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text by Shoko Mimbuta
photo by Yudai Kusano

食堂物語:AAAMYYY「食への向き合い方から曲作りのルーツを探る」自宅インタビュー


音楽だけでなく、ファッションモデル、コラムの執筆など様々な分野で活躍をみせているAAAMYYY。ツアー中は外食が多いため、普段は家で食べることが多いという彼女は、農業を生業とする家に育ったルーツを愛し、料理を愛している。そんな彼女の自宅へお邪魔して実際に夕飯を作ってもらった。彼女の食への関わり方は、クリエイティヴへの関わり方にも似ている。


ーーおじゃまします。いい匂いがしますね。


AAAMYYY 「どうぞー!先に下ごしらえから始めていました」


ーー和室とてもいいですね、癒されます。自宅でのインタビューは初めてですか?


AAAMYYY「和室のほっこりした感じが、とても気に入ってます。自宅インタビュー以前一度やったかな? ほぼ初めてです」


ーーNeoLでは、2回目のインタビューになります。前は、2018年3月だったので約2年前となりますが。音楽や生活にどのような変化がありましたか?


AAAMYYY 「前回はソロでのインタビューだったと思うんですが、ちょうどまだTempalayでサポートをしていた時です。その後すぐに正式加入して、ライブの本数も増えてここ2年間でフェスなどにもたくさん出演してきました。並行して、TENDREチームでのライブサポートもしたりで、ソロの方もさらに注目されるようになりました。音楽だけで食べていけるようになったのは大きな変化ですね」


ーー今回は、食がテーマの企画となっております。近年はツアーの本数が増え、外食が多いので自宅にいるときは自炊が多いということで、実際に作ってもらいながらインタビューしていきたいと思います。今日は何を作りますか?


AAAMYYY「今日は、切り干し大根と、しらすと菜の花のおひたし、お味噌汁、そして作ったことないけどサバの味噌煮に挑戦してみようと思います。どうしても食べたかったので」


ーー楽しみです。すでに菜の花は茹でてあって、野菜などの材料は切ってありますね。手際の良さを感じます。海外で生活されていた経験もあるAAAMYYYさんですが、普段は和食と洋食どちらを作ることが多いですか?


AAAMYYY 「茹でた菜の花は食べやすい大きさに切って、醤油をちょろっと。しらすをのせたらだいたい美味しい(笑)。これで完成です。手際の良さは、飲食で働いていた経験も生かされていると思います。んー、どっちも作るけど、日本に生まれて育ってきたので和食が食べたくなることが多いです。お惣菜やお弁当のように冷めても美味しいのが、和食の良いところだと思います。ツアーの合間は自宅に篭って曲作りしているので、おかずの作り置きも良くします。実はティラミス用にコストコで買ってきた器なんですけど、お惣菜にちょうど良くて重宝してますね。あとはカレーを良く作るので、スパイスは数種類常備してあります」



ーー調理道具も音楽の機材に負けないくらいしっかり揃っていて、それぞれちゃんと使いこなしている感じがあります。


AAAMYYY 「そうですね、ミニマルに音楽を始めたけど、どんどん機材が増えてしまいました。料理も一緒でギアとかそうゆうの揃えがちかも。チャイ用の小鍋も買ったり、お茶をよく飲むので茶器も揃えました。切り干し大根も味付けします、なぜか大さじ小さじは持ってないので目分量です」


ーー目分量でいけるのはやっぱり作り慣れてる証拠ですよね。音楽と料理は通じるところもありますか?


AAAMYYY「そうですね、エフェクトのかけ方とかも目分量といったら目分量なのかも。料理のように最終的に美味しくまとまったら良いですもんね。料理も音楽も、経験と感覚が大切になってきますね。よし、サバに取り掛かろうかな」


ーー今日のメインディッシュですね。色んな食材を楽しめるのが和食の魅力だと思います。ご実家は長野ということで農家だと伺ったのですが、どのような幼少期を過ごしてきましたか?


AAAMYYY「自然が豊かで農業が盛んな人口3000人ほどの長野県の村で育ちました。実家もレタス農家で、実際に農業のお手伝いも良くしてました。思春期になると田舎が窮屈になって東京に出てきたけど、やっぱり疲れたり、行き詰まったりした時にリフレッシュしに帰りたくなるし、今では長期の休みが取れれば積極的に帰ります。自分とゆっくり向き合う環境として、自然てやっぱり良いですよね。パワーもらえるし、自分の曲作りのルーツはそこにあるなといつも思います」


ーー東京に出てきたばかりの頃は自炊してましたか?


AAAMYYY「全然。コンビニ飯や外食が多くてひどい食生活でした。当時は良く風邪をひいたり体調を崩していたと思います。やはり音楽も身体が資本なので、食への向き合い方は忙しくなってからより一層意識して気をつけるようになりました。一度ツアーに出ると外食が続くので、自宅に居る時はなるべく自炊するように心がけてからは、風邪を引かなくなりました。体調管理も仕事の一環です」


ーーサバの味噌煮から食欲をそそる香りがしてきましたね。食材を買うときのこだわりはありますか?また、ご実家の野菜や食材を使うこともありますか?


AAAMYYY「実家に帰った時に大量に持って帰ってきて、食べ切れなくてご近所の友達にお裾分けしたりもします。ツアーで長期間家を開けることも多いので、自分で買い物に行くことの方が多いですが。そんなにこだわりはないけど、旬は意識しながら、そのとき食べたいものを買ったり、スーパーに行ってから決めることもあります。地元産の野菜があったりすると思わず買っちゃったりして(笑)。そして、買い物には忘れずエコバック持って行くようにしてます」


ーーわかります、私も実家農家なので野菜届いたらお裾分けしたり、地元産の野菜とか買ってしまいます。音楽も料理も感覚で作ってるように感じます。


AAAMYYY「そう言われると、そうかも。レシピは見るけど、ある程度経験からくる感覚で作っている部分も大きいし、たまに実験してみたりとかして。その目分量の調整が私らしさだったりするのかも、音楽も料理もクリエイティヴですよね。サバの味噌煮もできました。初めて作ったから、大丈夫かな? お味噌汁も温まったのでいただきましょう」



ーー美味しそうですね!お味どうでしょうか?


AAAMYYY「自分で言うのは恥ずかしいけど、サバの味噌煮、初めてにしては美味しくできたと思います。味噌って地域によって特徴出ますよね。何味噌でした?」


ーーうちは自家製の田舎味噌でした、お椀の底に大豆のかすが残る感じの。以前、eimieでMVを撮る時にお手伝いする機会があり、一度ご実家にもお邪魔させていただきました。その時にお母さんに朝ごはんで出して頂いたお味噌汁がすごく美味しくて。感動して、あれ以来信州味噌にハマってます。具沢山なのもきっとお母さんの影響ですね。


AAAMYYY「そんなこともありましたね、あの時の撮影は深夜から明け方までかかって本当に寒かった。あんまり意識してなかったど、気付かないうちに母の味になっているものですね。いつも具沢山になってしまって、お味噌汁でお腹いっぱい。小さな村だったので、年に一回みんなで集まって一年分の味噌を仕込んだ思い出があります」



ーーeimieの時は、英語で歌っていたこともあって浮遊感のある掴み所のないような見せ方が多かったように見えますが、近年日本語でも歌うようになってからもう少し現実味を帯びてきた感じがあります。なにか心境の変化ありましたか?


AAAMYYY「見せ方に関しては、単純にカッコつけることに疲れてしまったということが大きいです。歌詞に関しては、日本を拠点に活動しているので日本語の歌詞の方がリスナーの方に届きやすく、自然体でいた方が共感を得られやすいなと実際に感じたから。AAAMYYY名義になってからよく地元に帰っていて、大自然の中ありのままの自分でいれる心地よさを再認識してからは、常にナチュラルでいることを心がけてます。表現したいと言う思いと、歌詞に込めた思いを届けたいと言うふたつのバランスがちょうど取れてきた頃からたくさんの人に聞いてもらえるようになった感覚はあります」


ーー昨年リリースした、1stアルバム『BODY』。私との共通の友人であり、AAAMYYYの師匠でもある人物の突然の”死”に対する曲もあって個人的のはとても感慨深い作品でした。背景を知っていると聞き方も変わってくると思います。アルバムの解説本として「ANATOMY/解剖書」も追って出版されたのはこのような背景があったからなの?


AAAMYYY「聞く人それぞれの解釈があっていいという考えもありましたが、この作品に関しては歌詞カードだけじゃ伝わらない部分もあると感じたため、背景を知ってもらった方がより心に響きやすいかなと言うことで、4人の仲間たちに協力してもらい解説本として作製しました。私の思いのこもった作品です」


ーー食事も一緒で生産者とか、調理してくださった人が見えると、安心感が生まれたり、より美味しく感じたりする。音楽も作ったひとの背景がみえると作品への解釈の幅が広がったり、より一層魅力が増すのではないかなと思います。


AAAMYYY「冷める前に、みんなでいただきましょう。お口に合うといいなぁ」



ーーでは、いただきます!一汁三菜とはまさにこれといった献立ですね。どれも良い塩梅で、身体に優しく沁み渡るお味、さすが作り慣れてる感じがありますね。おひたしのような副菜があるのがすごく嬉しいです。ご自宅では、おひとりで食べることが多いですか?


AAAMYYY「ツアーの合間に自宅にいるときは曲作りに集中していることも多いので、ひとりで食べることが多いです。タイミングが合えば、友人を招いて一緒に食べたりもします。ホームパーティーに呼ばれた時に、みんながローストビーフのような主菜を持っていく中で、おばあちゃんが作りそうな副菜を持ってくことも多くて、初めびっくりされますが、みんな和食は安心感があるのか人気で最終的に喜ばれます。誰かと食べるご飯もいいですよね。より美味しく感じる気がする」


ーーツアー中はもちろん外食が多くなると思うのですが、行くお店はどうやって決めますか?


AAAMYYY「ソロでもTempalayやTENDERでも共通して、大人数になってしまうけど、全員でご飯を食べに行きます。地方へツアーにいった際には、ライブハウスのスタッフさんにオススメのお店を聞いて行くことが多いです。あとはその土地ならではの調味料とか買いがちです。広島で買ったレモスコとか美味しかったです」


ーーみんなで食べるんですね、その仲の良さがバンドのグルーヴにも繋がってきているのが感じられます。今後の活動予定について教えていただけますか?


AAAMYYY「今年新しいアルバムを制作予定でしたが、現在ライブはもちろんレコーディングも再開できる目処が立っていない状況で。なので自宅にて曲作りを中心に音楽活動を続けています。最近活発になってきているオンラインフェスへも積極的に参加して行きたいです」





取材は2020年2月に行われた。

AAAMYYY
SSW/Track Maker
正式メンバーとなったTempalayでの活動やTENDREのサポートだけに留まらず、ソロ、CMの歌唱、楽曲提供、執筆作業と多岐にわたって活躍。オリジナル楽曲には彼女が確立した独自のポップミュージックへのフィロソフィーが息づいており、ミニマルな楽曲にのせられた耳に残るメロディーと日本語詞が整合性をもち、より強いメッセージ性のある作品に昇華される様に才能と研鑽の凄みを感じさせる。


Instagram @amy0aaamyyy
Twitter @amy0aaamyyy
HP https://aaamyyy.jp/
youtube https://www.youtube.com/channel/UCG5334b6jsxZ3suJCL0YYpw


ph:Yudai Kusano
text:Shoko Mimbuta
edit:Ryoko Kuwahara

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