、ということは絶対的である、そうやって独断と偏見で生きていくしかないーーそれは今回のコレクションを作るなかで発見したことなんです。言ってしまえば大エゴ。今まで自分はエゴを無くそうとする無駄な努力をしていたのですが、もう認めて吐き出してしまおうと。ただ私のエゴが美しいものなら人類、地球にとって良い影響になるな、という結論に至ってこのショーを決めました」




――これまでもDaisukeさんはエゴと率直に向き合ってこられていたように見えていましたが、そういう葛藤があったんですね。


Daisuke「そうですね……第三者というより自分自身に対してのエゴかな。“どうせわからないよ”という、諦めにも近い感情から発生するエゴ。特にGLAMHATEは最もパーソナルでハッタリがなく、発想源も自分しかないのでどう頑張ったってエゴでしかない、だからこそ周りの世界に発信するには変換しなければいらないという使命感があった。それが段々と“わからなければわからないでいい”と思うようになってきたというか。テーマは“降伏”という優しい皮をかぶってはいるのですが、内容はこれまで私が地球に遺してきたものの中で圧倒的に辛辣なものです。私以外にはどうせわからないし、理解する必要も別にない。理解しよう、なんてひどく傲慢だと思うんです」







――そこに至るまでに、何かきっかけがあったのでしょうか。


Daisuke「今までの作品は大きく影響しています。GLAMHATEのコレクションは私自身の思考変化であって。ファーストは“自己嫌悪”、セカンドは“ヴァンパイア”というテーマで社会に対する嫌悪を表現しました。これまでの2回は表面的な自分と社会に対する嫌悪感ですが、今回は嫌悪そのものに対する嫌悪なんです。“ヘイトに対するヘイトはラブなの? ヘイトなの?”というところ。そもそもGLAMHATEを始めたきっかけは、虚勢がわたしの中身を食い荒らしたことです。その虚勢を具現化した私のハッタリを作品にしてきたのですが、その設定に限界が来ちゃったんですよ。“なんで私がこんなに(世界に)優しくしてあげなきゃいけないの?”という思いがどんどん強くなり、2019年の4月に行ったドラァグショーでその思いが頂点を迎えて。ショーのテーマは“THE FAME”で、私含め人間が振り回されている名声というものに対して答えを出しました。あのショーをやった時点で、私は名声にしがみつくことができなくなってしまった。自分は何を必死になることがあるんだろうと、しがみついていたものから手を離して、飛びたった感覚。途端に目の前が真っ暗になりました、善悪を決める審判に私が成り代わった。黒が悪で白が善と決めるのはわたしだと。その気付きは大きかったです」





――ショーで名声というものに対して答えを出してしまったからには、それ以降はその自分の答えを裏切るようなことができない。それはとても誠実な姿勢ですね。


Daisuke「裏切ろうと思ってもできないんですよね。私の作品は自己そのもので、自分だけはマジで裏切れないじゃないですか。自分を裏切るフリをしてみんなを裏切るのは楽しいですけどね」

――嫌悪を嫌悪して、赦して、といったフェーズを経て、心境の変化やさらに強固になった思いはありましたか?


Daisuke「2018年の12月にシンディ・ローパーの“Unconditional love”という絶望的な愛を歌った曲を偶然知り、“When I see you I surrender”という歌詞がずっと頭のなかでリフレインされてこの感情が芽生えました。そこにある“I surrender”にはネガティヴさではなく、むしろ多幸感があって。勝ち負けに対して必死になるのってザコいなと思うし、私の掲げた白旗は誰にも汚すことができないなと。“SURRENDER”という言葉を思うと浮かんでくる情景があって、川の真ん中に立って上流から流れてくるモノを必死に塞き止めたり堤防を作ったりしていたのに、それをやめてただただ立っている、私の横を川が流れるだけ。自分の弱さ汚さ無力さに対して降伏する。勘違いしてほしくないのは、私の弱さはあなたの弱さや社会の弱さではないというところです。だから自分自身には降伏するけれど、あなたの弱さや社会の弱さに対しては降伏する気はさらさらありません」




――まだ言えないこともたくさんあると思うのですが、今回のショーをもう少し具体的に表現するとしたらどんなものでしょうか。


Daisuke「見せたいのは“人間”です。人間と言うとあまりに大きなテーマに感じますが、例えば欲望、嫌悪、愛、生死だったり、実在としての人間を見せたい。建前を身に付けすぎて見失われがちな、醜くて美しいホンモノの“人間”を見せたいんです。ファッションショーではないし、アートでもない、人間を見せたい」

――このショーは未成年も入場できるとうかがっています。


Daisuke「はい、見せたい一番の対象が未成年の子達なんです。ぶっちゃけ大人は見ても意味がなくて、2000年以降生まれのジェネレーションZの彼らにこそ絶対に見てほしいと思っています。ギリギリ目が腐っていない。ホンモノの人間を知るうえで、無駄なフィルターは要らないんです。ずる賢く作り込んだハッタリばかりを見せられ利用されているからこそ、彼らはホンモノを見ないといけない。ホンモノを見せる自信と使命感があります。そもそも今回のコレクションはジェネレーションZもインスパイア源になっているんです。もともとSURRENDER的な無関心/無欲というスタンスをもつ彼らは、一番ニュートラルな状態でショーを観てくれると感じています」




――そうですね。私は大人ですが、おっしゃるようにいろんなものを身につけているのが当たり前の状態になりすぎていて、そもそも何がむきだしかということももはやわからないかもしれない。


Daisuke「わからなくなってしまうのは、ホンモノのむきだしを忘れているからだと思うんです。今、ちゃんとむきだしってほとんど無いんですよね。そのくせ真実のふりをしている。私みたいに直球なハッタリでないからタチが悪い(笑)。むきだしになるためには自らに負荷をかけないといけないし、失うものもある。2日に1回は吐きそうなほど戸惑うし恐怖に襲われているんです。突き詰めたら生きている意味を無くすことになってしまうんじゃないかって。自分を殺して新たな自分を誕生させて、そうして人間は前進するしかないと思うのです」


――ショーに向けてお会いしている中で、どんどん研ぎ澄まされてる感もあり、一方で柔らかくなっている印象もあります。


Daisuke「私もそう感じます、他人に興味を持たないことは究極の優しさだから。とにかく自分の意識に降伏して、全て使い果たしてしまいたい。ゼロになる。ショーを見て下さる全ての方にむきだしになる勇気、ホンモノの美しさを感じてもらって、なにより私自身がホンモノの人間になりたいんです」





-EDEN-
2/20
20:00-23:00 SHOW”SURRENDER”
23:00-28:30 PARTY”ECSTASY”
@Contact Tokyo
https://www.contacttokyo.com
*1/20よりe+にて前売り券発売開始
https://eplus.jp/sf/detail/3209060001-P0030001P021001?P1=1221


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Photography TAKAO IWASAWA

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BOY-G MAHNE


Daisuke Fujiwara / NUGA TORYFIERCE
1995年生まれ。青山学院大学卒。GLAMHATEデザイナー、パフォーマー、PETRICHORコントリビューター、メイクアップアーティスト。
https://www.instagram.com/nuga.jp/


GLAMHATE
https://glamhate.theshop.jp
https://www.instagram.com/glamhate/
glamhate.xyz@gmail.com

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