Interview with Adan Jodorowsky and UMMMI. about 『Endress Poetry』neol.jp | neol.jp

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text by UMMMI.
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Takuya Nagata

Interview with Adan Jodorowsky and UMMMI. about 『Endress Poetry』

adan_ummmi2i | Photography : Takuya Nagata

アレハンドロ・ホドロフスキー監督による最新作『エンドレス・ポエトリー』が今週末公開される。自身の幼少期を詩的に描き、そのオリジナリティと芸術性の高さで世界を震撼させた『リアリティのダンス』の続編となる今作の主演を務めるのは監督の実子であるアダン・ホドロフスキー。前作に続き、サウンドトラックも担当するなど父と同様に多くのジャンルで活躍を見せるアダンと、アレハンドロ監督作品に多大な影響を受けたと公言し、自身も初の長編作品『ガーデンアパート』の公開を控える映像作家のUMMMI.による対談を敢行した。



——『エンドレス・ポエトリー』は、父親の自伝的物語を息子が演じるというものですが、それがフィクションでもドキュメンタリーでもなく、シャーマニズム的なエクスペリメンタルビデオとしてあるなと思いました。そういう中で演出されるというのはどういう状況だったのでしょうか。



——『エンドレス・ポエトリー』は、父親の自伝的物語を息子が演じるというものですが、それがフィクションでもドキュメンタリーでもなく、シャーマニズム的なエクスペリタルビデオとしてあるなと思いました。そういう中で演出されるというのはどういう状況だったのでしょうか。


Adan「監督が言っていたのは、自分たちの生命の樹、つまりこれまで繋がってきた家族を癒すためのものである。そして詩を通して人々の魂の美しさを描く作品だということでした。現場に行くまでどういう風に撮るのか全くイメージが湧かなかったのですが、そこに行って初めて父を発見したという感じです。これまでに『サンタ・サングレ聖なる血』や『リアリティのダンス』にも出演したけれど、今回は主演で、しかも父親を演じるということで、これまでとは全く勝手が違います。父親は自分の責任でカメラ位置や美術を決めて、ここからここまで動いてくれという指示をするのですが、あとは自由で全てが即興なのです。その演技を見てまた演出をするというタイプです。そこにおっしゃるように憑依のような、魔法のようなものがあらわれて成り立った。それは自分にとっても初めての経験であり、それで成り立つというのが不思議で仕方がありませんでした」


——セリフは難解でポエティックなものがほとんどでしたが、それも即興だったのですか。


Adan「会話自体は監督が作ったもので即興ではないのですが、そこで何をやるかというところで、マルセル・カルネによる『天井桟敷の人々』の位置にまで高めたかったのです。そのために全てが詩のような表現になっていて、特に私が愛を告白するシーンは『天井桟敷の人々』と同じようにパントマイムで行うというオマージュになっています」

——私もその映画が大好きです。根津に天井桟敷の人々というバーがあるのですが、名前の通りその映画のポスターがお店にたくさん貼ってあるんですよ。


Adan「それは素晴らしい。ぜひ行かなくては」

adan_ummmi | Photography : Takuya Nagata


——あなたも表現者で、様々な活動をされていますよね。今作でも音楽を担当していますが、活動のメインは音楽になるのでしょうか。


Adan「いえ、そうとも言えないです。始まりは幼少時代に出演した『サンタ・サングレ 聖なる血』で、20歳までは映画を作っていました。その後に音楽をやるようになったのです。2000年からは自分のMVを作るときにその中で演じるということをやっています。1日に2本は映画を観るくらい映画好きなので、映画を作って、メキシコのタランティーノになりたいと思っていますよ(笑)」


——(笑)。なぜタランティーノなんですか?


Adan「ギーク・ムービーだから(笑)。今はホラー映画の脚本を書いています。最初の60ページを書いているところですが、長編なのでまだあと60ページは書かないといけない。書き終わったら映画作りのための資金源を探して、初めて自分の映画の監督になれる予定です。3年前にも『The Voice Thief─盗まれた声』という映画を監督したことはあって、日本でもアップリンクからDVDが発売されていますが、それが私が手がけた初めての映画です。アーシア・アルジェントと一緒に作っていて、彼女が出演もしてくれています。音楽も作り続けるつもりですが、今は映画を作りたいですね」


——そうなんですね。父であるアレハンドロにはどのような影響を受けましたか?


Adan「初めて映画産業と関わったのが『サンタ・サングレ 聖なる血』で、とても影響を受けました。小人、ピエロ、サーカス、象と血のホラー映画。父が映画に関して全部教えてくれて、カメラの設置場所や俳優の指導の仕方など全てを学びました。子供だったから吸収するのはすごく早かったし、大変に楽しかった。ジョン・ウォーターズ、フェデリコ・フェリーニ、ルイス・ブニュエル、トッド・ブラウニングなどのファンでもあるので、父だけでなくいろんなものに影響されてきました。一番影響を受けたのは、日本のサムライ映画とウエスタン映画かな。例えば『座頭市』や『子連れ狼』の2つは特にお気に入りです。『座頭市』はいろんなバージョンがあるけれど、一番最初のオリジナルが好きですね」


——次のプロジェクトはどうしてホラー映画なんですか?


Adan「小さい頃からホラー映画ばかり観ていたので、自分の一部のような存在なんです。ホラー映画には限界がないですよね。政治に関わることもないし、指を切っても、頭を切ってもいいし、なんでもできる。モラルがなくてもいいんです。とても楽しいジャンルだと思います」



——家族と一緒にホラー映画を観てたんですか?


Adan「兄弟と観ていました。『死霊のはらわたⅡ』の大ファンで、『バッド・テイスト』という映画も大好きでした。『吐きだめの悪魔』もとても好きでしたね。ゴア・ムービーです。血が大量に出てくるジャンルです(笑)」


——(笑)。あなたも自分の監督する映画に出演する予定ですか?


Adan「わからないけれど、多分監督だけだと思います」

——映画を作ることで癒される、と言っているのを聞いたのですが、それはどういうことですか?


Adan「ええ。まるでヒーリングセッションのようで、人生で一番癒されるというくらいです。『エンドレス・ポエトリー』の撮影が終わった時、砂漠に行って髪を砂に埋めていろんなセレモニーをしたのですが、生まれ変わったようでした。映画の中で父親になるという体験をして、父のことをどれだけ愛していても一度は離れないといけないと思っていたのです。有名な父の息子という幸運を授かったわけだけれど、その影のような存在になる二世は多くても、同じような偉大なアーティストになる人は少ないのです。だけど、わたしは父親になることができたし、今は自分自身になれました。信じられないくらい素晴らしい気分です」


——すごく貴重な経験ですね。私も映画を作っているのですが、癒しとは言えないんですよね。映画を作るには経済的だったり人間関係だったり様々な問題があって。


Adan「みんなが映画を産業として考えてるからですよね。例えば、先日メキシコでビデオを作ろうとして時に、とても良いフォトグラファーに撮ってもらおうと話をしていたけれど断られました。『このビデオには予算がなさそうだ。これはビジネスだから、私は協力してくれる人にはちゃんとした金額を払いたいから難しい』と言われたんです。彼は、まるで銀行員かのように話し始めて……最悪ですよね。私は映画に関してそういう言葉は聞きたくない。私の父がやっていることは本当に素晴らしくて、彼は映画だけではなく、人にも影響を与えたいと思っている。映画は経験じゃないと意味がない。入る時に比べて、自分が全く違う人間になっているのが当たり前なはずなんです」


——その通りですね。自分自身でも映画によって変わったと実感していますか?


Adan「随分変わったと思います。不安や恐怖が減りました。ビジネスのことも気にならなくなりましたね。作ることが大切で、有名になることやお金はどうでもいいんです。おもしろいですよね。音楽を始めて、メキシコで大成功したんです。6千人の前で演奏して、ありとあらゆる場所にフリーで入れて、リムジンも用意されていた。でも自分が生まれ育ったフランスに戻って3年間を過ごしてメキシコに帰ってきたら誰も私のことを覚えてなかったんです。すっかり忘れられた人になっていたんですよ(笑)。その時、成功はただの幻覚だと気づきました。だから、なにか美しいものを作ることに集中することにしたのです。美しい作品を作ることが私の目標であり、喜びです。世界中の大半のアーティストのように、有名になるのが目標ではない」

——メキシコで起きたことはおもしろいけれど、大勢の人が海外でもあなたの音楽や映画などについて興味を持って話していて、それは一時期のものではなくずっと変わらないものだと思います。


Adan「間違えることもあるけれど、人生では何もかもやり続けるべきだと思います。1枚のアルバムでポップスターとして成功したけれど、それはどうでもよくて、とにかくやり続けることが大切なんです」


adan_ummmi3 | Photography : Takuya Nagata


——息子さんがいらっしゃるということでしたが、どのように接したいですか。


Adan「どういう風にとは考えておらず、好きに生きればいいと思っています」


——文化的に抑圧的な父とそれに反抗する息子の関係をアレハンドロ監督は描き続けています。あなたも父親から幼少時代に詩を朗読させられるなどの体験をしてきたわけですが、それはある意味逆説的に文化的な抑圧を受けていたのかなと思い、その二世代の関係がおもしろいなと。


Adan「いやいや、アレハンドロは素晴らしい父親ですよ。もしかしたら私は息子を育てるうえでミスを起こすもしれない。でも、ベストを尽くします。私の父がそうしたようにね。父親は神のように完璧な存在であるという勘違いをしてしまうことがありますが、それが落とし穴なんです。人間なので、父親だって間違いはする。それに気づいた時に自分には完璧な父親がいることがわかったのです」


——なるほど。最後に、今作はまさに芸術のための映画でしたが、あなたにとって芸術とは?


Adan「沈黙によって人の心に触れることです。純粋な真実が一番人の心を打つ。だから嘘をつかないことが大切なのです。私は小さいころからその訓練をしていて、今もまだ続けています」


エンドレス・ポエトリー_main_s


『エンドレス・ポエトリー』
11月18日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開



舞台は故郷トコピージャから首都サンティアゴへ。父親との軋轢や自身の葛藤を抱えたホドロフスキーは、初めての恋や友情、古い規則や制約に縛られない若きアーティストたちとの出会いと交流を経て、囚われていた檻から解放され詩人としての自己を確立する。
本作はフランス、チリ、日本の共同製作で、新作を望む世界中のファン約1万人からキックスターター、インディゴーゴーといったクラウド・ファンディングで資金の多くを集めて製作された、まさに待望の新作。
撮影監督は『恋する惑星』(94年/ウォン・カーウァイ監督)など、手持ちカメラを使った独特の映像で知られるクリストファー・ドイル。自身の青年時代を虚実入り交じったマジック・リアリズムの手法で瑞々しく描き、「生きること」を全肯定する青春映画の傑作。


監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影: クリストファー・ドイル
出演:アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、ブロンティス・ホドロフスキー、レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコヴィッツ
配給:アップリンク
(2016年/フランス、チリ、日本/128分/スペイン語/1:1.85/5.1ch/DCP)
http://www.uplink.co.jp/endless/
(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE




アダン・ホドロフスキー
1979年、フランス生まれ。ホドロフスキーの末の息子。『サンタ・サングレ 聖なる血』(1989)で映画初出演。その後多くの短編を監督する一方、ジャック・バラティエ監督『Rien, voila I’ordre』(2003)、ジュリー・デルビー監督『パリ、恋人たちの2日間』(2007)など、様々な作品に出演。またミュージシャン「Adanowsky」としても活躍しており、『リアリティのダンス』『エンドレス・ポエトリー』のサウンドトラックを作曲。

UMMMI.
アーティスト、映像作家。映像、執筆、インスタレーションなど様々なメディアで表現を続ける。現代芸術振興財団CAF賞 美術手帖編集長 岩渕貞哉賞受賞(2016) イメージフォーラムフェスティバルヤングパースペクティブ入選(2016) ポンピドゥーセンター公式映像フェスティバルオールピスト東京入選(2014) など。初の長編映画『ガーデンアパート』が公開予定。
http://www.ummmi.net/

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