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筆が残す一瞬一瞬に起こる事象を色彩や色の形態の偶然性として繋げながら、全体として移ろい流れゆくイメージ。安田悠「たゆたうままに時間の中で」


Between – landscape 2021, oil on canvas, 2021


ユカ・ツルノ・ギャラリーは安田悠の個展「たゆたうままに時間の中で」を2021年7月17日(土)から8月14日(土)まで開催。ギャラリーでの約3年ぶりとなる本展では、水の流れのように移ろいゆく事象や瞬間への興味はそのままに、イメージであると同時に物質としての存在を強める絵画のあり方を探求した新作のペインティングを発表する。


安田の絵画は、中間色の何層ものレイヤーが生み出す水の動きや、時間や空間の流れを感じさせる風景を連想させる流動的な世界が特徴的だ。初期作品に見られる日常の風景や心象風景として具象的に描かれた風景は、色彩の集合体が織りなす抽象的な絵画へと変容し、具象と抽象を行ったり来たりしながら安田特有のスタイルが追求されてきた。制作過程では、何かの具体的なイメージや完成図を目指して描かれるのではなく、各々の筆が残す一瞬一瞬に起こる事象を色彩や色の形態の偶然性として繋げながら、全体として移ろい流れゆくイメージが生み出されていく。


このような水の流れのようにとどまることのない事象への興味と実践はそのままに、近年は、使い慣れた刷毛や筆だけでなく、掃除ブラシやケーキ用ナイフなど用途が異なる日用品を積極的に使用するようになっている。安田は、従来と同じ身体的な動きをしていても絵画に残る痕跡の違いによって、親しんだ営みのなかに現れる自身の手ではコントロールすることが出来ないイメージとそのズレに面白さを感じると話す。新たな道具を使うことによって引き起こされるイメージの不確実性や、痕跡として残される物質的な差異から、安田は絵画の物質性への関心を強めており、新作の多くでは絵画空間に現れた流れを画面外へと放出させるだけではなく、絵画の画面上に流れを閉じこめるかのように、流動的な質感とは違う領域が描かれていたり、枠が強調されていたりする。これらは、絵画を取り巻く現実世界や表象世界、主体や客体、内と外といった異なる境界を曖昧化しながらも結びつけるように発展され、流れゆく瞬間や瞬間に揺れ動かされる様々な心の様相を引き起こしながら、イメージと物質的なあり方を行ったりきたりする絵画として描かれてる。
 

 
安田悠
1982年香川県生まれ。2007年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。これまでの展示に「VOCA展 2008」(上野の森美術館、東京、2008年)、「Art in an Office」(豊田市美術館、愛知、2011年)、「横浜美術館コレクション 光をめぐる表現」(横浜美術館、横浜、2012年)など。虎ノ門ヒルズレジデンスのパブリックワークを手がけるなど活動の幅を広げてきている。
 
 


安田悠
「たゆたうままに時間の中で」
会期:2021年7月17日 – 8月14日
開廊時間: 火 – 木、土 11:00 – 18:00、金 11:00 – 20:00
休廊日: 月、日、祝

www.yukatsuruno.com
Yuka Tsuruno Gallery 〒140-0002 東京都品川区東品川 1-33-10 TERRADA Art Complex 3F

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