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Fashion/Reborn:「時間を使って自分自身を見直したり、新たな技術を身につけたり、新たなインスピレーション源を見つけたりしています」Interview with Adi Putra

NeoL Magazine JP | Photo: Adi Putra Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


誰もが経験したことのないニューノーマルの時代に突入している中、クリエイティヴ業界では、アート/コマーシャルの垣根を超えて新たな側面から制作に取り組む姿勢が見受けられる。今回は、様々なバックグラウンドを持つフォトグラファーたちの創造力・技術への向き合い方を探りながら、華美な物語からストリートで巻き起こるファッションフォトグラフィーの過去・現在・未来においてどのような変遷が起きているのか掘り下げていく。
ジャカルタと日本を拠点とし、ファッション、コマーシャル、アートの垣根を越えて幅広く活動するフォトグラファー/ビデオグラファーAdi Putra。そんな彼が作品を通して映し出す淡く、鮮麗された空想か現実かわからない混成された幻想世界に誰もが引き込まれるだろう。曇り、日陰、日差しや加工などを駆使し、生み出された大胆なシネマ要素が強い官能的な空間には自由という感覚を垣間見ることができる。人生において経験した絶頂期、どん底に陥った頃の出来事をはじめ、日常生活のあらゆる場面で感じたことなどを作品に落とし込んでいるAdiの変化し続けるスタイルに迫っていく。(→ in English


ーー自己紹介をお願い致します。フォトグラファーになった経緯など。

Adi「インドネシアのジャカルタで生まれ、映画製作について学ぶため、18歳の頃にロサンゼルスに移住しました。6年前、大学を卒業してからフォトグラフィーを始めました。最初は、ミュージック・フォトグラファーとして地元のライブやフェスティバルで撮影していました。そうやって無料でショーを観に行き、友達も作っていきました。ですが、もっと自分の創造力を活用できる作品を作っていきたいと考え、ファッションフォトグラフィーの世界へと飛び込んでいき、そこで自分の中で手応えを感じました。以前は、フォトグラファーのEliot Lee Hazelのアシスタントをしていました。早い段階で彼の作業を目にし、たくさん学ぶことができました」

ーー過去にフォトグラファーEliot Lee Hazelのアシスタントを務めたことがあると言っていましたが、彼のどのようなスタイルやテクニックが今のご自身の作品に反映されているとお考えですか。

Adi「短期間にわたり、彼のもとでインターンとしてアシスタントを務めていました。はじめは、彼の作品に惚れて彼のもとで働くようになりました。シネマティックな空想的な要素が満載の彼の作品に惹かれました。当時は、まだ初心者で、写真について何も知識がありませんでした。彼の作業を見て、使用する機材について学んだりしていました。Eliotはアナログカメラやフィルムを使用しており、それが今でも自分の栄養になって、道筋になっていると思います。また、既存にない革新的なテクニックを用いながらも、タイムレスな作品を作り上げているのが憧れです」

ーーどのようなプロセスを経て、現在のスタイルに至ったのかお聞かせください。

Adi「人として成長する中で、自分のスタイルは自然と発展していくんだと思います。始めたばかりの頃と比べると、今はとても異なるスタイルを貫いており、それは常に変化し続けていくのでしょう」

ーーどのように自身の個性/アイデンティティーを作品に落とし込んでいますか。また、どのようにそれを極めているか教えてください。

Adi「自分の作品に意味合いを持たせるのはあまり好きじゃないです。フォトグラフィーはやっていますが、特定のスタイルを持つファッション・フォトグラファーとして括られたくはありません。私はもっと流動的で、もっとそれより解放的でありたいんです。作品が私自身の全てを表しているとは思っていません。あくまでも私の一部であり、私のアイデンティティーは作品だけで収まりきれません」

ーーファッションフォトグラフィーは自分にとってどのよう意味合いを持っていますか。どのようなことを表現することができますか。

Adi「ファッションフォトグラフィーでは夢を描くことができます。写真という形で自分の中にある様々なファンタジーやアイデアを反映させることができます。現実から離れ、自由を味わうことができます。作品を創る中でそれが一番楽しいですね」

ーー作品をクリエイトする際、心掛けることはありますか。

Adi「普段は自分の頭の中でアイデアを思い描き、時間をかけてそれを作品に落とし込んでいきます。時にはあるイメージ、自分の気持ち、聴いている曲からインスパイアされることもあり、それを書き出します。そのアイデアを紙にスケッチし、そこから製作を始めます」

ーー撮影の際、ライティングなどこだわっている点がありましたら、教えてください。

Adi「本当のことを言うと、私はあまりデジタル操作について詳しいわけではないので、それを今学んでいます。アイデアやムードに重点を置き、その後にライティングについて考えます。個人的に自然光で撮影するのがすごい好きです。一番ムードを醸し出してくれると思います」

ーーインスピレーション源はどこから湧いてきますか。

Adi「多くは、自分の人生において経験した絶頂期とどん底に陥った頃の出来事からインスパイアされています。それにより、自分の中で何が好きか好きでないかを選別できます。ですが、インスピレーション源はどこからでも湧くと思います。例えば、吸っている空気、飲んでいる水、聞いている音楽など」

NeoL Magazine JP | Photo: Adi Putra Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara

 

NeoL Magazine JP | Photo: Adi Putra Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


ーーファッションフォトグラフィー/アートのフォトグラフィーの垣根についてどうお考えですか。

Adi「どのような形状の写真もアートであり、人々の感情を掻き立て、社会に向けてメッセージを発信する手段の一つがアートなんだと思います」

ーーどのように現代の流れと自身のスタイルのバランスをとっていますか。

Adi「もちろん、トレンドは創造力を発展させるという意味で良いと思います。ですが、ここでのキーポイントは、トレンドが途絶えたとしても時代を超えて価値を持ち続ける作品を製作していくことです」

ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ファッションフォトグラフィーの業界においては、どのような影響がありましたか。

Adi「ファッションフォトグラフィー業界は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックで、とても影響を受けたと思います。ほぼ撮影することは不可能になり、今はファッションだけに焦点を当てるべきではないと思います。創造力を用い、生産性を踏まえ、お互いを助け合うべきです。ですが、もし撮影をしなくてはならない場合は、できる限り自宅で他人との接触がないよう心がけるべきです」

ーーSocial isolation(外出自粛)の期間が長引いている中、自身のクリエーションに対する捉え方などに変化はありましたか。

Adi「もちろん。実際のところ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックの期間中は、あまり作品を作っていません。その代わり、時間を使って自分自身を見直したり、新たな技術を身につけたり、新たなインスピレーション源を見つけたりしています」

ーー今後、新たにチャレンジしてみたいことはありますか。

Adi「もちろんあります。将来製作する映画についてのアイデアを今は練っています。また、個人的な写真のシリーズもやりたいですね。そのほか、初となる写真集の出版と東京での個展の開催に向けて現在準備している段階です。挑戦することはたくさんあるので今後が楽しみです」

ーーこれからどういう風にファッションフォトグラフィーは変化していくとお考えですか。

Adi「そこまで変化することはないと思いますが、以前の日常に回復するまでには多くの時間を要すると思います。このご時世、多くのクリエイティヴ業界の人々は不安を抱えています。ですが、明るい面を見ると、事態の収束後は、たくさん新しいアイデアが世に出されると思います。今はただ早く収束することを願うだけです」

NeoL Magazine JP | Photo: Adi Putra Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


Photographer: Adi Putra
IG @adipvtra
HP adiptr.co


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