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反抗するジョーク グラフィティアーティストMADSAKI個展「MADSUCKY WUZ HERE 2018」

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カイカイキキギャラリーは、2018年10月5日(金)より2回目となるMADSAKIによる待望の個展 「MADSUCKY WUZ HERE 2018」を開催する。
大阪生まれでニュージャージー育ちのMADSAKIは、2015年にインスタグラムで村上隆と運命的な出会いを果たしたのち、東京、ソウル、バンコク、パリで次々に個展を開き、彼の代名詞でもあるスプレー・ペイントを撒き散らした構図、そして大衆文化のなかで流布されるミーム(訳注:遺伝子によらず、模倣によって人から人へと伝えらえる文化やコンセプト、行動)の、卑俗で風刺の効いたアレンジという、見間違いようのない唯一無二のスタイルを確立してきた。現在ではスプレー缶や罵り文句に象徴されるMADSAKIだが、ストリートでのグラフィティの経験を持たない彼は、元々はブラシやローラーのみを使用する作家で、スプレー缶を用いるようになったのは日本に帰国してからのことだった。スプレー缶を用いた最初の作品は、数年前に制作された「Beyond Words」シリーズ。それは(しばしば卑猥な)英語のスラングがスプレー・ペイントで闇雲に書き殴られたキャンバス作品のシリーズで、アメリカの高校生が言うような、親しみを込めたからかい文句とも悪意に満ちたあざけりともとれる悪態やジョークで埋め尽くされていた。


それらの言葉は一見すると何も考えず雑にアプロプリエーションされただけのように思えるが、実は自分を育てた2つの文化に拒絶された作家の苦い思い、そして日本とアメリカの中間地点になんとか居場所を見つけようと彼が今も続けている苦闘に由来している。幼少期にアメリカに渡り、日本という出自がゆえに差別を受けたMADSAKIだったが、日本に帰国すると今度は逆に、アメリカで幼少期を過ごしたがゆえの疎外感をアメリカと同じように日本で感じることになってしまう。英語で話しかけられる相手が誰もおらず、言葉の壁を前に自分の殻に閉じこもってしまった彼は、自らに言葉を投げかけ、自らと共に笑い、そして自らを罵るようになり、スプレー・ペイントというメディウムを用いることで、自らが育ったアメリカの、懐かしくもあるグラフィティの世界に更なる心の安寧を求めるようになった。テキスト・ペインティングを、もはや現実には不可能になってしまったため頭の中でMADSAKIが想像するようになっていた英語での会話の断片と捉え直してみると、それらは彼の、孤独感やホームシックといった傷つきやすい側面を照らし出していることがわかる。彼の心に深く根を張るこの葛藤はMADSAKIの作品全てに通底するもので、そこで用いられているユーモアやきわどいフレーズは、自らを閉じ込める言語や文化の壁に対するMADSAKIの抵抗として機能している。
今回MADSAKIは、自身のリアルな感情と正面から向き合うべく、過去に自分が気を紛らわせようと生み出した想像上の会話を深く掘り起こします。MADSAKIがこれまで生み出してきた作品の多くは、ある種の現実逃避としての役割を果たしていた。
例えば彼に影響を与えた巨匠たちへのオマージュである「Wannabe」シリーズは、過去の偉大な作家たちとの間に繋がりを見出すことで日々の苦悩から逃がれようとするものだったし、妻のポートレートから成るシリーズは、自ら救い主と呼んで崇める女性への愛を中心に展開するものだった。しかし本展で作家は、自分が感じているフラストレーションと素直に向き合うことを自らに課している――もちろんトレードマークである下卑たウィットとともに。ショッキングで面白くて、最後には吹き出してしまうようなジョークや語呂合わせを用いて、MADSAKIは日本とアメリカ、両方のバックグラウンドを持つ自身のアイデンティティおよび表現方法について再考し、ますます繋がっていく一方の世界とコミュニケーションを図ろうとあがく自らについて深く考えを巡らせる。自信喪失やフラストレーションの中にあってもそれに反抗するようにジョークを生み出し続けるのがMADSAKIの哲学であり、本展は、彼の作家としての進化や、人生のどのような局面にもユーモアを見出だすことができる力に光を当てていこうとしている。


MADSAKI「MADSUCKY WUZ HERE 2018」
2018年10月5日 (金) – 2018年10月20日 (土)

カイカイキキギャラリー
火~土、11:00-19:00
閉廊日: 日、月、祝
東京都港区元麻布2-3-30元麻布クレストビルB1
ホームページ: http://gallery-kaikaikiki.com

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